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互恵を招く【ショートショート#011】

みらいみらい、あるところに和子という、今まさに遊び盛りの子どもがいました。

和子は友達と公園で遊ぶのが大好きで、鬼ごっこをしたり、ゴムだんをしたり、ブランコをしたり、その時その時での流行りで何を遊ぶか決めています。

ちょうど今は「ドロケイ」が流行っていて、警察役と、泥棒役の二手に分かれて逃げたり捕まえたり、仲間を開放したり、走り回ったり。和子とその仲間は色々な公園を渡り歩いて遊んでいます。

「今日はこの公園にしようよ。広さもちょうどいいし、ここは木がたくさんあったり、高いところと低いところがあって隠れることもできそうだから面白そうだよ!」

和子は仲間を誘うと、

「いいねいいね!やろう!」

と仲間たちは賛成して、ドロケイをその公園ではじめることにしました。遊びを始めるときにはいろいろ決めなければいけないことがあります。

「まずは、時間を決めないとダメだよね。何時までにしようか?」

和子は仲間の一人、タケシにきいてみると

「俺、できれば5時間位やりたいな。最近あんまり稼げていないし。」

「確かに、最近の遊びは結構時給が低いものが多いからなぁ。」

「この前ユウジにきいたんだけど、新しい遊びのほうがビッグシスターの支払いも良いって噂だぜ。」

仲間たちは口々に言っています。和子はガヤガヤしている仲間たちが一旦収まると、

「じゃあ、今回は5時間にしようか。そうすると17時までかな。全部で10セッションできそうだね。タケシは体力的に大丈夫?」

と心配そうにききました。

「大丈夫さ!なめてもらっちゃ困るね。遊びを続けて40年になれば、体力的には劣っていても勘と経験はうまく働くさ。」

タケシは元気にそう答えると、チーム分けをして、ドロケイが始まりました。

草むらに隠れ、ふと和子は心の中でこうつぶやきました。

「それにしても、今回のドロケイはなんで時給10,000円なんだろう。特にこの公園の場合だけみたいなんだけれど、3時間超えると残遊になって、さらに2,000円が上乗せされるみたいだし。ここで採れるデータにそんなに価値があるのか?」

おしまい。

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