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Withコロナ時代のアジアビジネス入門② 「報復的消費という中国人の反動」@ONLINE講座中国編(1)

 新型コロナの自粛が解除された中国では5月22日から全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が例年に比べて約2カ月半遅れで開催される。
 毎日アジアビジネス研究所が開設した「Withコロナ時代のアジアビジネス入門ONLINE講座」の最初のシリーズ「陳言の中国ビジネス<北京からの最新報告>(1)サプライチェーンの構造変化」(5月1日開催)で、経済ジャーリストの陳言氏は自粛が解除された中国人の心理について次のように語った。
 「(全人代開催が発表された4月29日の午後に)北京で14日の隔離が解除された。すると、中国最大手の旅行サイト『Ctrip』(シートリップ)のアクセスが15倍に跳ね上がった。3カ月も家に閉じこもり、外で酒も飲まずに我慢していたので、みんなは地方に、そして武漢に旅行しようと思った。これは報復的消費と呼ばれている。3カ月も我慢したことに対する報復です。報復ための消費です」。
 最初に感染が拡大した湖北省武漢市周辺は自動車関連工場の集積地で、日産やホンダの工場もある。ロックダウン(都市封鎖)で工場の機能はストップし、これが日本や世界のサプライチェーンが一時的に機能停止に陥る要因となった。陳言氏は、当時、中国メディアが日本企業の撤退を危惧する報道をする一方で、自動車などのサプライチェーンを世界最大の市場を持つ中国国内に「内製化」する動きがあると指摘した。
 ONLINE講座で陳言氏へ興味深い質問があった。
 ――日本では新型コロナによる休業などの補償が話題になっているが、中国ではどうなのか。
 「日本は『パイの分配』という考えだが、中国の役人らの発想は『パイの増加』だ。武漢の場合、(日本のような)補償はなかった代わりに、他の省などから食料、生活必需品、人員が送り込まれ、そういう面で困窮することはなかった」

 ――外資(日本)の製品に比べて中国製の優位性は何か。 

 「今まで日本の家電は質が高く素晴らしいと思っていた。ところが、ここ数年の買い換えで購入していない。例えば、テレビでは『Xiaomi』(シャオミ)は(日本製に比べて)高いけど購入する。理由は携帯(スマホ)とのつながりが良いからだ。中国の消費社会はスマホが中心だ。スマホでニュースや映画を見る。テレビはスマホと接続された大きな画面だ。優位性はスマホと連動した使いやすさだ」

 ――米中は貿易摩擦のみならずコロナ対応でも対立しているが、中国は日本企業をどうみているのか。
 「日本企業は高級な部品、キーとなる素材をつくる特徴がある。これは日本のモノづくりの強さだ。もう一面で、日本の商社や銀行は世界的なネットワークを持ち、その情報を理解する能力が高い。(日中は)第三国で協力できるのではないかと思っている」

【陳言の中国ビジネス入門】
(2)5月8日(金)19:00~20:30 「アビガンに続け!治療薬・ワクチン開発競争の裏側 対応急ぐ介護・医療イノベーション」
https://china-biz2.peatix.com/

(3)5月15日(金)19:00~20:30 「アリババクラウド、オンライン教育のリアル ! 膨れ上がるオンライン市場」
https://china-biz3.peatix.com/

(4)5月22日(金)19:00~20:30 「ビックデータ王国の変貌で日本はどうなる?『内製化』する中国経済」
https://china-biz4.peatix.com/

■講師 陳言(ちんげん)
 毎日アジアビジネス研究所シニアフェロー、NewsPicks プロピッカー(コメンテーター)、日本企業(中国)研究院執行院長、経済ジャーナリスト
 1960年、北京生まれ。82年、南京大学卒。82-89年『経済日報』に勤務。89-99年、東京大学(ジャーナリズム)、慶応大学(経済学)に留学。99-2003年萩国際大学教授。03-10年経済日報月刊『経済』主筆。10年から日本企業(中国)研究院執行院長。現在は「人民中国」副総編集長も務める。

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