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Book Cover Challenge DAY1 『神様の住所』

7日間ブックカバーチャレンジ

Twitterで読書アカウントを作って、4日ほど。

さまざまな方のツイートなどをみていて、面白そうなバトン企画を見つけたので、参加しました!

その名も「ブックカバーチャレンジ」。

どういうものなのかというと、下記の通りです。

7日間ブックカバーチャレンジ
読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、好きな本を1日1冊選び、本についての説明はナシで表紙画像をFacebookへ7日間アップを続ける。その際毎日1人のFB友達を招待し、このチャレンジへの参加をお願いする、というもの。

わたしはTwitterで見つけたので、Twitterで始めてみました! つながりが全然ないので、バトンが回ってきたわけでなく、勝手に参加。

この企画「本についての説明はナシ」というルールですが、好きな本というのは語りたくなるもの…(だと思っている)。

ということで、Twitterの番外編的に、紹介した本の魅力を書いていきたいと思います💁

DAY1 『神様の住所』九螺ささら

1日目に選んだのは、こちらの本。

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『神様の住所』
出版社:朝日出版社
著者:九螺ささら
短歌が入口で、宇宙が出口。
俵万智、穂村弘、東直子と続く革新短歌の宇宙を、哲学的な輝きで新たに飲み込む。

第28回(2018年度)Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞のこちら作品。

ブックカバーチャレンジというくらいなので、内容はもちろんですが、まずは素敵な装丁の本を…と思って選びました。

装画・挿画は、高橋由希さん。

窓の外(?)には、広いひろい世界。しかしながら、この絵で目がいくのは、中央に描かれたゼリーです。

ちっぽけなはずのゼリーの中にはいろとりどりな物体が描かれていて、窓の外の世界よりも、存在感を放っています。裏表紙には、本書に収録されている「哲学」の短歌が…。

そんなイラスト通りと言いますか、本書の内容も、九螺ささらさんのなかにある広大な宇宙を泳がせてもらっているようなイメージです。

九螺さんの体から溢れ出したことばたちには、「短歌を楽しむ」という言葉では片付けられない哲学がつまっているように感じます。


短歌→散文→短歌

歌集というと、ずらっと短歌が並んでいて、ことばに執着のある方や古典などの世界が好きな方など、「楽しめる人が楽しむ」ようなイメージかも知れません。

『神様の住所』は、84のテーマに沿った短歌が書かれているのですが、その構成が面白く、テーマごとに「短歌→散文→短歌」というまとまりになっています。

まずはテーマに沿った短歌が一首。その解説のような散文があり、最後にもう一首短歌が書かれているまとまりが84つ。どこから読んでもよく、読者は、短歌に目を引かれたり疑問が浮かんだりしたのち、散文を読んで発見や納得(もしかすると、より疑問が鋭くなるかも…)をして、もう一つの短歌をさっきよりもテーマに沿った視点で読んでみる…という流れにのって、深く九螺さんの宇宙に向き合っていくことになります。

短歌だけが並ぶ歌集もとても素敵なものが多いのですが、普段短歌を読まない人には、31字の塊がぽつぽつと並ぶ紙面に無機質な印象やとっつきにくさを感じる人がいるかもしれません。

そういう、文字の並びのような意味で、普段歌集を手にとらないという方も比較的短歌を味わいやすい一冊になっています。

…という視点でもこの構成自体に魅力を感じているのですが、九螺さんに限っていえば、さらに、この構成によってことばの魅力が大大大爆発しているように思います。


「花吐き病」と「宇宙酔い」

あとがきに登場する、「気持ちが体からあふれてあふれて、どうしようもなくな」る花吐き病と、「形而上的世界を愛する」宇宙酔いという二つのことば。

九螺さんの造語とみられるこれらは、この本の構成がどうしてこうあるべきか、ということを指し示してくれているような気がします。

短歌を一首読んだとき、読者は音の美しさやことばの技巧を味わい、31字から類推できる意味を取ろうとする。その解釈は人それぞれになりがちで、経験値や語彙によっても大きく左右されてしまうし、そこに短歌を味わう楽しさがあると言えると思うのだけど…。

『神様の住所』に登場する短歌には、九螺さんの「宇宙酔い」という土壌(「持病」と表現されている)があって、その上で醸成されてあふれた気持ちがあるのだと思います。

そこを読者に委ねるのではなく、自分のことばで書く。九螺さんのなかに広がる知識や言葉、哲学を詳細に伝える。何より、その散文自体がとてつもなく面白く、読んだ前後では一つの短歌から全く違う響きを感じてしまうものがいくつもありました。解像度が上がる感じ。

解説とまではいかないし、より疑問が深まるものもあるんですが、だからこそ何度でも味わいたいなぁ、と思ってしまいます。


体から心があふれている、すべての人に

表紙をひらくとある、

体から心があふれている、すべての人に

という一文。

これだけで「わたしのことか?」全部を肯定された気になるちょろい読者なのですが(笑)、この一文でグッと九螺さんの短歌に入り込む準備ができるのも事実です。

この世界に目を向け、さまざまなものをすくいとる九螺さんの姿勢によって、「自分は結構不確かに世界を見ているのかも…ていうか、世界ってなんだ?」と考えてしまう。

もちろん短歌の強い魅力ありきですが、歌集としての魅力を超えて、哲学的な世界、超文学的なものへの関心が深まったり、いつの間にか哲学のスタートラインに立っていたりする、そんな一冊です。

こういう豊かなことばに出会えて、短歌というものがある世界で生まれることができて、よかった。この世はわたしの中にあるんだよなぁ。この世の解像度が上がるんです、『神様の住所』は。

初めて読んだとき、わたしは「哲学」「レーズンバター」「物理」「ふえるワカメ」「住所」「オブラート」「質量保存の法則」「同音異義/異音同義」「水」「わかる」あたりが心にひっかかったようで、見返してみるとページの端が折られていました。

朝日出版社のサイトで立ち読みができますので、気になった方、体から心があふれてしまう方、花吐き病と宇宙酔いということばに惹かれてしまった方…はぜひ!


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