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銘柄研究NO1インプレスホールディングス⑤〜取次会社の動向〜

まず取次会社の現状ですが、大手2社の業績です。

日販グループ(連結子会社数26社)の2019年度中間決算の売上高は250,820百万円。
雑誌・書籍の店頭販売の落ち込み、廃業店等の増加により5.0%減、13,238百万円の減収となりました。
営業利益は、取次事業、小売事業を中心に固定費の削減に取り組んだ結果、全体では1,072百万円(対前年88.3%増)となり、503百万円の増益。経常利益は1,116百万円(対前年73.6%増)となりました。
特別利益1百万円、固定資産除却損や店舗閉鎖損失等の特別損失206百万円及び法人税等を加減した、親会社株主に帰属する中間純利益は138百万円(対前年62.8%減)、234百万円の減益となりました。

引用:日販グループHD HP 

株式会社トーハン連結中間決算

5 ヵ年の中期経営計画『REBORN』を進めるにあたり、連結範囲を連結子会社 28 社(前期末16 社)、持分法適用関連会社 12 社(同 5 社)にそれぞれ拡大し、収益力の強化と将来に向けたシナジー強化を図ることとした。
しかしながら、第 73 期(2019 年度)中間期においては、物流系・書店系子会社の厳しい経営状況を反映し、連結売上高は 189,630 百万円、前年比 98.8%であったのに対し、経費が前年を大きく上回り、その結果、経常損失 270 百万円、親会社株主に帰属する中間純損失は 205 百万円となった。

引用:株式会社トーハン中間決算概況

書籍取次大手、上期は減益・赤字 業界低迷続く
2019/11/21 17:54

書籍取次大手の日販グループホールディングス(日販GHD)とトーハンは、2019年4~9月期連結決算をそれぞれ発表した。最終損益は日販GHDが減益、トーハンは赤字となった。雑誌や書籍の販売の落ち込みに加え、物流費の上昇が利益を押し下げた。出版不況に伴い業績の低迷が続いており、両社は物流面での連携など対策を急ぐ。
日販GHDの純利益は前年同期比63%減の1億3800万円だった。雑誌や書籍販売の落ち込みに加え、前年同期に計上した有価証券売却に伴う特別利益がなくなったことが響いた。トーハンは物流費の上昇や書店の減少などで、2億500万円の最終赤字(前年同期は8600万円の黒字)に転落した。同社が4~9月期で連結最終赤字となるのは2000年以降で初めてだ。
売上高は日販GHDが5%減の2508億円、トーハンが1%減の1896億円だった。電子書籍の普及に伴い、紙の出版物の販売が低迷する状況が続いている。
人手不足などに伴い物流費の高騰が続く中、両社は対策を模索している。トーハンは物流費上昇による自社の影響額が年間11億円にのぼるという。物流コストの削減に向け、日販GHDとトーハンは今春、出版物流で提携した。20年度以降、物流拠点を順次統廃合し、物流効率を高める方針だ。

引用:日本経済新聞

雑誌、書籍の店頭販売による売上の低迷とともに、物流費の増加が利益の圧迫要因になっていることがうかがえます。大手2社が物流で提携するということは、Amazonや電子書籍の拡大などの外部要因に対しての生き残りをかけた動きではないでしょうか。

取次は日販GHDとトーハンの2社でほぼ寡占状態です。

出版取次売上高ランキング
1位 日本出版販売:5457億円↓
2位 トーハン:4166億円↓
3位 メディアドゥ:505億円↑
※2019年9月時点での売上高ランキングとなっています。
※取次会社として有名な大阪屋栗田は売上高不明のため記載していません。
【参考】
東洋経済新報社 『業界地図 2020年度版』
日本出版販売とトーハンが圧倒的です。この二企業の売上で業界全体シェアの8割近くを占めるほどで、二大取次と呼ばれています。
しかし紙媒体の不調が影響し、両企業共前年比ではマイナスとなっています。
一方で電子出版取次であるメディアドゥは前年比プラスを達成しており、電子書籍の市場規模の伸び方を考えれば今後も業績は伸びていくと考えられます。

引用:  unistyle

https://unistyleinc.com/techniques/1394

これまで出版業界の構造を見てきましたが、それを踏まえて日販GHD、トーハン2社の決算を見てみます。

まずは日販GHDの最新第72期の半期報告書ですが、まず気になった言葉が

 High-Profit企画
書店マージン35%を達成するために、2012年度よりインセンティブ付銘柄の受注・販売促進を行っています。これがHigh-Profit企画です。
返品率などの条件を満たした書店に対して、売上に応じたインセンティブをお支払いします。
この企画の対象となったことで、書店からの注目が高まりベストセラーとなった銘柄も多く出てきています。

引用:日本出版販売HP

約4割前後と言われる返品率の改善のために、出版社や、書店とインセンティブ契約を結んでいるようです。

書店側で見ると、売れる本を必要量だけ配本してもらうのが一番いいと思いますが、出版社からすると、新刊はどれだけ売れるかわからないため、返品をある程度覚悟のうえで書店に本を並べてもらう必要があります。

取次が間に入ることで、小さい書店でも品ぞろえを確保できますが、各書店ごとの特色を出すというのは難しいことがわかります。

そのほかにも

日本緑化企画㈱は、直営店「アヲ GINZA TOKYO」が開園1周年を迎えました。今後も商業施設やオフィス等を中心に造園の設計・施工、グリーンレンタル等のサービス展開拡大に取り組みます。なお、㈱TSUTAYAの持つ企画営業力とのシナジーによるブランド力向上、販路拡大を目的として、2019年10月15日付で日販グループホールディングス㈱、㈱TSUTAYAを引受先とする第三者割当増資を実施しております。

引用:日本出版販売半期報告書

TUTAYAとの連携で新しい事業にも取り組んでいるようです。


次にトーハンの73期中間決算によると

本業では人手不足、人件費上昇の影響が物流子会社、書店子会社で起きており、特に物流網の維持を中期的な課題として挙げております。

一方事業領域の拡大として、フィットネス事業や介護事業等にも進出しています。

どちらの会社もこれまでの取り組みのさらなる改善や、新しい事業領域への挑戦という姿勢は見えますが、買い切りの拡大への対応や、再販制度、委託販売制度の衰退に向けて、根本的な対策をとるところまではなかなか難しいようです。

個人的には経営体力があり、出版社や書店に対して交渉力を発揮できる間に、会社としてのスタンスをはっきりさせて、改革に向かってほしいところです。

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