CAN・DAY・A・SORT

こんにちは。初めての方は初めまして。僕は今、宇宙の片隅から宇宙電波を飛ばして放送しています。公開ラジオ放送です。
僕の名前はジテン。れっきとした地球住まいの地球人だったのですが――今はワケあって、半宙半人の宇宙人とのハーフやってます。
そんで、そんなこんなで宇宙船アソートビバに乗って宇宙を漂っています。
「おい、ジテン、なにやっとんの?」
「ちょっと航海日誌を兼ねたラジオ放送を。日誌書きつつ声でも放送してます」
「ほーん。だいぶ器用で奇特な事やってるねえ。あとで添削して進ぜよう」
「国語の教師かオメーはよォ」
「きゃっきゃっきゃ」
――お聞きの通り、僕はジョジョ好きです。……あ、違うわ。今声に乗った女の人がキャンディさん。年齢不詳の永遠の17歳とか言ってる宇宙人です。地球年齢に換算すると17歳らしいのですが、ほんとのところは分かりません。自称なので飽くまで。
あ、僕の年齢は――秘密で。アラフォーに首突っ込んでたんですが、それは地球人だった頃の話なのでどう言えばいいのでしょう。無精ひげ生やして頭に白タオル巻いて紺の作務衣がユニフォームです。どうです? かっこいいでしょう。
地球に住んでいた頃からこうだったんですよ。特に土で何か作ってたワケじゃないんですけど。なんかかっこいいな~と思って。精神的にはかわいいものが好きなんですけどね。
で、何を隠そうキャンディさんも宇宙人。僕が地球に住んでいた時に出逢ったれっきとした純血の宇宙人です。中心に白いラインの入った半ヘルを被っていて――え~、そこに星のマークが走っているラインに沿ってあしらわれております。赤いです。基本。赤のヘルメットに白いラインが走っており、そこを星のマークがてんてんてんと。って感じです。
そんで~赤いジャージの上下を着ており、身体はピンク。宇宙人なもんでね。で、ここからが本題なんだけど、いっつもキャンディさん前開けだからそっから二つの爆乳がぼろ~んこぼれてるのよね。う~ん。宇宙人ってこんな感じなんでしょうか、貞操観念というか。性的な認識が僕ら地球人のものとはだいぶん違うようです。ちなみに乳首の色は紫です。イデッ!!…………ゴツッ…いで~すんません、今殴られました。おでこにも当たりました。マイクが。いでえええ。
「たまには前閉めたり星形のシールで乳首隠してるって言っとけ!」
――たまには前閉めたり星形のシールで乳首隠してます。
「そんで!!」
「そんで?」
僕は振り向く。
「あーしのプロフィールの続きだよ、金髪でくりくりおめめが緑色しててまつげ長くてスッゴイどすけべだって伝えとけ!!」
「……もう載ってると思うけど――」
「あーしはちょっと野暮用があるから話しかけんなよ?」
――だそうです。
「おい、ちょっとジテン?」
――そっちからはいいのかよ。
「お? なんだ? やんのか?」
――やんねーよ。どーせ負けんもん。お分かりの通り、宇宙人同士だとテレパシーが使えます。たまに意図せず伝わっちゃったり拾われちゃったりしても大変のてんやわんやです。こう見えてもキャンディさん、強いんス。ビーム出したりチュッパチャップスみたいな特大のハンマーみたいの生み出してぶん殴ってきたりします。宇宙人って凄いんですよ。みなさん、据え置きでこういう事出来ちゃったりします。中には本物の武器持ったりする人もいるらしくて――まあ、千差万別って感じです。宇宙人も。細かい事は気にしない人達なので、僕もそんな感じで生きてます。のんびり宇宙人気質でよってからに。
この放送が色んな人に届けばいいなと思っとります。
「ジテン~。株式投機で8億モーけた~」
お聞きの通り、今し方キャンディさんが8億儲けたようです。え~相変わらず僕らは貧乏暮らしで、星屑見繕っては中からつか「8億ぅうううう!?」

