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土壁の記録②土壁の材料を知る

総合建設会社の淺沼組は現在、築30年の名古屋支店をGOOD CYCLE BUILDINGとしてリニューアル中。その現場では「人にも自然にも良い循環を生む」というコンセプトのもと、様々なことに取り組んでいます。このnoteでは、プロジェクトに関わる人の思いや、現場の様子をリポートします!

3月のとある日。
淺沼組の社員が、今回左官工事を行っていただく協力会社、八幡工業に集まり、名古屋支店で実際に塗られる土壁の材料を知るワークショップに参加しました。

今回土壁に使用される土は、淺沼組が携わる愛知県瀬戸市の現場から出た建設残土。今回は、内壁が800㎡、外壁が400㎡の計1200㎡の土壁を塗るのに、およそ12トンの土を使用します。

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まずはトラック1台に積まれた土を、機械を使って細かく砕くところから作業がスタートしました。

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指導してくださった八幡工業の代表、八幡俊昭社長。

作業①土を砕く

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体が取られそうになるのを、踏ん張りながら土を砕きます。

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初めはみんなに見守られながら、細心の注意で機械に触れて。

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社長に教えて頂きながら、一人一人が体を使って土と向き合いました。

作業② 土を振う

機械で土を砕いた後は、手作業で土を振います。振いにかける作業は、目の粗いザルにかけた後、目の細かいザルにかける2段階で行います。

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実はこの作業、中腰で横に振うのが思った以上に過酷な作業で、すぐに腰と腕が悲鳴をあげて交代しながら行わなければならない程でした。
(翌日はしっかり筋肉痛となりました。)

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こうして、土壁に使える土を手作業で作っていきます。

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土が使える細かさになると、次は天日干しにして乾燥させる工程になります。丸1日、太陽のもとで十分に乾かされた後、他の材料と混ぜ合わせられ、土壁材となります。

作業③ 土壁の材料を攪拌する

次に私たちは、工場の中へ案内していただき、土に混ぜる材料を見せて頂きました。

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土壁は、土や砂に『藁(わら)』や『蔦(すさ)』などの自然素材を混ぜて作られます。これは、藁を入れることで、時間が経って土が発酵した時に、土の中にある菌・微生物が藁を食べるために集まり、強度を増す作用が生まれるためです。

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土壁は「呼吸する壁」とも言われます。湿気が多くなると水分を吸収し、乾燥してくると水分を放出します。
そうして呼吸しながら土が育つことで、健康にも良い作用を生むと考えられています。

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今回は赤みのある土壁を作るため、土から取れる酸化鉄の弁柄を使用。

配合の実験を繰り返し、最後には材料を攪拌機で混ぜ合わせます。

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作業④ 土壁を塗る

そして、実際に土壁を塗る作業に到達しました!
(今回は、実験としての作業のため、特別に工場内に壁を用意していただきました。)

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八幡工業の専務、八幡吉彦さんから手解きを受けて、

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名古屋支社リニューアルのデザインパートナーの川島範久建築設計事務所の建築家たちも参加して。
実際に、鏝(コテ)を初めて握ってみると、鏝の上に土を載せるだけで一苦労でした。
実は、リポーターのさとうも参加させていただき、

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壁より先に服に土を塗りつけてしまった状態になりました。

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職人の技がどれだけすごいものかということを、身を持って知った気がします。

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実際に体を動かすことで土を知り、土に触れた日。

聞くことだけでは得られない、土の重み、土の感触を知り、同じ体験を通して人と心を通わせられることの温かさを感じることができました。

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八幡工業で作られた土が既に着々と現場に運ばれ、5月17日からは淺沼組社員の手で塗られる土壁のワークショップが開催されます。

働くオフィスを、自分たちの手で塗ること。
そこから、空間と人のどのようなつながりが生まれていくのか。

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(先行して塗られた支店長室の壁を確認する長谷川支店長)

「人にも自然にも良い循環を生む」プロジェクトの現場は、着々と進んでゆきます。

text and photo by : Michiko Sato


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