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オンワードは、100万件の体型データは活用できるのか?

 オンワードが、ZOZOとオーダーメードの衣料品の製造販売で提携すると正式に発表した。ZOZOは全身採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ」などで、約100万件の体形データを蓄積しており、このデータを活用する。利用客が自分の身長と体重を選択するだけで、体形に合ったオーダーメードのジャケットやパンツを注文できる。商品はオンワードHDが中国のグループ工場で製造し、10日~2週間で自宅などに届ける。男女向けのジャケットやパンツなどを10日程度で製造して届けるサービスを8月下旬に始める。今後、取り扱いを靴などの商品にも広げ、5年で年間売上高を100億円に育てたい考えだ。

◯100万件のデータ
 「ゾゾスーツ」で蓄積した100万人分の体型などのデータを活用するとありますが、果たしてどのように活用するのでしょうか?オンワードと何の接点もない人であり、私が思うにゾゾスーツを買いたい人はオンワードのスーツを欲しがらない人が大半ではないかと。仮に直接的なマーケティングにそのデータを使わないとしても、過去の100万人分のデータがどこまで生きたものなのかが怪しいです。このデータを集めた背景、ターゲティング、手法、経過時間など全く無視して、違う会社で使えるものなのか? このデータでどんな顧客に何を提供できるというのだろう。

◯「あなたにジャストサイズのデータあります。」という矛盾
 服を買うときに何で決めますか?ブランドバリュー、流行、素材、値段、デザイン(形)、色など様々だと思います。「サイズがジャストであること」はそもそもどこまで求められているのか?こんなことを言うと否定的に聞こえてしまうかもしれないが、僕はサイズがジャストであることを最も重要視しています。僕は小1からサッカーをやっていた関係で、結構独特の体型をしています。だから、なかなか自分の体にあったものにめぐり合うことはありません。だからこそ、たまたまジャストフィットする服を見つけたら、まとめて買ったり、リピートしたり、そのブランドを毎シーズン買ったりします。もう一度言いますが、僕は「サイズ第一主義者」です。だからこそ言いたいことがあります。

ゾゾスーツで測った体型と変わったら、どうするの?

そうです。「サイズがジャストであること」を本当に求める人は、毎回洋服屋で試着をしたり、採寸したりしてもらうものです。ゾゾスーツでいつ計測したかわからないデータで洋服を買ったりしないと思います。体型なんて、朝昼晩で微妙に違うだろうし、食前食後でも違う。筋トレ前と後でも違う。そんな不確かなものなのに、ZOZOというまったく関係のない会社が1年以上前に集めたデータを、再利用しようとしているのが今回の試みです。

◯変化をつかめているか?
 生き残りには、ターゲット層である顧客の生活をこれまで以上に見通すチカラが必要になると思います。例えば、「コロナによってテレワークが浸透し、スーツやジャケットを着る機会は激減している」という声を聞く事があります。この声を真に受け、テレワーク用のフォーマル部屋着とか、ビジネス用のオーダー部屋着とか作り出したらヤバイと思います。首都圏の朝の通勤電車に乗ってみるべきです。ピークの時間帯が以前より若干ずれているような気がしますが、満員電車もほぼほぼかえってきつつあります。この状況を鑑みるとテレワーク用の衣類はそれほど需要がないでしょう。

100万件のデータよりも、自身の顧客ととことん付き合い、顕在ニーズを把握し、潜在ニーズを掘り起こし、ブランドを強くしていくことの方が、100万倍大事だと思っています。

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