(‐△‐)「キャンディさん、8億儲けたんスかァ!!??」
(〇 〇)「うん。ライブ配信の方はいいの?」
(‐△‐)「いいっスよそんなもんんんんnッ!! 今スイッチ切りやしたわうへへへィ!! バカヤロウコノヤロウぅう!! マジすかキャンディさん! 俺達今8億持ってンすかあああああ!!」
(〇 〇)「いや、手元にはネーけど」
(‐△‐)「おろして! おろして8億!!」
(〇 〇)「あ。今、2億に下がった」
(‐△‐)「何してんだよテメエ!! いや、2億でも十分すげええええ!!!」
俺はのけぞりながら絶叫。一撃で声枯れた。
(〇 〇)「あ、16億になった」
(‐△‐)「おろして!! おろして! 手元におろして!!降りて下ろしてえええ!!」
(〇 〇)「7億になった」
(‐△‐)「それでいいから下ろしてええええ!!」
(〇 〇)「36億に膨れた」
(‐△‐)「36おきゃあああああああ!!」
(〇 〇)「22億」
(‐△‐)「――22億」
(〇 〇)「39億」
(‐△‐)「しゃあんじゅきゅう!!」
(〇 〇)「2億」
(‐△‐)「――2億」
(〇 〇)「3億」
(‐△‐)「しゃああんおくううッ!! ――って俺、世界のナベアツさんみた――あ、いや世界のなべあぁぁつしゃん! みたいになってますよ」
俺は身をよじりながら言う。
………
……

(‐△‐)「どれどれ――」
俺は何もなかったかのようにしてキャンディさんが面と向かうパソコンのモニターを覗き込む。
画面には円グラフやら棒グラフやら、いくつものグラフが描かれていて俺の顔は窺えないけどおそらくあっか赤いと思う。だって自分でもほんのりと暖かさ感じるモン。
(〇 〇)「……どしよか。結果78億の資産」
――ちょっとその潤沢STARTは如何な物であろうか。
なんか困難とか降りかかっても金で解決出来そうな気がする。
俺も一応、未だビーム出せないものの特殊な力もたらされたし、バトル展開も辞さない構えだったのだがこれはいけない。
78億の資産があったら物語は終わりだ。冒険活劇は終わりなのだ。冒険者ってのはスカンピンだからいいのだ。それを知恵と勇気やあの――駄目だ一回さけばさああ
(‐△‐)「にゃなやじゃあああちああああああ!!」
(〇 〇)「どしたんよ」耳に人差し指を突き刺して困り顔を向けてくるキャンディさん。
(‐△‐)「駄目だ頭回んねえ! とまんねえよ念波が! 強い念波がダダ漏れなんだよ!!」
ライブ配信とは言ったけど、僕達宇宙人というのは念波が使えて、絶えず想いを誰彼に向けて発信しているようなものなのです。ただ、受取手に感受性があれば簡単に僕ら宇宙人の声はキャッチ出来ます。……もしも~し。聞こえてますでしょうか。

(〇 〇)「いかん。そんなんしてたらワルワル宇宙人が金の匂い嗅ぎつけて襲って来んぞ」
(‐△‐)「だめだああああ78億という偶機!機運の前に脳汁がとまんねえよおおおお!!」
(〇 〇)「いかん、このままじゃ埒が開かん。捨てよう」
(‐△‐)「なにしてんだよテメエ! 今更78億ドブに捨てるヤツがありやすかあああ!!」
(〇 〇)「いや、チゲーよ。オメーだよ」
はい?
(〇 〇)「な。一旦頭冷やしてこい」
あ。足下から風が抜けてく~♡
床下がぱっくり開いてすっごい勢いで風が抜けていきます。もちろん僕も。この船、こんな機能があったんだネ♡
………
……

