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絶対運用と相対運用の違い

絶対運用とは、相場の状況に関わらず、常に運用パフォーマンスがプラスになることを目指して運用することです。

一方、相対運用とは、TOPIXなどのベンチマークに対して、相対的にプラスになることを目指して運用することです。

世の中の普通の損得勘定は絶対運用ですが、世の中の多くの機関投資家は後者の相対運用を行っています。従って、機関投資家は株価が20%下落しても、下落率を17%に食い止めることができれば大成功なのです。

この辺の理解が無ければ、ファンドマネージャーとの会話にしばしばすれ違いが生じます。

株価が大きく下落した日には、「大変ですね」「忙しいでしょう」と言われることがありますが、それはある意味で当たっていて、ある意味では外れています。

まず、株価が暴落したからといって、相対運用なのでドタバタとファンドの中身を入れ替えることはほとんどありません。ファンドの保有銘柄が皆▲5%下がっても、例えばベンチマークのTOPIXが▲7%下落してるならOKなのです。

以前から〇円まで下落したら買いたい、と目を付けていた銘柄を買うことはありますが、既に保有している銘柄のファンダメンタルズに問題がないなら、ポートフォリオはそのままにします。

但し、解約が増えた場合は粛々と売却せざるを得ません。また、株価が暴落するような日には、「下値目処はどこ?」「相場の見通しに変更ないのか」という社内外の質問に答えたり、レポートを書く仕事が増えます。

海外の市場がどのように始まるのかも気になりますので、夜まで会社に残ったりします。何よりそういう緊急事態的な雰囲気の時には、一人だけ早く帰り難いものです。

また、大きな株価下落の後、戻りの過程で相場付きが変わることがありますので、セクターやベータの調整など考えるべきことが増えます。

忙しくなるのは、このような背景です。

絶対リターン型ファンド

一方、ファンドが絶対リターン型の場合や、デリバティブによりヘッジを行っている場合、ファンド資金のかなりの割合をキャッシュにする権限がある場合などは、ポートフォリオの売買に忙しくなります。

既に下落を想定してヘッジしていたなら、それを買い戻すべきなのか、ここからさらにキャッシュを増やすべきなのか、どのくらいの下落なら耐えられるか、短期間で判断し実行しなければいけません。

金融機関の母体にまで影響する場合

大きな株価下落は、金融機関が引き金となることが多いです。1997年の山一破綻、1998年の北海道拓殖銀行破綻、アジア通貨危機、2008年のリーマンショック、2010年の欧州債務危機然りです。

金融危機で株価が下落するときは、運用母体である銀行や保険会社自身の資産が打撃を受けて運用リスクがとれなくなります。所定のリスク管理基準に抵触した場合は、社内のリスク性資産を圧縮せざるを得ません。

つまり、普段は相対運用を行っていても、運用を行っている母体の経営リスクまで高まった場合は、絶対的なリスク管理をする必要があります。ファンドマネージャーといっても所詮その企業のサラリーマンですから、相場の見通しに関わらず、粛々と売却を実行せざるを得ない状況も生じます。

このように相対運用と絶対運用の違いを理解することで、ファンドマネージャーの仕事をイメージしやすくなります。

ヘッジファンドの集中投資は別格

絶対運用、相対運用の違いを述べましたが、一部の一流ヘッジファンドは、例外的な運用を行っています。

彼らは、通常の運用会社のアナリスト以上に、徹底的に、様々な角度から、長期に渡って一つの銘柄、アイデアを調査し、集中的に投資を行います。

彼らに言わせると、分散投資は負け犬の発想であり、自信の無さの表れであり、相対運用のリスク管理の枠組みとは別次元の運用を行っています。

本や映画に出てくるような彼らの運用と、サラリーマン・ファンドマネージャーの運用は根本的に別物です。

<出典>
ファンドマネージャージョブネット

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