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ホドロフスキーについて

カルト映画の帝王と称される映画監督 アレハンドロ・ホドロフスキーの紹介です。

最近、noteと連動してTwitterを始めました。
本当は占星術について呟きたいのですが、占いの先生方のROMとホドロフスキー監督のツイートLIKEマシーンと化してしまっています。
知らない方も多いかもしれないので、新作映画のオンライン封切もあったことだし、ホドロフスキー監督の紹介文を書こうと思い立ちました。

1.ホドロフスキーって誰?

・映画監督。代表作は『エル・トポ(1970)』、『ホーリーマウンテン(1973)』
・チリ生まれのユダヤ人。活動の大半はメキシコとパリで行われている。
・映画監督以外にも、俳優、パントマイマー、詩人、路上芸術家、バンドデシネ原作者、タロット占者、セラピスト、と多岐に渡る活動している。
・1980年代以降あまり映画を撮れて無かったが、2010年代に入り、「ホドロフスキーのDUNE(2013、監督は別)」、「リアリティのダンス(2013)」で再度注目を集める。
・現在91歳。超現役。

40代で『エル・トポ』、『ホーリーマウンテン』を立て続けに発表し、映画界で注目を集めました。その後、映画が撮れず映画以外の活動を主に続けていましたが、80代に入って再度映画を撮りまくり、再ブレイクを果たしています。

ホドロフスキー監督の映画は、ロードショウされるタイプの映画ではありません。芸術映画っぽい感じなんですが、アングラ映画っぽい感じも多分にあり、なんとも形容しづらい雰囲気です。一般にはカルト映画と呼ばれています。
出世作『エル・トポ(1970)』は、荒野を旅する子連れのガンマンが様々な人物と出会い体験する奇妙な物語を、ほとんど無声で表現しています。
アメリカのミッドナイトシアターで上映され異例のロングランを記録し、ジョン・レノンやミック・ジャガー、アンディーウォーフォールといった、当時のアメリカ文化の担い手達から大絶賛されました。

『ホーリーマウンテン(1973)』は、そういった機運と資本を受けてメキシコで撮影されました。発表当時、メキシコ映画の中で断トツNo1の予算をかけて制作された映画です。
しかし内容はエルトポに輪をかけて奇妙な映画になっており、いきなり見ても殆ど意味がわからない仕上がりになっています。
※映像がおもしろいので、結果、体験としては面白い映画になっていることを、強く記しておきます!

2.ホドロフスキー監督の映画を観よう

自分がホドロフスキー監督に初めて触れたのは2013年の事です。

当時、DOMMUNEが非常に精力的な時期で、ホドロフスキー監督の来日イベントをネット配信していました。
DOMMUNEのファンだった恋人がたまたま視聴したらしく、変な事を言ってました。

「なんか、ホドロフスキーって映画監督が出てたんだけど、すごかったよ。
通訳しなくても何を言ってるか大体わかる感じだった。」

いまいち何を言っているのか分からずアーカイブを視聴したところ、そこには快活な老人が映っていました。
きちんとした格好をしているのですが、ユーモアに溢れ、時に鋭い攻撃性を見せます。
スペイン語で話しているんですが、その姿を見ていると、確かに何となく喋っている内容がわかる気がしてきました。
とにかく、ホドロフスキーという人物に一発で魅了されてしまいました。

興味がわき、当時渋谷のUPLINKでやっていた、ホドロフスキー監督の過去作の上映会を観に行きました。
以下がその上映会のHPですが、触れ込みが凄すぎてワクワクが止まらなかった事を憶えています。

ホドロフスキー新聞

芸術映画やヨーロッパ映画の有名どころは割と観ていたのですが、どんな内容なのか全く想像ができない。
おそらく難解な映像重視の作品なのかなと思っていました。

観たのは「ホーリーマウンテン」です。
いい意味で予想を裏切られました。
まず、とても親しみやすい映画だなと思いました。
色んな造形物が出てくるんですが、どれもファニーな感じで、テンポもコメディー感に満ちていて、愉しく観れました。好きな感じでした。
ただ、ストーリーは全く意味が分からなかったです。