宇宙空間にて大の字の僕。
僕は今。宇宙空間に居るわけで。
そんなこんなでCAN・DAY・A・SORT始まります。

こんな事なら読みかけの鎌倉ものがたりの廉価本全部読んどけば良かったなと後悔してます。
そんな事をキャンプファイアーの前で、丸太に座りながら満天の夜空の元、思ってます。宇宙船アソート・ビバの中には読みかけの漫画や作りかけのガンプラやそれと少々の小説など――宇宙に出てみたものの、地球の暮らしとほとんど変わらない暮らしぶりをみせている僕です。それら全部片付け終えたとしても宇宙にはワープ機能、ワープ航空というものがあるので如何様にでも新規の地球の娯楽を回収出来るのです。あ、そうそう、宇宙に出て一番驚いた事。それは地球にあるものは全て宇宙からの流通品だという事です。つまりは地球発のものはなくて、それらは全部宇宙から流れてきたものらしいのです。例を出すと――たこ焼き。みなさん、たこ焼きってご存じですよね? あれも宇宙のどこかにあるまだ見ぬ星から生み出た食べ物らしいのです。なんか、最初は枕として生み出されたとか木の実に成っていた果実だとか諸説聞きましたがホントのところどうなんでしょう。僕自身の目で確かめたいところです、それは。そうそう。そんなたこ焼きなのですが、実は宇宙で邂逅済みで。オマツリ星という惑星に辿り着いた時に屋台で食べたんですけど、まるっきりたこ焼きでした。
「ホットミルクが出来たの~ネ!」
そんな事を毛布に包まりながら思っていると、僕にホットミルクを差し出してくれた人が。
何を隠そう、この人が宇宙空間をさまよっていた僕を助け出してくれた人です。
……人って言っていいのでしょうか。まるっきりポストです。あの――家の軒先とかにあるこじゃれた筒長のポストって分かります? 赤い細長いヤツ。郵便受け。それです。それが僕の真横に座ってミルク飲んでます。
「アツいから気をつけて飲むの~ネ」
気を遣われてます。ポストに今、僕は気を遣われています。宇宙には宇宙人の他にこういった宇宙生物も居るのです。見慣れぬ宇宙生物から見慣れたものの、それの幾つかの混成型やら、まるっきりそのもの――地球のものをまるっきり模したもの……逆なのかな? とにかく僕の前にあのポストがいます。生けとし生けるポストが。
ポスト「猫舌なの~ネ?」
あまりにも僕がホットミルクを飲まないもんだから不思議そうに僕の方を覗き込んできます。腰元?をくにゃりと折り曲げたポストが僕の顔を下から覗き見上げて来ます。
それで分かったことが、こやつは〒マークの部分が顔なんだって事です。このポストにも日本の〒マークがあしらわれているのですが、とこがくにゃっと曲がって僕の方を見つめて?来ます。って事は、このマークも日本由来のものではないのか……
ただ、そのポストはただのポスト風情ってワケじゃあなくて、緑色のキャスケットを被り、大きなリュックサックを背負っています。今は下ろしてますけどね。腰を下ろすと共に。……ここら辺で一旦一息ついてミルク飲んどくか。
……ズズズ……
(‐△‐)「おいしっ」
(〒)「よかったの~ネ。お口に合ったの~ね」
と、親指を立ててグーサインをしてきます。はい。ご覧の通りの姿です。

