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5.31 恋しい東南アジア タイ②

7時間ほど飛行機に乗って、バンコクに着きました。

空港を出て感じたジメジメとした暑さは東京とよく似ていました。

ホテルのある中心部は高いビルがいっぱいあって、アジア独特のゴチャゴチャした感じもあって、新宿みたいでした。台湾の歓楽街でも同じように感じたのを思い出しました。

チェックアウトが済んだら、もう夕方だったので、僕たちはとりあえず夜ご飯を食べました。
トムヤムクンとパッタイとココナッツにストローをさしたものが出てきました。

初めてココナッツウォーターを飲んだ友達はまずいって言っていました。僕も最初に飲んだ時、てっきりココナッツミルクが入っていると思っていたので、うすめたスポーツドリンクみたいでまずいなと思いました。けれど今回は、日本のものと比べ物にならない辛さのトムヤムクンとの相性が最高だと思えました。

夜ご飯を食べ終えて、これから僕たちの最初の目的地行きます。それはニューハーフショーです。

バスに乗って、中心街からちょっと離れたところにある劇場に向かいました。

到着して受付で代金を払うと、ドリンク券と最後に記念撮影のできるチケットをもらいました。

コーラを片手に着席していると、ショーが始まりました。

顔も体も髪も指先の動作までが完璧な美女が、入れ替わりに立ち代わりステージに現れます。どこから見ても女性にしか見えないけれど、女性とも男性とも言えない魅惑的な表情で客席を見つめながら音楽に合わせて舞っていました。来たばかりのタイにいることも忘れて見入っていると、一瞬でショーは終わりました。

ステージを出ると、先程のパフォーマーたちが受付に並んでいました。記念撮影の時間です。

僕はステージの隅にいたけど魅力的だったその人にチケットを渡して写真を撮ってもらいました。

記念撮影のチケットは1枚しかないので、もう劇場を後にしようとしたら、腕を掴まれました。

綺麗にマニキュアを塗った長い爪が僕の腕に食い込んでいます。

パフォーマーは片言の日本語で「まだかえらないでしゃしんとろ」って言ってました。

周りを見ると、僕の友達も他のお客さんも同じような状況で、チケットはもうないから現金を要求されていました。

僕たちはずっとこうしているわけにもいかないので、逃げるように劇場を出てバスに乗り込みました。

パフォーマーの手の力は強くて、僕の腕には爪の跡がくっきり残っていました。

とても華やかに見えましたが、パフォーマーたちの暮らしは安定しているとは言えないでしょう。だから、記念撮影のチップは生活に重要なのだろうと思いました。


ホテルに到着して、エレベーターに乗っていると、日本人らしき中年の男性グループが乗ってきました。

外国に行くとよくあることですが、お互い日本人だなっていうのはなんとなくわかっていても、確実にそうかわからないので、気まずい気持ちになります。

しばらくすると、男性の一人が僕たちに話しかけてきました。「君たち日本人?学生?何歳なの?」と。いくら、異国で同胞を見つけたからと言って、初対面でこんなにズカズカと話しかけてくる彼にあんまりいい気がしなかったので、適当に答えてさっさとエレベーターを降りました。

彼らは、夜の娯楽のために来た旅行客のようでした。


さっきのパフォーマーたちの握力の強さも恐かったけれど、エレベーターで会った男性たちの方がもっと恐いなと思いました。


僕はこの日、ベットに入ってから頭の中がいっぱいでした。
タイと日本の関係や、性をつかって生活のためのお金を稼ぐということ。軽蔑や差別のこと。


そしてさらに思いました。
僕は今日、パフォーマーたちの生活は苦しいと思ったり、男性たちが夜の娯楽のためにタイに来たと思ったりしましたが、あくまで勝手な妄想にすぎないのです。これもまた軽蔑や差別となるのではないかと。

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