イカロスは燃え尽きぬ

朝が来た。

来てほしくなかった朝が。

「総員並べぇ!」

上官の怒号と共に、俺の目の前で戦友たちが一列に並ぶ。

「諸君!めでたい知らせだ」

二ッと上官が笑い、俺と横のソルジャー125を見る。

「ソルジャー125とソルジャー199が先日、西方戦線滅人旅団の大将を二人で討ち取った。この戦果により、めでたく両者は『博物館』へと行くことになった」

違う、俺は何もしていない。

125が同じ部隊の仲間を利用して突き進むのを止めようとしたのに、止められなかっただけなのに。

なのに、何も知らないこいつらは口々に俺を褒め称え、博物館に行きたいと言うだけだ。

「このあと、細菌兵器を完成させたサイエンティスト25も行く。まずはソルジャー125だ」

「お先にな」

そして、上官は笑顔で125の脳天を拳銃でぶち抜いた。

ワッと歓声が上がる。

「英雄は純度が高いうちに死ね!偉大なるマザーの教えだ!」

畜生、畜生、畜生!狂ってる!

「次に、ソルジャー199だ。喜べ、偉大なる兄の横に、君も行けるのだ」

逝ってたまるか糞野郎!

上官が脳天に向けた拳銃をかちあげ、奪い取ろうとしたその時、俺達の頭上から全身機械鎧の人影が、落下してきやがった。

「ぷべぇ」

そいつは上官を踏みつぶすと、そのまま周りに向けて、弾丸をばら撒き始めた。

「敵襲だぁ!」

基地内に鳴り響くサイレン、立ち上る黒煙と火の手。

俺は、すぐに走り出した。

死体が持っていた武器を拾い、基地の外へと。

すると、俺の後ろを、先ほどの機械鎧が追いかけて来た。

野郎、俺を逃がさないつもりか。

機械鎧は並走したかと思うと、俺を追い抜いて、走り始めた。

何のつもりだと思いながらも、基地から出た瞬間、大音量の声が、響き渡った。

『『脱走者が出たぞ!捕まえろ!』』

どうやら、逃げたかったのは俺だけではなかったようだ。

俺は、持ってた閃光手榴弾を機械鎧に投げつけた。

「俺の替わりに捕まれや!」

『ハァ!?なにすんのヨ!』

【続く】