(‐△‐)「ポストンさんは世界中を旅して回ってるんですよね」
(〒)「なの~ネ。このリュックの中の荷物を待ってる人がたくさん居るの~ネ!」
〝パンパン〟と、横に置かれたリュックサックを叩くポストンさん。
なんでも、元々はマジにポストだったらしく、どっかの宇宙支部の郵便局の局員さんがお亡くなりになって、荷物が届けられない状態になったらしいんです。……だけども、そのポストには荷物や手紙の他に差出人や届け先の想いがたくさん込められていて、それでポストに生命が宿ってこうしてポストンさんになったらしいです。
宇宙って不思議です。なんでもありです。
(‐△‐)「その荷物を配達する旅回りの途中と」
(〒)「なの~ネ。みんなの喜ぶ顔が見たいの~ネ。でも、荷物ひとつ増えちゃったの~ネ」
え? と僕はポストンさんの顔を窺う。
(〒)「キミの事なの~ネ☆ キミをキャンディさんのところに届けるの~ネ」
(‐△‐)「ぽ……ポストンすわぁ~ん!!」
と溜まらず僕はポストンさんを抱きしめ頬ずりします。
(‐△‐)「俺、宇宙に出てからこんなに優しくされたの初めてだあい!♡」
(〒)「いちちち……おヒゲが痛いの~ネ」
(‐△‐)「いやだいいやだあい! 俺ぁあと小一時間こうしてる所存だあい♡」
ポストンさんが手持つマグカップからミルクがこぼれる。
(〒)「アツいの~ネ! イタの~ネ! 結局、ココも摩擦でアツイタいの~ネ!!」
と僕を顔ごと仰け反らせようとするがそれは許さない。だってこんなに優しくされたの初めてだから。
地球に居た頃も含めてもかもしれない。
(‐△‐)「聞いてくださいよォポストン殿おお」
(〒)「なぜか急に格があがったの~ネ!」
(‐△‐)「キャンディさんの事はさきほどお話したでしょ~お?」
(〒)「き、聞いたの~ネ。たしか、鬼が100体集まって生まれた生き物を悪魔が飲み込んで生まれた極悪の権化だとか」
(‐△‐)「そうなんスよおおおン。で、で、でねでねえ!? その人ったら酷いんだよお! 殴るし蹴るし、人のことゴミみたいな目で見てくるし殴るし、そのくせ朝起きたらレイプされてるし、お昼寝してたらレイプされてるし、夜寝てたらレイプされるンすよおおお!」
(〒)「い、いつ休んでるの~ネ……??」
(‐△‐)「そこがたまらなく好きなんですけどねええええ!!」
(〒)「あらら。すっかり飼い慣らされてるの~ネ」
(‐△‐)「でもたまには犯し返したいってのが男心じゃないスかあああ」
(〒)「アタシ女だから分からないのネ」
思い切り僕はポストンさんを突き飛ばし君に離れ、
(‐△‐)「おおおおおんんあ女性だったんスか!!」
(〒)「正確には、宇宙人や宇宙生物にはこれといった雌雄の判別はないの~ネ。ただ、心はあるの~ネ。ミーはどちらかといえば女の子寄りなの~ネ」
(‐△‐)「すすす、すみませんした……その、胸とかその――さわ、さわ――」
(〒)「いいの~ネ。これでもミーは意外と軽い女なのね。荷物と中身は思いケド――♡」
と、僕を流し目でみてくる、、、ような気がする。あれ? なんだこの雰囲気。薄暗いから分からないけど、なんかポストンさん、さっきより赤くなってないか?
(〒)「……出し入れもなれてるの~ネ……」
と言って身体一つ分近づいてくるポストンさん。
は? なんだこの空気。
その、郵便受けとしてって事ですよね?
あれ? 手ェ握ってきたよ~オ!?
俺、まさかポストと一戦交えるんじゃないだろな。
(〒)「冗談なの~ネ!!」
と、そのまま僕の腕をポンと叩いてくるポストンさん。
はは~ん。中身、熟女だなこりゃ。
……熟女は好きだけど。
宿る魂は熟女だこりゃ。熟女好きだけど。
なんかお歳暮とか多めだったのかな。中身。
お醤油とか、油とか。
ポストンさんのお顔なのですが、据え置きの郵便マーク(〒)の横にリュックの肩掛け。それとキャスケットのつばを合わせれば宇宙の〝宇〟の字に見える時があります。
……どうでもいいですかね、そんなの。
(〒)「さて、ミルクも飲み終えたのデ、今日はそろそろ寝るの~ネ!」
(‐△‐)「あ、今日はどうもありがとうございました」
(〒)「ではお先~」
と言って郵便局風のテントの中に潜るポストンさん。
――僕はこのままもう少しホットミルクを片手に夜空でも見上げていようと思う。……地球は見えるかな? ……見つからないといいな。だってこのままこうしていたいから。
テントに戻り次第、間違いが行われそうな気がするから。
ポストの中に、僕の白いの出したくないんだから。
俺発のポストンさん宛ての。
……いやいや!当たったら困るぞ!!??
小包が!小包がコウノトリから運ばれるハメに!? ……いや、ハメにじゃなくって!!
――みたいなくだらない事を考えながら夜空を見上げていたら、俺はいつの間にか寝落ちしていたみたいだ。

お願いシマチューホームズ行ったことない! うそ! ホントはあるかも! 断定しかねる!!