中国雲南省で考えた「国の有り様」(1)


画像1


コメ原産地は巨大な「高齢者地域共同体」に変貌中

 私が中国雲南省で連想するのはコメの原産地の一つであるということだ。

 司馬遼太郎の著書「この国のかたち(二)」には、中国の中原と呼ばれる黄河流域との対比で揚子江流域について次の記述がある。

 <長江流域のコメ地帯は古代 、楚とよばれ 、非漢民族地帯で 、中原からは、蛮地とみられていた 。そのはるかな源流は、三世紀でもなお蛮夷の地とされた雲南にあった 。雲南の背後には 、東南アジアやインドなどのコメ地域がひろがっており 、表現をかえると
、東南アジア稲作民族の北方への最前線が 、中国の長江流域のコメ地域だったといえそうである >
 コメは雲南から揚子江をたどり朝鮮半島に渡って古代の日本に伝わったのだろう。コメの伝播は縄文の狩猟文化を追いやり、弥生時代に農耕社会として日本は発展を遂げていく。

後々、コメの源流の雲南は葉タバコやプアール茶の大産地であることを知り、最近、知人の中国人から「雲南で採れる松茸はほとんどが日本にいきますよ」とニヤリとされた。


10月下旬に初めて雲南省昆明市を訪れ、標高1800㍍にある巨大なCCRC(Continuing Care Retirement Community、高齢者地域共同体)「恒大養生谷」開発プロジェクトを目のあたりにした。中国最強のサッカーチーム、広州恒大を持つ最大手の不動産会社、恒大集団(本社・広州)。そのグループ企業、恒大健康集団が手がける「恒大養生谷」は現在、12期計画の2期目で槌音が響く中で突貫工事が行われていた。

 高級感を醸し出す乗馬施設も

画像2

 すでにその一角には乗馬場が完備され、300頭の馬が飼育・訓練されていた。
 なぜ、ここで乗馬なのか。恒大健康集団によると、山岳部の雲南省はもともと輸送に馬を使うことが多く、馬の生産地の一つであり、馬と縁のあると土地柄である。そして、最も大きい理由は、このCCRC自体が、ヨーロッパのリゾートを模して設計されているからだ。子供から老人までが住めるCCRCで5から7年後の完成時には人口7万人に達する。

  担当者は中流層向けと説明するが、ゴルフ場などのスポーツ施設の中で、乗馬を目玉にするのは富裕層を意識したブランド戦略ではないかと思った。
乗馬倶楽部にはヨーロッパの貴族らを描いた絵画が並べられて、否が応でも、高級感を醸し出す。元気な若い中国女性の騎手がエレガントに馬を乗りこなす風景を見ていると、コメ原産地の連想は一蹴され、巨大なマスタープランのもと開発志向で邁進する国の有り様の一断面が見えてくる。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?