色欲の蜘蛛の糸
元々、自分の意思が弱いのも自覚してる。
それに騙されやすいのも、自覚してる。
大学卒業するってのに、就活がうまくいかなくて、家で管巻いてたら、友人から『俺仲間と集まってアプリゲームの会社始めることにしたんだが、お前も来ねぇか?』
それを蜘蛛の糸だと思って飛びついたら、地獄の最下層へと続く片道チケットだとは思わなかった。
だって…
だって………
「だってここ18禁チャットゲームの会社じゃんかぁぁぁぁぁぁ!」
夜のオフィスで俺の叫び声が木霊する。
時刻は午後9時、いるのは俺一人。
「騙されたぁぁぁ…こんな仕事だと思わなかったー…」
ティロン!という音が、目の前のパソコンから響く。
チャットの通知音だ。
チラリと見れば、性別年齢不詳の相手から送られた、性欲とか恋愛感情とか色々混ざりまくったチャットが来まくっている。
「嫌だぁぁぁ…こんな仕事嫌だぁぁぁ…家族に自慢できなぃぃぃ…」
『父さん母さん!俺、チャットゲームで性欲に狂った男どもから金巻き上げる仕事に就いたよ!』
「んなもん言えるかー!」
頭を抱えてシェイクし、現実から目を背けようとする。
『こんな時間まであんなチャットやこんなチャットの対応をしたら脳味噌が溶けそうになる』とは俺が何度も同僚や友人に言っていた言葉だ。
ピロリン!という音が聞こえた。
「ん?攻撃的ワード入りのチャットか…」
背を正し、そのチャットの確認をし、警告文を出そうとしたが、そこに書かれたチャットを目にして、凍り付いた。
『たすけてころされる』
「…嘘だろ?」
『でんわがつうじない』
『ここしかぺーじがみれない』
『たすけて』
連続してそのチャットが届いた。
もし、もしも、このチャットが本当だとしたら…
時刻は午後9時、このアプリは0時には終わり、次始まるのは午前7時だ。
あと3時間以内に、この人物の情報を手にれなきゃ、この人物は殺される?
パソコンの画面に次のチャットが表示された。
『しにたくないよ』
【続く】