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だから、私たちは旅に出る

「最近、旅に行ってないよね」
ふと息子がつぶやいたこの言葉に押されるようにして、我が家はゴールデンウィークに突発的なわりに長めの旅行に行ってきました。今回は私たちが住む栃木県那須塩原から、いくつもの山を越え、日本海の方までまわっていき6県横断、合計1800kmに及ぶワンパク息子(4歳)&娘(2歳)を抱えた家族旅になりました。ちなみに東京から韓国のソウルまでの直線距離は1157kmということなので、なかなかの旅路だったなーと改めて思います。

パンデミックになる前は、日本よりも海外にばかり目が行っていた夫と私ですが、こういう状況なのと、地方に来てから色々なエリアがぐっと心理的にも地理的にも近くなったらということで、日帰りのちょっ旅も含めると、定期的に日本中を駆け回っています。

今回は、久しぶりの長旅で、改めて日本を旅すると色々新しい世界に出会えて、また自分の心の半径がぐんと広がった感覚があります。


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日本の田舎のバリエーションを肌で感じる


田舎暮らしをしていると、それまでの都会の生活との違いが際立って感じられ、「日本の地方とは・・・」と語れるような気がしてきてしまいます。実際に私自身、NewsPicksというソーシャル経済メディアで地方関係のニュースに、物知り顔でコメントしているのは矛盾しているのではと自分でツッコミをいれたくなるのですが、もう、無知の知があるだけいいだろうと開き直ってしまいます。

実際に日本中を旅してみると、この「地方」というのも色々なグラデーションがあり、地方と一言で言ってもそれぞれの地域が独特な個性があるということに改めて気付かされます。

例えば石川県の黒島地区という、かつて江戸時代中期から明治時代に北前船の中継地として栄えた港町に行った時のこと。海沿いには黒瓦のシックな伝統的家屋が立ち並び、大きな海と共に世代を超えて力強く生きてきた人々の営みが印象的です。現在では人口がわずか300人になってしまい、若い人はほとんどいないというエリアなのですが、実際にそこで暮らしている方の一人とお話をしていたら、その方のオープンさにとてもびっくりしました。話を聞けば、港町ということで住民の方の多くが船関係のお仕事についていたらしく、その方もかつてはコンテナ船を運転して世界中を巡っていたとのこと。過疎地域の典型例にも関わらず、グローバルな視点を持つ人がいるところもあるんだなーとびっくりしました。


また、田舎では自然豊かな風景は贅沢にも見慣れてきますが、数十キロ進めば大体どんな場所でも民家がポツポツとみえてくるのが多い印象です。しかし、能登島を巡っているときは、いつまで経っても民家が出てこないような大自然がずっと続いて感動しました。海沿いだからなのか、理由はよく分からないのですが、いつも見る木とはまた違った風貌の深い緑色のワイルドな木々は、見上げるでもなく見下ろすのでもない不思議な高さに位置して連なり続けていて、まるで自然の懐にすっぽりとはまってしまったような気分になり、ジブリの音楽がどこからか聞こえてきそうでした。


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のとじま水族館にて泳ぐレーシングカーを描く息子



「すごい」建築とインスタ映え


地方を旅していると、いくつかの特定の場所には多くの人が吸い寄せられるように集まっていることに驚きました。日本中どこもそれぞれ何かしらの魅力があり、観光名所的なスポットはあるにも関わらず、どうして一部の場所だけ特に人気なんだろう?という疑問が生まれ、私なりに考えた結果、「すごい」建築やインスタ映えスポットというのがキーワードになるのかなーいう気がしてきます。

すごい建築というのは、何百年前に建てられた文化財に登録されるような日本家屋といった類のものではなく、人がその場所に行くことで何か特別なワクワクする体験ができそうなことが連想させる、綿密にデザインされた空間なのかなと。例えば富山県富山市には、かの有名な建築家の隈研吾さんが作った図書館と美術館を兼ねる建築があったのですが、6階まで吹き抜けの広々とした空間に富山県産の杉がまっすぐといくつも配置される中で、天井の大きな窓からは光が燦々と降ってきます。地元の人も観光客もその建物の入るだけでワクワクする様子でした。


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とにかく建築が美しかった!


道の駅も至る所にありますが、コミュニティとして機能するために工夫されたデザイン性があるところは人が多く集まっている印象があります。例えば大きなイカのオブジェがある道の駅。とにかく巨大なイカが青空の下で鎮座している様子はなかなかシュールでした。どう遊ぶんだろうという大人の疑問はどこそこ、たくさんの子どもたちがわんさか集まってきて、それぞれの年齢と運動神経にあった形で思い思いにあそんでいました。


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オンザトップオブイカ


そして、「これぞインスタ映え」といかにも、感じさせる場所は人が集まるように思います。例えば石川県輪島市の千枚田。ここは日本海へと続く山肌に、実に1004枚もの小さな田んぼが幾何学模様を描きながら広がっています。どこから撮っても、絵葉書になりそうな風景です。実際に自分が撮った写真を改めて帰宅して見てみると、うーん、量産型の写真になっていました。

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30円くらいの絵葉書になりそう?


