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【絵本レビュー】 『ネコとクラリネットふき』

作者/絵:岡田淳
出版社:クレヨンハウス
発行日:1996年4月

『ネコとクラリネットふき』のあらすじ:

ある晩、クラリネット吹きが家に帰ると、1匹のネコが。
何をしてもネコは知らん顔。仕方なく楽器の練習をすると、なんと! ネコが大きくなった。
楽器の音を聞くたびに大きくなっていくネコ。
ネコのおなかで眠ったり、背中にまたがったり、ネコが大きくなるほど、クラリネット吹きはしあわせいっぱい。
そしてネコといっしょにかなえた夢は?

『ネコとクラリネットふき』を読んだ感想:

「よのなかで いちばんすてきなのは ネコといっしょに くらすことです。」

なんて素敵な終わり方! 読み終わって一人で激しくうなずいていたのですが、女の子が言ったんです、「夢みてたのかもね」。おお、なんという気づき! 私はすっかり絵本の世界に入ってしまっていて、ふかふかの猫の背中で寝ることや、いっしょに旅をするところなんかを想像していたのです。そうか、クラリネットふきは夢を見ていたのか。。。

何度か書きましたが、私はネコが好きです。私の夢は、玄関前にネコが座って待っていることでした(今もかな)。道を歩いていてネコがついてくるともう嬉しくて、「うちへ帰ろうねえ」なんて言いながらもまんざらでもなく、本心では「このままうちまで来ちゃわないかな」と願っています。今のところ一度も叶っていません。

ベルリンに来て初めて住んだ家にはネコがいました。アパートをシェアしていた人のネコです。ひょろりと身体の長いネコでした。私にもよく懐いていて、飼い主さんに一週間に一度シャンプーされると、濡れて毛がぽそぽそになったまま鼻を真っ赤にさせて私の部屋に逃げて来ました。またバーで働いていた飼い主さんが朝まで帰ってこないと、私の部屋に来て寝たりもしました。

私も子供の時にネコを飼っていたのですが、ネコは寝室には入れないことになっていたので、それまでネコと寝たことはありませんでした。その家に引っ越してまだ間もない頃、飼い主さんは夜仕事へ出かけて行きました。私は寝るまでネコと遊んで、そのあと猫は自分の部屋へ行き、私は私の部屋のドアを閉めて寝ました。特に夢も見ず寝ていると、突然ズシッと身体に重みが。「初の金縛りか!」とぼんやりした頭で考え、「何も変なものは見たくない」と、怖いので目をしっかりと閉めていました。どうしよう。。。胸もドキドキしていますが、目を開ける勇気はありません。顔にやや冷たい空気がかかります。「凍えさせられるのか?」と思った途端、なんだか胸が暖かいことに気づきました。「幽霊って暖かいの?」目もだんだん冷めて来て、私は冷静に考えられるようになって来ました。ただ重いだけではなく、なんだか微妙に左右に動いています。そして「ぐーぐー」とかすかな音もします。私は心を決め、目を薄く開けてみました。

暗い部屋の中にぼーっと白く浮かび上がるそれは私の鼻先にいました。あんまり近すぎて焦点も合わずぼやけて見えましたが、それはネコでした。私の胸の上に団子状に座り込み、前足でふみふみしていたのでした。気持ち良さそうにぐーぐー言っていましたが、どうやら寝ていたようです。ああ、可愛い〜と思ったのですが、重いんです。見ると部屋のドアも開いています。私はネコを脇に置きました。不満足そうな音を立てましたが、私は寝たいんです。構わず寝返りを打ってまた寝ました。寝付いた頃、ずしっとまた重みがわき腹にかかります。せっかく寝たのに〜と思いましたがここで起きたら思いのツボ、と私は寝続ける努力をしました。さすがに脇腹ではうまくバランスが取れなかったらしく、ネコはグラグラ安定が悪そうです。揺れるたびに硬いつま先がわき腹に食い込みます。「ねれ〜ん!」

結局ネコと私のバトルは、飼い主さんが明け方帰ってくるまで続きました。飼い主さんはしばらくネコを探していましたが、何回か呼ばれると彼はおっちらと立ち上がって部屋を出て行きました。もしこれからネコを飼うことがあったら、寝る場所は私の寝室以外にしてもらおうと思っています。

『ネコとクラリネットふき』の作者紹介:

岡田淳
1947年兵庫県に生まれる。神戸大学教育学部美術科を卒業後、38年間小学校の図工教師をつとめる。 1979年『ムンジャクンジュは毛虫じゃない』で作家デビュー。その後、『放課後の時間割』(1981年日本児童文学者協会新人賞)『雨やどりはすべり台の下で』(1984年産経児童出版文化賞)『学校ウサギをつかまえろ』(1987年日本児童文学者協会賞)『扉のむこうの物語』(1988年赤い鳥文学賞)『星モグラサンジの伝説』(1991年産経児童出版文化賞推薦)『こそあどの森の物語』(1~3の3作品で1995年野間児童文芸賞、1998年国際アンデルセン賞オナーリスト選定)『願いのかなうまがり角』(2013年産経児童出版文化賞フジテレビ賞)など数多くの受賞作を生みだしている。 他に『ようこそ、おまけの時間に』『二分間の冒険』『びりっかすの神さま』『選ばなかった冒険』『竜退治の騎士になる方法』『カメレオンのレオン』『魔女のシュークリーム』、絵本『ネコとクラリネットふき』『ヤマダさんの庭』、マンガ集『プロフェッサーPの研究室』『人類やりなおし装置』、エッセイ集『図工準備室の窓から』などがある。


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