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ちぐはぐTシャツ  叶

Tシャツが似合わない。
Tシャツに似合うもへったくれもあるか、という指摘は一見真っ当に思えるが、
事実としてわたしはTシャツが似合わないのだから見当外れと言わせてもらわねばならない。

クルーネック、Vネック、ポートネックだとか型さえ変えてしまえばという問題でもない。
Tシャツというアイテムがどうも似合わない。




ところで、わたしはユニクロのUTがすきでほぼ毎年購入している。
あるときはポケモン、
あるときはセーラームーンなどわたしの好みを的確に突いてくる。
今年はなんとちいかわも出た。
ユニクロUTは生地もしっかりしていて、着やすい。
Tシャツ単体はどう考えてもかわいいのに、
わたしが着るとたちまちおかしくなる。
シリーズ化されるほど売れているアイテムなのに、着るとおかしい。
となると、自然Tシャツではなく着ているわたし側に問題があると考えるべきだろう。

ではわたしの何が問題なのか。
顔?スタイル?いい加減にしろ。
そもそもこの暑い中、服を着てるだけで褒められて然るべきだろうに、
なんでわざわざ服を着ておかしくならねばならんのだ。
笑われるんじゃねえぞ。笑わせるんだよ。わたしの中のビートたけしも悔しさに泣いている。
気づかなかったんだけど、わたしの心の中にはビートたけしがいたらしい。
しかしわたしの抱える問題をビートたけしは解決してくれない。


かなり話は逸れるが、
わたしは学生の頃、変顔で写真を撮る風潮が嫌いだった。
というのも、変顔をする=表情を普通にしていれば変な顔ではない
という主張に思えてしまいかなり傲慢に感じていた。
だからといって「あなたはそのままで十分に変な顔だよ」なんて女子文化では口が裂けても言えない。
偶然なのか必然なのか、運良くこのあたりの価値観が同じ友人に恵まれたので主にわたしの学生時代の写真及びプリクラは友人含め常に全員キメ顔だった。
わざわざ変顔をしなくても変な顔だという話は、
おかしく着こなさなくても勝手におもしろくなってしまうわたしのTシャツ似合わない問題に通ずると思っている。
自分で書いておきながら頭が混乱してきた。


話を戻そう。
わたしはTシャツにジーンズを身に纏い、サングラスをかけ、手のひらくらい小さいバッグを提げて、
多くのファッショニスタがそうであるように涼しげな様子で街を歩いてみたかった。
いや、Tシャツにジーンズ、サングラスだけは現在わたしだって同様にしている。
けれどもTシャツが似合わないばっかりに、
理想としているファッションのバランスが全て崩れる。
涼しげな様子からも離れる。
わたしが一体何をしたというのだ。
前世でTシャツ村でも焼いたのか。
どこだ、その村は。村長を出せ。祠も壊してやる。


行き場のない不平不満を並べてきたが、
わたしはTシャツがすきだ。
ご近所ならパジャマ同然の格好で歩いても良いというわたしの価値基準の中、
Tシャツは完璧にOK、むしろよそ行き衣装枠におさまっている。
しかもたいていのTシャツは着心地が良く涼しい。
Tシャツ以上に夏に重宝するファッションアイテムをわたしは知らない。これはやや、大袈裟かしら。


背に腹は代えられない。
この夏もわたしは似合わないTシャツを着て不本意なおもしろさを提供してやると自暴自棄になりつつ誓う。



それではまた。


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