ちなみに一つの田んぼを年間二万円から所有できるということで、小泉進次郎氏をはじめとして有名な方々の「持ち水田」がここかしこにあります。そういう田んぼのオーナーの看板をみながら歩くのも楽しく、私が興奮気味に、「見て見て!!あ、あの田中ホニャララさんってまさかあの有名な・・・!!」と私が夫に報告すると、私の名前の記憶違いで全然関係ない(おそらく一般の)田中さんの田んぼだったりしました。

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石川21世紀美術館は、チケットを買うだけで1時間以上待つこともあるそうですが、他の美術館とは比べられないくらい建物の内外のインスタ映えするところも人を惹きつけている理由の一つなのではないかと感じました。例えばエントランス付近は柔らかな曲線を描きながら全面ガラス張りの窓が広がり、そのガラス面に沿う形で透明の椅子が配置されています。その椅子に座ると建物の中のいるのに、屋外で宙に浮いているような気分になってきます。私もインスタユーザーとしてここぞとばかりにたくさんカメラのシャッターを切ったものの、いざ出来上がった写真を見るとインスタには載せなくていいかなという感じの出来でちょっとガッカリしました。(完全に自分の写真スキルの問題です・・・)

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#moodyports?



その土地の魅力を五感で感じる


地方の特産物は買おうと思えばどこでもいつでも入手できる現代ではありますが、やはりその土地に行って、五感を使ってその場所で作られたものを楽しむのって楽しいなーと改めてこの旅で感じました。
例えば我が家は旅をしたらその土地で有名な日本酒を必ず味わいます。その場所で作られたお米とお水で作られたお酒を飲むと、大袈裟ながらその土地と一体化した気持ちになります。ちなみに能登で飲んだ日本酒はどれも辛口でピリリときて、日本海の海の勢いや潮風をちょっと感じたり。
 


また、その土地の土で作られた陶器だったり、長い歴史を世代を超えて紡いできた伝統工芸品の実際の作品を実際に一つ一つ手に取りながら、作家さんとお話をするのはオンラインショッピングでは得られない感動体験です。今回は、小学生の時に一生懸命暗記をした「輪島塗」の職人さんの工房兼ショップにお邪魔しました。天然漆で染まった手の職人さんがどんな思いでデザインしたのかというお話を聞いていると、教科書から飛び出してきた輪島塗が目の前でキラキラ輝いて見えます。



そして五感で土地の魅力を感じるといえばなんといっても温泉!海沿いの縄文遺跡の中に位置する旅館に泊まった時のこと。とても小さな露天風呂だったものの、青空がどこまでも続く空となんとなく海を感じさせる風を胸いっぱい吸い込むと解放感が広がりました。色々な細かいことはせっかく旅に行っても次から次へと私の記憶からこぼれ落ちていってしまい夫にも残念がられるのですが、温泉に関してはその時の感情や雰囲気がとても鮮やかに思い出されます。


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久しぶりのちょっと長めの旅は、ちょっと目を離したら親の想像の常に斜め上を行くいたずらをする子どもたちに翻弄されながら(一例↓)、大きなスーツケースにいくつかのリュックサック、そして子どもたちがそこかしこで拾ったりしてくる色々なものを抱えて毎日一つの場所から次の場所へと移動して行くノマド生活でした。

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親には結構いつも不可解


旅館ではなぜかスリッパを両腕につけて裸足で駆け回り始める息子を全速力で追いかけたり。2歳の娘に関しては、いつも「じぶん!じぶん!」となんでも自分でやりたがりな時期で、娘が自分で持つと主張して私から奪い取った水のボトルからは、案の定、水がこぼれてしまい、こちらがあららーと思うが早いか、娘がよし!それなら、と冷静沈着にボトルから水を全部どぼそぼとぶちまけたりしてました。

あーお休みよりも仕事をしている平日の方が平和かも!と休暇の度に感じるのは変わらずなのですが、とはいえ、やっぱり旅は自分たちの世界を広げてくれて素敵だなーと思います。旅することで日本の広さと文化の豊かさを感じたり、そこにどんな風に人が集まるのかを自分の目で見て自分の心で感じたり。なんでもオンラインで手に入るような気がしてくる毎日ですが、旅には旅でしか得られない体験があるなーと改めてしみじみします。

またちょっと体力と気持ちをチャージさせたら、次の旅に出るのが楽しみです。


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【Podcastの新エピソードを公開しました!(5月13日)】
本ブログ記事に関連する内容で、Podcastで新エピソード「『ほどほど』に、はたらくということー頑張ることだけが全てじゃないー」(17分)を配信しています!

頑張ったら、結果がついてくる。そんな思いは、実は裏返すと、頑張らないと結果がついてこない、という考え方になるのかと思います。


今回は会社を辞めて行った人たちに言われた「あなたは自分の話を全然聞いてくれない」ということや、パンデミックの中で辛い決断をしなければいけなかった時にどうやって他の経営陣と協力していったのか、ということについてお話ししています。

もしよければぜひお聞きください^^ 


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