絵について


物心がついた頃から、絵を描くのが好きな子供だった。

よく姉や、友人とお絵かきして遊んだ。好きな漫画の絵を真似て、色々描き方を工夫しながら、自分の絵を少しずつ上手にしていった。

小さい頃は漠然と、自分は絵の上手いほうだと思っていた。同年代の子に比べればまだ上手い方だったし、何より絵を描くことが好きで、その気持ちが強かった。将来は漫画家になるのだろう、と思っていた。


姉は自分より絵が上手だったけど、それは年が自分より上だからなんだろうと考えていた。でも、年を重ねても、姉が同じ年の頃に描いた絵に比べると、自分の絵はちっともよく見えなかった。

そして小学6年の頃、友人が描いていた漫画に衝撃を受けた。その頃私も漫画を描いていたけれど、絵もストーリーもその友人の描いていたものの方がずっとずっと上手だった。

もしかして、自分はずっと絵ばかり描いてきたけど、あんまり上手な方では無いのかもしれない、と思い始めた。


中学、高校とそれでも私は絵を描き続けていた。やっぱり絵を描くことが好きだったから、好きなこととして、続けていた。

中学で新しく絵を描く友人ができた。その頃は私より少し下手だったけど、向上心がとても強く、絵を研究して絵柄をどんどんと変えていた。私も絵が好きだったけど、そんなに熱心に描くのか、と感心していた。


高校の時には、そこそこ見れる程度には上手いものを描けるようになっていた。自分の描きたいものを、描きたいように、ある程度は描けるようになっていた。

この頃には段々と現実も見えてきてて、私は漫画家にはなれないだろうな、となんとなく感じていた。


でも、描きたいものが描けるようになった。それでいいじゃないか。

私は自分の描く絵に満足した。これくらい描ければそれで充分だ、と思った。その時点で、私は成長することをやめたのだ。


満足してしまった時点で、私は絵を描くことのゴールを迎えてしまった。


高校以降は、ふと思い出した折りに手遊びとして絵を描くくらいになって、全く描かなくなった。

中学時代の友人は、紆余曲折を経て、漫画家になった。今では、私なんか目じゃ無いくらいに絵が上手になっていた。プロになる人は、常に上を目指す気持ちが違うのだろうと思った。



絵を描いていた頃も楽しかったけど、描かなくなっても、相変わらず人生は楽しいままだ。


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