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【加筆した友達に「ありがとう」】S保育園20200817

昨年1年アシスタントで入っていた園で1人で関わることになり、コロナでのお休みを挟んで4ヶ月ぶりに先月から始まり今日で2回目。

4歳児クラスの美術の時間(ここではアートを美術と呼んでいます)。
部屋に入るなり「何やるのー?」「手伝うよ〜」と今まで通りの反応がありひと安心しつつ、急いで準備。
発泡スチロール板に洗濯糊絵具を使ってコラージュする提案しました。

始まると「赤ちょうだい」「青ちょうだい」を絵具を配ることでしばらく手がいっぱいに。

少し落ち着いたのであたりを見渡すと、R君が1人静かに、そして嬉しそうに床に並べた板にひたすら直接原色を垂れ流してその変化を眺めています。少し離れたところではS君がたっぷり作ったピンク色を全身に塗り始めます。周りにいた子も「ピンク祭りだ〜!S君みたいにしたい!」とピンクにまみれていきます。するとS君はまるでどこかの国の民族ダンスのように声を出しながら踊ります。そして右往左往激しく動いているうちに止めに入る間も速さでR君の丁寧に流し続けた画面にピンクの絵具で加筆してしまいます。
「やめて〜!!」
R君は激怒します。S君は我に帰ってピンクまみれのエリアに戻りますが、R君の怒りは収まらず追いかけて言います。
「なんでこんなことするの?やめてよ!
「やってないよ」
そう答えられて諦めて戻ってきました。
「また続けて絵具をたっぷり流してみたらどうかな?」と提案すると
小さく頷いたのでまた原色の絵具を渡しました。
S君の手が加わった画面にまた流し始めると、最初は不服そうに流していたのですが
手を加えられた箇所と新たに加えた箇所の交わる変化を見ていたのか
「なんかいい感じ!」と言い始めました。
するとすくっと立ち上がりS君のところへ向かい、こう言いました。
「ありがとう!なんか良くなったよ!」
ピンク祭りに夢中のS君はその言葉に気づかずにいたけれど
R君は満足げに戻ってまたしばらく絵具を流し続けていました。

私はR君が自分の意図しない変化を柔軟に受け入れ、その変化をもたらした当事者に感謝の気持ちが生まれていたことにとても驚きました。

保育士さんとの振り返りでこの出来ごとについて話した際、「いつも我が強く、思い通りにいかない場面などで揉め事の多いこのクラスの子どもたちが、美術においては今日のように意図しない変化を受け入れる様子が見られることが多いです。この経験って日常にもとても大事なことだと思いました。」という言葉がありました。そしてその柔軟な変化はどうして美術の中で起きやすいのかという問いに「やはりその意図しない事実を覆すほどに絵具素材の魅力が強く心動かされるんじゃないですかね。」「自分は自分。自分の感覚に素直であればいい美術だからこそ柔軟に変化しやすいのかもしれません。」との言葉がありました。

正しい、正しくない、うまい、下手のない美術における経験は彼らに何をもたらしてくれるのか。
その状況を大人よりもうんと柔軟に受け入れる子どもたちの感性に、多くの学びのある、また心動かされた時間でした。

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