見出し画像

お金で買えないものってあるの?

金澤一行
シンクタンクでの研究員、㈱リクルートでの新規事業責任者を経て当社に参画 。東京大学大学院公共政策学教育部修了(専門職修士)、早稲田大学総合政策科 学研究所招聘研究員、資格・役職等:総務省地域力創造アドバイザー、埼玉県官民連携アドバイザー。

はじめまして、AsMamaの金澤と申します。
私は行政のコンサルティングや大学の研究員をしています。
といっても普段は田舎のヤンキーなんですが。
私の書く回では、コミュニティというものを少しだけ、アカデミックに考えてみようと思います。
みなさんが普段から大切にしているコミュニティや、周りの人との付き合い、これにはどんな意味や価値があるのだろう?
それを少しだけ政治学、経済学、歴史学の視点から解きほぐしていきたいと思います。
できるだけわかりやすい言葉で、難しくないように書くようにチャレンジしてみますので、お付き合いいただけると嬉しいです。

 
今回は、「お金で買えないものはあるのか?」というテーマです。

1.お金の正体とは?


昔社会の授業で習ったことを思い出してください。社会の先生は、お金とは「信用」と言っていたはずです 。
私も初めて聞いたときに、「お金が信用ってどういう意味だよ?」と思いました。
信用ってどういう意味でしょうね?
ここでいう信用というのは、「1万円札を持っていけば、1万円分のものと交換してもらえるよね」という信用です。
もし、この信用がなければ、1万円札はただの紙切れです。
そして、1万円札は誰が持っていても1万円の価値があるということになります。
イギリスの経済学者、フェリクスマーティンは、これを「譲渡可能な信用」と表現しました。

フェリクスマーティン 21世紀の貨幣論
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784492654651

「譲渡可能」というのがポイントです。
誰がもっていても同じ価値を持っている。王様が持っていても平民がもっていても1万円は1万円分のものと交換してもらえるのです。
では、「譲渡可能な信用」があるなら、「譲渡不可能な信用」もあるのではないでしょうか?
それがソーシャルキャピタルというものなのです。


2.ソーシャルキャピタルって何?


ソーシャルキャピタルとは、ざっくり言うと「人との関係に基づく信用」です。日本語で言うと「社会関係資本」という難しい訳語になります。
例えば、お世話になっている人だから何かしてあげようというような感じで、よい関係があるから特別に何かしてあげる・もらえるの関係ですね。

ソーシャルキャピタルを貯めていると、困ったときに誰かに助けてもらえる。自分のことを気遣ってもらえるといういいことがあります。
これは、他人に譲渡するのはなかなか難しいです。「あなただから助けるけど、他の人にはやりたくない」というのって結構あると思います。
しかし、ソーシャルキャピタルが交換できるものって少ないです。
なぜなら、自分の仲の良い人にしてもらえる範囲のものでしかないからです。
そして、ソーシャルキャピタルで手に入る多くのものはお金で買うこともできます。例えば、おすそ分けでいただける食べ物だって、ほとんどのものは買うこともできます。高齢者や子供の世話だってお金を払ってやってもらうサービスもあります。
人と人との関係性でできているソーシャルキャピタルで手に入るものってお金でも手に入るものが多いんです。

じゃあ、なんでソーシャルキャピタルって大事なんでしょうか?
理由は2つあります。

3. すべてお金で解決すると大金が必要になる


1つは、全部お金で解決するには大金がかかるから。
例えば、介護の訪問ヘルパーは自費で頼むと1時間2,500円くらいすると言われています。野菜やお米や魚などをおすそ分けしてもらえる地域もあると思いますが、同じものをスーパーで買うと結構高いです。
お金を手に入れられるのは、社会の中でどれだけ価値を創造できるか次第です。企業で働くとスキルや経験などでお給料が値付けされます。人より優れたスキルや経験がなければお金をたくさん稼ぐのは難しいです。競争に勝ち続けないといけません。
競争に勝ち続けられる人は大丈夫ですが、そうではない人だってたくさんいます。
今競争に勝てる人も、若いうちは自分の力だけで生活できても、年を取ってから人に頼ることが増えたり、稼ぐ力が落ちたりしたときに、全部お金で自分の生活を解決するのはだんだん難しくなってきます。

4. 「自分が大切にされている」という思いが込められていると嬉しさが違う


じゃあお金がたくさんあれば、ソーシャルキャピタルがなくともいいの?ということになりますが、ソーシャルキャピタルのよさはそれだけではないんです。
ソーシャルキャピタルは他人に譲渡できない。
それは裏返すと、「あなたのことを大切にしている」ということなんですね。
ソーシャルキャピタルが大切なもう1つの理由は、これなんです。
お金を払えば誰でも売ってもらえるものは、どんな人でも同じように扱ってもらえる平等さがあるのですが、ソーシャルキャピタルで得たものには「あなたのことを大切にしている」という、特別扱いをしているというメッセージが込められています。
同じ野菜でも、「あなたが私にとって大切」という気持ちを込めてもってきてくれたものは嬉しいですし、子供の預かりや高齢者のお手伝いなども「あなたの大切な人だから、私も大切にするよ」と思ってくれることがとても嬉しいんですよね。
モノや、やってもらうことは、お金で買えるものと同じだったとしても、そこに込められている思いがあると、それをもらうときの嬉しさが増えます。
みなさんが大切な人からプレセントしてもらって大事にしているものも、お店で買ったものが多いのではないでしょうか。知らない人が作った工業製品なのに、思いを込めてプレゼントされると、それがかけがえのないものになります。
私たちは、モノそのものだけではなく、そこに込められている「自分が大切にされている」という思いをとても喜ぶという性質を持っています。

5. お金で買えないものってあるの?


お金で買うということは、原則として、同じ金額を持っている人なら誰もが平等に扱ってもらえるということなのですが、ソーシャルキャピタルはあなただけが特別ということになっています。
「愛情」や「友情」はお金で買えないという人もいます。
反対にお金で何でも買えるという人もいます。
私は、どちらも正しい側面があるのではないかと思います。
おそらく、大抵のモノやサービスはお金で買うことができるのだと思います。
でも、お金で手に入れたのか、ソーシャルキャピタルで手に入れたのかというので、そこに込められた気持ちが違ってきて、私達はその込められた思いがあることで、心が満たされたりするんですよね。

「あなたのことを大切にしている」

そういう思いを持ってくれる人が近くにいることが、人生をとても豊かにしていきます。
コミュニティを作るのには、そういう意味があるのだと思います。


また次回以降、コミュニティに関する様々なお話を皆さんと一緒に考えていけると嬉しいです。

「いっしょに何かできそう」そんな問い合わせが一番のサポートです。https://bit.ly/3aDo1qt 全国の自治体・施設・企業・団体・個人どなたでも。 共助コミュニティ創生、ブランディング、プロモーション、マーケティング、地域活性、子育て支援を、AsMamaとご一緒に。