見出し画像

感情と五臓の関係

陰陽・五行とは

中国では陰陽と五行という見方をベースにして、世界のあらゆるものをグループ分けする考え方があります。

陰陽に関しては、なんとなくイメージがつきますか?
月が陰で、太陽が陽。
冷たいものが陰で、温かいものが陽…というように全てのものを陰陽に分類します。

これと同様に、全てのものを5つのグループに分ける見方が五行です。
自然にかたどると「木、火、土、金、水」の5つになります。
「木」グループに属する臓器が「肝」、「火」グループに属するのが「心」、「土」が「脾(消化器)」、「金」が肺、「水」が「腎」というようにグループ分けされます。
感情や季節も同じように分けることができます。

・木ー肝ー怒ー春
・火ー心ー喜ー夏
・土ー脾ー憂(思)ー土用
・金ー肺ー悲(憂)ー秋
・水ー腎ー恐(驚)ー冬

このようにグループ分けされます。
感情に関しては括弧が多く、曖昧で申し訳ありません。
専門学校では「怒、喜、思、憂、恐」で習ったのですが、今回参照する文献の該当箇所は「怒、喜、憂、悲、恐」となっていたので、今回はそれで話を進めていきます。
季節の「土」も「土用」とする説と、「梅雨」とする説があります。

感情と五臓

人間には怒、喜、憂、悲、恐の感情がある。
①怒りすぎると陽気が昇り、肝が弱って風気を受けやすくなる。
風を受けると手足の力がぬけ、めまいをおこす。
②喜びすぎると陽気が浮き上がり、心が弱って暑気を受けやすくなる。
暑を受けると身体内に熱がこもり、腫物ができる。
③憂いすぎると胃の陽気が働かなくなる。陽気が不足すると胃に湿気(水分)が多くなる。
湿気が多くなると下痢をする。
④悲しみすぎると肺が弱り、燥気を受けやすくなる。
燥気は体液を欠乏さす。便秘やカラ咳をしだす。
⑤恐れすぎると腎気が働かなくなり、下半身に陽気が少なくなる。
下半身に陽気が不足すると寒気を受けやすくなる。
寒気を受けると腰以下が冷えだす。
池田政一著『初めて読む人のための素問ハンドブック』

引用したのは『素問』という中国の古典を読みやすく現代語訳し、解説を加えた本です。
『素問』は『霊枢』という書物とともに『黄帝内経』と呼ばれ、東洋医学を学ぶ上でとても重要な書物とされています。
何千年も前に書かれたものです。

引用部の内容に話を戻しますと、つまり激しく1つの感情を抱いていると五臓の不調につながるということです。

③の「憂いすぎる」と④の「悲しみすぎる」の違いが少しわかりにくいですね。
私は③の胃(消化器)の方は「思いわずらう」、④の肺の方は「悲しむ」が対応すると考えています。

五行の考えは、臨床の中で実際に当てはまる場合があります。

実際の例

あるご夫婦が先日来院されました。

女性の方は胃腸の調子が悪く、食べすぎて下痢したり、逆に食欲がわかなくてあまり食べられない、という状態でした。
胃腸の状態が表れる「足三里」というツボの周辺に力がなく、へこんでいました。

男性の方は風邪のような症状で、鼻づまりや喉いたを訴えていました。
背中上部の肺の状態が表れる領域の毛穴が開いており、外からのバイキンの侵入を許してしまうような状態でした。

つまり、女性は胃(消化器)の症状、男性は肺の症状が出ていました。

お二人に話を聞くと、先日11年間連れ添った愛犬を亡くされたそうです。

女性は泣きたいけど、泣けず、思いを内側に溜め込んで苦しんでいたようです。
男性は1週間くらいずっと泣きつづけ、悲しみにくれていたそうです。

このように思い煩っていた女性は消化器を病んで、
悲しみに暮れた男性は肺を病んでいました。

まさに五行に当てはまる症状が出ていたので私も驚きました。

少し余談になりますが、私はだからといって、ある感情にどっぷり浸かるのがいけないことだとは思いません。

最愛のペット(家族)を失ったときなどは、思いっきり悲しんだ方が、次に進める場合もあると思います。

五行を知っていると、因果関係がわかるので治療しやすいですし、その後の経過も予想しやすいので、とても便利な知恵です。

今後も少しずつ紹介してきますので、
よかったら日々の生活にお役立てください。


あすか鍼灸院(2019年3月善光寺ふもとに「あすか鍼灸室」OPEN予定)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?