ファシリテーターの分類02

150人の性格データを元にファシリテーターのパーソナリティ傾向を読み解いてみた。

はじめに~150人の性格データとファシリテーター分析~

ぼくは「コミュニティ・アクセラレーター」という肩書を名乗りながら、企業さんのファン・コミュニティのためのイベント・プロデュースやハッカソン/アイデアソンのファシリテーションなどをするかたわら、ビジネスパーソンのコーチングや、企業のチーム・ビルディングのお手伝いなども行っています。

その武器になっているのが「EQPI®」というパーソナリティ診断検査です。株式会社EQ認定「EQPI®アナリスト」の資格を取得し、起業家、経営者、新規事業担当者、個人事業主などへの、フィードバック、コーチングを実施しています。口コミを中心で広がり、サービス提供をはじめた2019年1月以降150名に対してフィードバック&コーチングを行ってきました。

そして、その150名のパーソナリティデータを自力でクラスタリングし分類し、それぞれの分類の特性を分析するというのを趣味でやっています。これがめっぽう面白く、感情認識と行動の関係性の分析、職業への適性や、チームとの相性の分析、「その人のあり方=being」との関係性の分析など、多岐にわたってデータを活かした独自分析を行っています。

さて、そんなパーソナリティ診断を口コミで広げる中で、いちばん多く検査を受けている属性のひとつが「ファシリテーター」です。

150名のビジネスパーソンの性格データ。その中で、イベントやワークショップのファシリテーションにかかわる方は30名いらっしゃいました。同業者で興味を持たれて検査を受ける方が多かったので、母数に対する割合は多めとなっています。その30名の特性を分析して、分類を試みてみました。

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独自のフォーマットで分析+レポートをしています

「オリジナリティ」と「承認欲求」がファシリテーター分類の軸になる

ああでもないこうでもないと数字やグラフをにらめっこして分析している過程で、顕著に傾向を分けるパラメーターが2つあることに気づきました。それが「オリジナリティ」と「承認欲求」です。

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オリジナリティは「自分にしかできない仕事をしたい」という志向の強さ。
承認欲求は「仕事をすることで感謝されたい、ほめられたい、身近な人から評価されたい」という志向の強さのことです。
それぞれの強弱で4象限に分けてみると、ファシリテーターのタイプが説明しやすくなりました。それぞれ「1群」「2群」「3群」「4群」と便宜的に分けて、説明していきます。

【1群 プロマネタイプ 出現率7%】自身の持っている使命感、目的に応じてファシリテーションを活用しチームを束ねていきたい。自身の個性を出すより、組織自体の個性が発揮できる状態を重視したい。

1群は、プロマネタイプ。責任感があるマネジメント気質です。他にその役割の人がいないときに、チームのバランスをとっていくためにファシリテーション役を買って出るプロマネタイプの人材になります。出現率は7%とやや低めです。マネージャークラスであることが多く、自分から前に出て、ファシリテーション役を買って出ることが少ないからかもしれません。

【2群 お世話焼きタイプ 出現率23%】メンバーに伴走して、感謝され存在を認められたい。ファシリテーションを通じて、チームをよくする裏方でいたい。 

2群は、お世話焼きタイプ。チームのみんなに感謝されたい一心でファシリテーションをします。チームの潤滑油になりたい。教育者タイプの方も多いです。表に出るというよりは、チームが合意形成をとるための裏方としてふるまいます。出現率は23%とやや多めです。いわゆる"日本人的な"まわりの空気を読んでTPOをわきまえた行動をとる気質の人がこのタイプに多くみられます。人間関係の摩擦を嫌う方が多いのも特徴です。

【3群 興味探求タイプ 出現率47%】自身の興味ある領域で仲間をつくり、新しいことをどんどん試していきたい好奇心の強いタイプ。ファシリテーションを通じ、社会に新しい価値を提供したい。

3群は興味探求タイプ。好奇心の強さで新しいことをどんどん試していきます。興味ある領域の仲間づくりが得意で、その仲間からの承認が、強い動機になっています。社会に新しい価値を提供したい、新規事業気質の人が多いのも特徴です。とても多動的で、じっとしていられない方がほとんど。出現率は47%ととても高くなっています。ぼく自身が3群なので、類が友を呼んで、似たタイプが集結しているのかもしれません。好き勝手にやっているように見えて、意外と打たれ弱い繊細な一面を有しているのも特徴になっています。

【4群 職人肌タイプ 出現率23%】自分にしかできないファシリテーションをすることで、チームに価値を提供していきたい。「ならでは」の研究や発明をすることで、自身の好奇心を満たしていきたい。

