見出し画像

スウィンタライズ 【12】

「サンキュー! やっぱ毎度の如く美味そうだな」

「ありがと。あと横田くんもあげるよ、はいどうぞ」

「俺もいいの? やったー、いつかマネージャーのお菓子食べてみたかったんだよね」

「横田くんまでマネージャー呼ばわりするのね……まぁいいんだけど」

杉山の横にいた彼の友人、横田にも一つ渡した。杉山と似たタイプの男子ではあるが、彼よりも落ち着いた印象のある人だ。

「あーぁ、俺らの部活にもお菓子マネージャーいたらいいのになぁ。な、スギ」

「だなー、そしたらもっと頑張れそうだし。高宮もう一人いないかなぁ」

「あはは、何言ってんの二人とも」

「あー、それにしても夏木が来る前に貰えてよかった!」

「な、何それ」

ぼやきのような冗談のようなことを言っている杉山が突然夏木の名前を口に出したので、思わずドキッとしてしまった。皆本当に心臓に悪い。

「だってさ、夏木来たら高宮が独り占めにされちゃうじゃーん。俺らにもチョコ分けてもらいたかったし」

「ほ、ほんとに何言ってんの! そんなことないってば」

「ははは~」

笑うだけの杉山に困っていると、渡そうと思っていたクラスメートの子が丁度いいタイミングで登校していたのに気付く。強制的に会話を終了させて、速足でその子の所に向かった。なんか杉山がニヤニヤしているような気もするけど気にしないことにする。

「ゆりりーん! 相変わらず美味しそうなもん作って!」

「そう? ありがと!」

「はい、私からもバレンタイン~」

「わーい、嬉しい!」

彼女にチョコを渡した頃には杉山たちは私の席から離れていたので、ホッとしつつ自分の椅子に腰掛ける。しかしお菓子マネージャーとしての名前がクラス中に浸透してしまっている今、そうもゆっくりしていられない。

「高宮さん、夏木が言ってた通りガトーショコラ作ってきたの?」

「あ、真中さんおはよー」

隣の席の真中が登校してきたので、手提げから袋を一つ取り出す。

「そう、リクエスト通り作った! 真中さんもどうぞ、いつも本貸してくれてるお礼」

「あら、別にそんなの気にしなくていいのに。普段からお菓子貰ってるし。でもありがと、お言葉に甘えて頂いちゃお。また貸すねー」

「待ってます! ありがと!」

「あ、由璃子ちゃーん! 私も由璃子ちゃんのチョコ欲しいー!」

「月子ちゃん! 月子ちゃんあげたかったんだよ、はいどうぞ」

「あ、俺も!」

「私も貰いたいー!」

「わ、分かった順番! 順番にあげるから」

「高宮、今日のお菓子なーに?」

「今日はガトーショコラ! ……えっ?」

数人での会話の自然な流れ的にそのまま流れるように答えてしまったが、この言葉を私に言う人はただ一人しかいない。一瞬間を置いて気付いた私は、声がした方向にバッと振り向いた。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
2
色々好きなように表現者やってる社会人。連載中や予定の小説、外部サイトなどは固定記事参照で。

こちらでもピックアップされています

短編集
短編集
  • 34本

比較的短めなお話をまとめたもの。note数 ~20前後 が目安のつもりです。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。