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知りたい。だから人は勉強する。

三崎で新潮編集長の矢野さんと飲んでいたある日の夜。
おもしろい喫茶店が城ヶ島にあると教えてくれた。そこのマスターがなんとも勉強家で、四六時中、映画鑑賞したり、本を読んだり、調べ物をしているらしい。矢野さんのスマホに保存されていた、「2017年映画ベスト500」という手書きのリストを見て、背筋が伸びた。

城ヶ島大橋をバイクで走り、50円を入り口で払う。ここが三浦半島の最南端、城ヶ島だ。小学生?のころ、遠足で来た覚えがあるが商店街方面、灯台の方には来ていない。お目当ての喫茶店「SEA SIDE HOUSE」はほんとに島のさきっちょにある。
入り口にはオリジナルの往年映画俳優たちの似顔絵。もう、たまらない匂いがぷんぷんする。それにしても、こんな端っこに喫茶店があるなんて。端っこだから終わりじゃない、始まりのような気配を感じる。

初めての喫茶店に来ると、きまってナポリタンを頼む。どこの喫茶店に行ってもナポリタンはある。こちらのは、具なし、ねっとり濃厚ナポリタン。店内にもびっしり映画俳優たちの写真やイラストがびっしり。

店にはぼくひとりで、お互い牽制しながらマスターの鈴木さんが口火を切った。
「観光ですか?」
「いえ、近所です。知人に教えてもらって」

そこから棚にあったノートをたくさん引っ張り出してきて、ひとつずつ丁寧に説明してくれた。ノートには、これまた「びっしり」手書きで勉強のあとが書き記されている。政治のこと、国柄のこと、bitcoinまで、気になるトピックがあるとなんでも調べてしまうそうだ。
映画、小説は大の好物で、時間を許すかぎり鑑賞しては、自分自身のベストリストを作っている。

ああ、これも町にとっての大きな財産だなあ、と思った。そして、知りたいことはとことん調べてノートに書いていく。こんな勉強ノート、高校生以来やってない。でも、これが一番頭の中に叩き込められることも知っている。
「知りたい」
そんなシンプルな動機と、シンプルな勉強法がもっとも勉強らしい、と痛感した。
人は知らないことを知るために生きている、とさえ思ってしまった。
誰に見せるわけでもない、自分だけのノート。

ああ、ノートが欲しくなってきた。かっこいいノートがいいな。
なんて、格好から入る癖を早く直して、ぼくも大好きな「知りたい」ことをノートに書き込んでいきたい。

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