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#20|ADHD長男の美大受験

現実の美大受験は、「ブルー・ピリオド」のストーリーの様にはいかない。
何よりウチの長男は学力が並み以下なので、私立が絶望的に不利だ。学力が長女位あったら、彼の画力ならとっくにどこかしら受かっている。そして、学力が旦那(藝大)並みで画力が私(多摩美)並だったら、どこにも受からない。

ADHDの長男は現役・一浪までは自宅から高崎の美術予備校に通っていた。
そこには旦那の藝大時代の同僚も指導者として所属していたからだ。
けれども一浪時のセンター試験(現大学入学共通テスト)英語で、マークシートの答えを一つずらして塗りつぶすという(一つ問題を読み飛ばしていたらしい)いかにも彼らしいことをやってのけて来た。

彼の成績なら、デッサンで5〜10点腕を上げるより、英語の試験でその点数を取る方が元が低いだけに遥かに楽な筈なので、1年ずっと英語をやるように苦言してきたが、やはり全ての受験専攻で玉砕した。

昨年まで長女を東京の大学に通わせていたが、4年次コロナで全く通わないまま卒業したので、入れ替わりに長男を東京の予備校に武者修行に出すことにした。旦那も1〜3浪+4年+院2年も、上京して一人暮らしをさせて貰っていたからだ。長女が住んでいた部屋に転がり込み、あの何もしなかった(家ではゲームしかしなかった)長男が、「帰ったらすぐに風呂を洗って米を研ぐ」という!

自宅から学校に通っていた頃は、毎朝起こすだけで超大変だったので、「煮玉子を作るのが上手くなった」「出来合いは買わない」など、耳を疑うようなことを言って来る。春に「アトピー性皮膚炎が酷くなって眠れない」と言って来た時には、流石の旦那も酷く心配したものだが、今では「出して良かったろ!」と胸を張る。正月のお節もそれまで見向きもしなかった根菜の煮物を「旨い、旨い」と言って食べる様になっていた。

でも、やってくれました

今回noteを書こうと思ったのは、正月に皆で合格祈願をしに初詣に行った際に、昼のラーメン屋でビールを引っ掛けてご機嫌の旦那がふらふら道路を横切ろうとした時、あのADHD長男に「危ない」と手で制されたのが「感慨深い」と旦那がしみじみ語っているのを聞いたからだ。

あんなに危なっかしかった長男が、20年もすると人並みになるという、めでたしめでたしのストーリーに出来ると思ったのだ。(同じ境遇の方に少しでも希望を、とも思った。)

が、書き終わらないうちにやってくれました。
先日2大私立の願書締め切り日があったのだが、あろうことかそのうち一つの締め切り日を見間違えて、見事に逃してしまったのだ!去年までは私が正月早々にはスケジュールを組み立てて、WEB出願+支払い+郵送までをこなしていたのだけれど、「自分でやらないと自分ごとにならない」と旦那に言われて今年は手を出さずにいたのだ。

本命藝大の倍率は例年10倍以上。実質第一希望の私立大学を受ける事すら出来ずに、ADHD長男の2浪目は本番に突入しようとしている。衝動性やおっちょこちょいも多分に持ち合わせている旦那をして「俺の上を行っている」と言わしめたADHD長男の、挑戦はまだまだ続くのであった。

(写真は仏壇前に置かれた長男の近作とば〜ちゃんの激励文)

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