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最後は人間その人を問うしかないのか

久々に区役所へ行ってきた。

役所はサービス業ではないので、仕方がないことなのだが、保険料について知りたいことがあり、色々と質問をしていたのだが、担当のオジサンは、すごく気だるそうに受け答えをする。黄金町の立ちんぼかとツッコミを入れたくなったがグッと堪えて、話を進めた。

聞いたことにはちゃんと答えてくれるので、それには好感が持てたのだが、とにかく、聞いたことにしか答えてくれない。

「○○っていう制度もあるって聞いたんですけど」
「関連して△△っていうのもあるって聞いたんですけど」

と、こちらから投げ掛けなければ、情報がとにかく引き出せない。自分が事前に調べていた事柄についてはすべてを質問して、それなりに満足のいく回答が得られたのだが、実は、もっと別の良い情報もあるんじゃないかという思いが拭えなかった。

今日は一時間待ちだったので忙しいのは分かるが、早く回転させたいのか、すごく嫌そうな顔で、もう終わりにしてくれみたいな対応だったので、また事前にしっかり調べてから行かないとなあ、というのが役所の残念なところであった。端から期待していないので、こういう対応には腹は立たないのだが、めちゃくちゃ腹の立っているお年寄りが、私の隣の席に座っていた。

今日は15人、一時間待ちだったのだが、その一時間の間中、隣のジイサンが役所の人間にブチ切れていた。偏屈なジイサンで、役所の人も大変だなあと思っていたのだが、どんどんジイサンがヒートアップするので、話の内容を聞き耳立てて整理してみた。ジイサンの言い分はこうだった。

・先日、医療関連の申請で役所に相談に来た
・予備知識が何もないので、何も分からず、役所がとにかく頼りだった
・その時の役所の担当は女性だった
・その女性の言う通りに今日やってきて、250円の申請を2つ行った
・しかし、それは私が最終的に望んでいるものとは無関係の申請だった
・500円と時間を無駄にした

ジイサンは暇で、元気が有り余っていて、娯楽で役所の人間に絡んでいるわけではなかった。見た感じ、もう80歳を超えていそうで、歯が弱っていて声もこもる感じだったが、相手にしっかりと主張するという気概が伝わってくる理路整然とした論旨だった。私なら、このジイサンに誠意を持って謝って500円をお返しして終いにする、アッという間に終わる出来事だと思ったのだが、役所の人間は、反論していた。

・具体的に情報を出してもらわなければこちらも間違えてしまう
・担当は全知全能の専門家ではない
・このような件は「苦情窓口」に市民の声として提出してくれ
・500円を返すことはできない
・先日の担当を連れてくることはできない

民間企業、サービス業ならびっくりの内容だろう。

このジイサンはとにかく、予備知識がなく、何をどうしたらいいか分からない状態で、先日、役所にやってきて、藁をも縋る思いで相談し、役所の担当女性に薦められるがまま、今日、やってきて、無関係の申請を500円分、行ってしまったと繰り返し主張している。

役所の男性は、これに対し、具体的に情報を出してもらわなければ、こういう間違いは起こってしまう、先日の時点で、間違いのない情報を持参してほしかった、一からやり直してほしい、と繰り返し反論している。

区民の立場で、皆さんなら、これをどう思うのだろうか。

私が当事者なら、私がこのジイサンなら、同じようにブチ切れていると確信する。何も予備知識がないから、先日、相談に来ているわけで、その時に持ち得る情報から、役所の人間に勧められて、役所の言うがままに申請を行ったら、実はまったく無関係の申請だったというのだから、否は役所にあるとしか私には思えない。

専門家ではないから詳細までは分からないので、医療機関などで改めて相談してください、などの対応だったのなら分かるのだが、このジイサンと役所の男性のやり取りを聞く限りでは、先日、役所の担当が答えを出して言い切ってしまっている。役所は否を認めて返金すべきと私なら考える。

この後、私の番になり、十数分、席を外して、冒頭の件を済ませたのだが、戻ってきたらさらにジイサンはヒートアップしていた。このまま死んでしまうんじゃないかという勢いだった。顔も真っ赤っ赤だ。気が付けば、役所中に響き渡るような大声になっていた。私はこの歳でもこれだけの声量が出るもんなんだなと、無関係なことに関心してしまった。

ジイサンの言っていることは、先ほど列挙した内容をもはやループしているだけだった。驚くのは、役所の人間が、先ほどの男性とは別の男性に代わっていたのだが、この男性も、先ほどの男性とまったく同じ内容でジイサンに反論しているのである。この対応は、役所内でマニュアル化されたものなのだろうか。あまりに誠意のない対応でびっくりするしかなかった。

二人してずっと同じことをループして、これは収まるわけがない。私は結末を知りたかったが、用事があったでの役所を後にしてしまった。

サービス業なら、こういうミスこそ、信頼を得られるチャンスで、これは企業に関わらず、個人間でも同様のことが言えるのだが、何か否があったときに誠意を持って対応されると、何もなかった平行な関係よりも、ずっと株が上がりやすい。非日常の事象は、相手の本性が見えたような気がするからだ。

役所は客商売ではないので、こういう配慮は要らないのだろう。どんな態度でも、必要なら役所に出向くしかないからだ。正直、この役所の対応が正解だと言われても、そこに違和感はない。それぞれの立場で貫かなければならない信条はある。でも、私が一番気になったのは、この役所の人間が、このジイサンのことを「お客さん」と呼んでいたことだ。私の担当もそうだが、とても「お客さん」を相手にした対応とは思えない。

この呼び方だけが、私の中でまだ靄が掛かったように頭の中で残っている。

(アシベズヘア/facebook

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