自転車のマークが人の顔に見えるんです
言いたいことはタイトルに集約した。何を言っているんだ?と思う人が大半だと思うので、順を追って説明させてほしい。
事の発端はある旅行先。たまたま見つけた自転車のマークに、なんともいえぬ親しみを感じた。脳裏に浮かんだ仮説に従い、写真を撮ってひっくり返してみると、そこにはポツネンとした人の顔が浮かび上がった。
二つの車輪が左右の目に、車体とサドルが鼻や口に対応している。くっきりとは分かれてないし、余計な線も含まれているが、見れば見るほど「眼鏡をかけておどけた表情」でしかない。
図解するとこんな具合。手足をつければ自転車推奨マスコットの誕生だ。
それ以来、自転車のマークを見つけるたびに写真に収め、ひっくり返す習慣がついた。一概に「自転車のマーク」といえど、そのバリエーションは豊かであり、見せる表情も少しずつ異なっていることが分かってきた。
楕円気味で縁どられていたり(コメダ珈琲湘南藤沢店)、
鼻立ちがしっかりしていたり(どこかの路上)、
逆に鼻がなかったり(ラーメンショップ湘南台店)。
だんご3兄弟のようにも、覆面レスラーのようにも見える。
ちょっとずつ形状は異なるが、大きな眼鏡とおちょぼ口が与える、何とも言えない親しみやすさは変わらない。多少の違いはむしろ個性となって、「顔らしさ」を増長しているようにも思える。
駐輪「禁止」の場合には、わざわざ筆を加えずとも、もともと顔としての輪郭を持つケースも少なくない。
長方形はおカタい印象を与え(荻窪の標識)、
丸顔はやわらかい印象を与える(御徒町のパイロン)。
ここまででおおむね僕の言いたいことは伝わったと思うが、念のため、テクノロジーの力で後押ししたいと思う。
カメラフィルターで自転車を召喚する
イラストと顔面の紐づきをわかりやすくするため、リアルに動くアニメーションを作ってみたい。一から作る技量はないので、最近流行りのカメラフィルターにあやかることにしよう。
初のLINE飲み会で遊ぶ私(左2つ)と、ひとりでインスタ実験中の私(右)
「盛る」みたいな概念は自分には縁遠いものと思っていたが、外出自粛中のリモート飲み会やMTGで楽しさに気付いてしまった。顔を加工するフィルター機能はたくさんあるが、Facebookが公開している「Spark AR Studio」というソフトで開発してみることにした。
ソフトをインストールし、先人のチュートリアルに従って作業を進める。
5クリックくらいでフェイストラッキングが完成したので驚いた。世の中にたくさんのフィルターが生まれるわけだ。この白黒チェック部分にひっくり返した自転車のイラストを配置し、スマートフォンで読み込むと……
おお、うまく配置された!平面ではあるものの、しっかりと顔の向きについてくる。その一方で、よく見ると口の位置がずれていたり、必死に動かす眉毛が空回りしている気もする。もう少し手を加えてみよう。
自転車フェイスマッピング
自分を長時間見るのは疲れるので、サンプル人(さんぷるんちゅ)に交代。
今度は「Face Mesh」という機能を使い、顔を立体的に捉えて3Dマッピングする。細かくグリッドを引いて目鼻の位置を合わせる必要がありそうだが、それっぽい資料にたどり着けなかったので、サンプルを見ながら調整する。
サンプルの髭データをお手本にして、目鼻や口の位置にアタリをつける。パーツの形は多少変えているが、そこはご容赦いただきたい。
うまく調整してあげないと、アメコミの敵役になってしまうので気をつけよう。サイズ比や配置をちょこちょこいじり、再度スマホで確認すると……
おおおお!これはかなり「顔」ではなかろうか。口やほほの位置にラインが追従すると、こんなにも印象が変わるのか。とぼけたメガネをかけながら、少し生意気っぽい雰囲気も伝わってくる。教育を任された後輩だとしたら、かなり手を焼くタイプだろう。
君にも顔が見えますか
個人的にはもう顔以外に見えないのだが、他の人にも同感してもらいたい。Instagram用のフィルターを発行できる「Spark AR」の機能を使い、友達に送りつけて写真を撮ってもらった。
手伝ってくれるありがたさを噛みしめつつ、不意打ちのピースサインに笑ってしまった。左の彼は想像の数倍ノリノリで写真を撮ってくれたが、これが自転車のマークだということには気づいたのだろうか?
最初は何かわからず写真を撮っていたようだが、説明すると自転車だと認識してくれた。若干の誘導尋問っぽさはありつつも、しっかり「顔に見える」とのコメントをもらったので、目論見は大成功だ。
もう一人からは「カートゥーンネットワークにこういうキャラいそうな気がする」というコメントも。夜中に標識から飛び出して来たら、相当怖い。
そして現実が侵される
この記事を書いている途中、外出自粛要請が解除されたので、久々に散歩にでかける機会があった。これまで以上に多くの自転車マークが目に入り、そのバリエーションの豊かさと、顔に見える具合に改めて感心した。
そのうち、街中の自転車そのものにも目が留まるようになった。イラストほどシンプルではないので、さすがに顔に見えはしないと思っていたのだが、必ずしも否定しきれない自分にゾワゾワする。
サドルではなく、尖らせた口ではないか?
反射板ではなく、瞳のハイライトではないか?
性能を見ているのか、表情を見ているのか?
思いがけずホラーな感じになってしまったが、次に自転車を買うときには、一度ひっくり返して顔を見てからにしよう。きっと今までよりも、深い親しみが持てるはずだ。
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