見出し画像

『性食考』赤坂憲雄(2017)岩波書店

ある文豪が書いた。思いを寄せる少女に向けて。「(君は)食べちゃいたいほど可愛い」と。

民俗学に精通した著者が、性食/生殖、エロス、タナトス、カニバリズム、生命誌などに言及しながら食べるという事について、あるいは、人と動物の関係性、はたまた「食」にまつわるあらゆる行為や事象についての論考筆跡を辿る一冊。
時に、神話や世界各地の言い伝え、著者ゆかりの地と思われる東北出身の作家宮澤賢治の童話、『遠野物語』などを参照しながら、「食」が人間にもたらす事物、その意味、また隠喩について丁寧な考察を重ねていく様は、度々の逸脱を経ながら深淵な洞察に至る。その過程は、なんともスリリングだ。

追記
九相図について“男性の肉欲を女性の側に転化している”のでは?という論考に触れている。まさに!と思い、久々に函入り特装版の作品集『松井冬子』を開く。これは、十代の時に、お年玉をかき集めて購入した覚えがある。もちろんサイン入り。

さて、中身はというと、松井氏学生時代の卒業制作をはじめとする初期作品を網羅した内容となっている。『性食考』では、直接は言及されていないものの、参照作品は松井氏が九相図をフェミニズムを通過させ咀嚼した『浄相の持続』と思われる。この『浄相の持続』は、腹部の内臓をあらわににした女性が横たわっているが、彼女は殺されたのではなく、自ら腹部を切り裂き、女性器を見せつけているのだそう。
私が、「男性」だった場合、慄いてその場を後にしてしまいそうだ。尻餅なんかついて。
私はというと、『世界中の子と友達になれる』の切り抜きをリビングに飾っていたことがある。世界は、何かと痛みに満ちている。そんな思いつめた時に、この絵を見ると浄化された心地になったのを思い出した。切迫した甘い記憶だ。と、書きたかったけれど、今も切り抜きは現役です。

#毒書
#BRUTUS
#性食考
#九相図
#松井冬子

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。