4群は職人肌タイプ。自分にしかできないファシリテーションを追究する研究者、発明家タイプです。自身の好奇心を満たし、成長を実感するためにファシリテーションをする一面があります。1回の場を「実験の場」ととらえることもあり、次々と実験を繰り返して精度を上げていくことに喜びを見出します。さりげなく技を繰り出して「わかる人にわかればいい」とニヤリとするようなタイプです。

1、2群は他者がつくったフレームを習得し再現していくタイプが多く、3、4群は新しいフレームを自分で次々につくっていくタイプが多くなります。それぞれの存在があってお互いを活かしあって、ある種のエコシステムが形成されていると言えるかもしれません。みんなちがって、みんないい。

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シリコンバレーでもファシリテーションやってます

より細かく傾向が分かれる【2群】と【3群】

さて、もうちょっと細かくみてみると、母数の多い群はさらに細かい分類も可能となります。

たとえば、もっとも出現率の高い【3群】は、下記のように3分類できます。

【3群-A】きわめて大人に振る舞える行動優先タイプ
【3群-B】子どもっぽさがどこか抜けきらないお茶目な行動優先タイプ
【3群-C】子どもっぽさに満ちた行動優先タイプ

3群の特徴は「群を抜いた圧倒的行動力」で、とても多動的なのが共通しています。ただし、周囲とのバランスのとり方が各群で違っています。特に割合が多いのが【3群-C】で、起業家にも多くみられるタイプになります。遊び心たっぷりに振る舞いつつ、怒られると静止しておとなしくなることもあります。

出現率が23%の【2群】は下記2パターンに分類できます。

【2群-A】身近な人からの感謝など感情リターンを優先する「黒子」タイプ
【2群-B】承認に加え実利あるリターンも求める「黒幕」タイプ

一言で「承認欲求」といっても現れ方がまったく違うのが特徴です。表にはあまり出たがらない裏方志向という特徴は共通するものの、純粋に感謝を求めるタイプと、ある種の影響力を行使したいタイプに分かれます。

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パーソナリティデータにみるファシリテーター30人にほぼ共通する性質とは?

その他、ファシリテーターのサンプル30名の共通傾向をみると、下記のパラメーターが強いことが分かります。この辺りはまだ研究途上ですが、ファシリテーションという定量化しづらいスキルの構成要素のヒントになるかもしれません。

①感情を主観・客観でバランスよくとらえる傾向
いわゆる「相手に共感してひたすら感情移入する」タイプよりは「感情移入もするが、同時に俯瞰で状況をみて分析する」タイプが多いです。一方で、客観性・論理性だけが強く、共感が低い人も少なく、それぞれバランスが取れている方が多いのが特徴です。
②意外と内向的な人が多い
コミュニケーション上手にみられ、前に出ていることに慣れていることから「明るい人」と見られる方も多いかもしれませんが、その実、本質的には内向的な方が多いのが特徴です。コミュニケーションに慎重な態度が、上記の「主観・客観」バランスにつながっているのかもしれません。コミュニケーションを学習して体得していった傾向の方が多くみられます。
③実行力、フットワーク、情報欲、移動容易性が強い
いわゆる「好奇心」と、フットワーク軽く様々な場や人間関係にかかわる志向の強さ、思い立ったらすぐ実行する行動力の強さが多くの方に見られます。新しもの好きで、動きのない状況ではじっとしていられない。このあたりは当然といえば当然かもしれませんね。
④意外と打たれ弱い
ストレス耐性として、他者からの批判に弱い傾向と、理不尽な要求や、画一的なプロセスに対してストレスを抱えやすい傾向が多くの方に見られました。プロセスは自分でつくるし、自分でつくった大事なプロセスに対して、他者から横やりを入れられるとへこみやすいのかもしれないですね。

ぼくがよく聞かれる質問に「ファシリテーターにはどんな人が向いているのですか?」というものがあります。かつてはその質問になかなか答えづらかったのですが、パーソナリティデータを取り扱い、分析的に見ることにより、ちょっとずつ解明されつつある気がします。いずれにしても、自身がどのタイプに分類されるかを認識し、長所を生かしつつスタイルを確立するのが大事といえるかもしれませんね。何かの参考になれば幸いです!

終わりに~パーソナリティ診断にご興味ある皆様へ~

そして検査に興味のある方は、こちらからお申込みどうぞ。読み応え十分のレポートを元に対面 or リモートフィードバックいたします。

なお当投稿は「ファシリテーター Advent Calendar 2019」の2019/12/19担当分記事として執筆されました。筆不精なぼくに執筆の機会を与えてくれありがとうございます。他の方も素晴らしい記事を書かれているので、ぜひチェックしてみて下さいね!


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