ますますホドロフスキー監督に興味が湧き、「エルトポ」、「リアリティのダンス」、「ホドロフスキーのDUNE」を立て続けに観ていきました。

3.本書「リアリティのダンス」について

映画の意味を解きたくて、本書を手に取りました。しかしそれは、さらに新たな世界との出会いとなりました。

本書は、ホドロフスキー監督の半生を、監督自身が語っている本です。
ロシア系のユダヤ人としてチリのトコピージャという砂漠の町に生を受けたところに始まり、家族や世間との葛藤、詩との出会いと出征、映画の撮影に至るまで、監督の数奇な人生が語られています。

しかし特筆すべきは、その人生がほとんどオカルティズム的である、ということです。
ホドロフスキー監督の中では、芸術はオカルティズムと同義であり、また、癒しと同義になっています。
※ここで言うオカルティズムとは、神秘学や魔術の教義という意味ではなく、神秘体験主義というような意味です。

1920年代生まれのホドロフスキーが触れた南米~パリの芸術の世界は、詩的であり、シュルレアリスム的でした。
その世界では、神智学や人智学、グルジエフや黄金の夜明け団等のオカルティズムと、フロイドやユング等の心理学、スピノザやハイデガー等の哲学は混然一体とした概念として扱われていたように感じます。
さらに南米の伝統的なオカルティズムが混ざり合い、極上の魔術的現実が醸成されていたのではないかと思います。
その現実とも魔法ともつかないリアリティの中で、人間のある種の無意識的な運命がその人を衝き動かしたり、自分や他人を破壊したりする様が現実として存在していたのではないか、そんな情景が思い浮かんできます。

監督は、チリで詩人、指人形師として活動した後、パントマイマーとして、あるいはシュルレアリストとしての成功を目指してパリに渡ります。
パントマイムの公演をメキシコに持ち帰ってきたタイミングでメキシコに住み始め、映画の製作をはじめ、「エル・トポ」や「ホーリー・マウンテン」が生まれました。
ホーリーマウンテンについては、製作にあたり当時の神秘思想のリーダーの一人、オスカル・イチャソを招聘して、実際に神秘思想的な修行を行ってから製作された様が記されています。
しかし、この本の主題はあくまで監督のオカルティズム的な歩みについてなので、映画の内容や意図についての言及はほとんどありません。

でも読むことで、今まで触れてこなかった、チリの詩人文化の世界、シュルレアリスムの世界、当時のオカルト文化の世界をリアルに知る事ができて、その後の興味が広がりました。
何より、ホドロフスキーの異常ともとれる思想、言動、人生に触れて、めちゃくちゃ楽しめたし、励まされた気もしました。
自分を一番惹きつけているのは、このホドロフスキー監督のキャラクターであり、言葉です。
世の中とのルールや圧力に感じやすい方には、ぜひ触れてみていただきたいです。

この本は、後に撮影される映画「リアリティのダンス」と、その続編「エンドレス・ポエトリー」の原作になっています。
この2つの映画は、80代になった監督によって撮影された私小説的な映画になっています。
びっくりするのが、映画の中で、過去に和解できなかった父、母と和解する、という監督の超個人的な癒しを目的に撮られている点です。
生前どうしても肯定できなかった父親が、裏では実は正義の士として行動していたとする創作や、実際には無かった和解のシーンが入っていたりします。
この監督の個人的な癒しの体験が、非常に面白くて力強い映画になっている、という、とても不思議な映画になっています。

4.あとがき

非常に長くなってしまいましたが、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。なお、監督の最新作は今月オンライン封切されました。

「ホドロフスキーのサイコマジック」

こちらの映画は結構ホドロフスキーのコアなファン向けという趣が強い作品で、ホドロフスキー監督が発明した、言葉ではなく、芸術と行動で行うセラピー「サイコマジック」の実例映像を元にした作品になっています。
占星術師を志している自分にとっては、とても参考になる映画でした。
ミニシアターへの支援にもなりますので、ご興味ある方は視聴していただけたら幸いです。
※自分は全然、利害関係ないですけど。。


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