名称未設定アートワーク_47

お掃除ロボットとは誰なのか(会話体験をつくるvol.8)

お掃除ロボットが可愛い、という人がいる。

なぜ可愛いのか。本当に可愛いのか。気のせいではないか。お掃除ロボットとは誰なのか。

本記事では、会話体験におけるキャラクター設計の知見紹介という口実のもと、お掃除ロボットについて執拗な考察を行う。

会話体験設計ってナニ? という方には以下の記事を参照いただけると嬉しい。

さて、前回は、会話体験をつくる際のキャラクター設計についてアウトラインをご紹介した。ひじきが食べたくなる記事だった。

今回はもう少しこの「キャラクター設計」について深掘りしてみよう。

キャラクターとは何か

まずは、おさらいから。「キャラクター」には以下のような意味があった。

1. 性格。人格。その人の持ち味。「特異なキャラクターの持ち主」
2. 小説・劇・映画などの登場人物。「キャラクターの設定がうまい」
3. 文字。記号。
出典 小学館『デジタル大辞泉』

性格や、人格。「会話体験をつくるvol.7」では、会話体験におけるキャラクター設計は、ことばに「人格」をふりかけることだという視点から、話し方のデザイン手法について解説した。

vol.8にあたる本記事では、キャラクターを以下の二点から考察していく。

「内面」を表現する存在としてのキャラクター
「属性」の組み合わせとしてのキャラクター

キャラクターの二つの側面

漫画の原作者として名高い大塚英志は、キャラクターとは何かを考える上で、「アバター」の概念がヒントになると指摘している。

視聴者や観客の代わりに作品世界の住人となって主人公を理解していく登場人物を、ハリウッド映画では「バディ」あるいは「アバター」と言うようです。

大塚英志『キャラクターメーカー』(星海社、2014、p.23)

アバターの語源はサンスクリット語の「アバターラ(अवतार)」。神様の化身、というほどの意味だ。神様は超越的な存在であると同時に、この世のものではない。転じて、「あちら側の自分」というニュアンスで使われるようになった。つまりアバターは「もうひとつの自分」なのである。

アバターが「自分」の要素を持つように、キャラクターもまた「私」の「内面」を担う存在である、と大塚は説明する。(同書p.41)

さらに、キャラクターは組み合わせ的に作られた存在でもある。
画面の向こうで、パーツから組み立てられてゆくアバターと同様、キャラクターもパーツ(属性)によって作られ、分解可能な存在だ。(同書p.48)

ちなみに、こうした「キャラクター」=「属性」の組み合わせ、というポストモダン的な見地は、東浩紀『動物化するポストモダン』(講談社、2001)に詳しい。東は当時(2001年)のアニメ作品などに登場するキャラクターは「ネコミミ」や「メイド服」などの「萌え要素」による組み合わせで作られているとした。

そして『動ポモ』刊行から18年が経った2019年現在、「ポストモダン」はもはや視座ではなく、わたしたちを取り巻く環境である。

本年3月に書籍化された『新記号論』では、こうした変化を「世界は記号論化している」という言葉で看破し、「記号」と「人の心」の関係をアップデートする議論を展開している。

「世界が記号論化する」状況下で、キャラクターの「内面」が担う意味は変わりつつあると言える。……が、ここでは紹介にとどめ、先へ進む。

さて、繰り返しになるが、キャラクターの性質を以下のようにまとめよう。

キャラクターは、「内面」を担う存在である。
キャラクターは、属性の組み合わせである。

相反するかに見える二つの側面だが、実際の作業フローにおいては調整によって最適解を探していくことになる。

「内面」のうるささ

会話体験設計における「キャラクター」は、「言い方」が9割である。だから、

「言い方はそっけないけど、根はいい人」

とか、

「口は悪いけど、実は優しい」

といった設計をしようとすると、すごくやばいことになる

言い方はそっけないけど、根はいい人なおしゃべりロボットがいたらどうなるか。

伝わらない。というか、これはもう「おしゃべり」というタスクを達成できていない。

口は悪いけど実は優しいお掃除ロボットは?

壊れたのかなって思う。壊れていないならば壊してしまおうかなって思う。

では、どんな時に「内面」が過剰だと感じるのだろうか。

お掃除ロボットは「あなた」か?

キャラクターに対して「可愛い」と感じる時、大きく分けて二つの可能性がある。

1. 共感できるから可愛い。(自己)
2. 自分のために仕事をしてくれて、健気で可愛い。(他者)

「1. 共感」の場合、あなたはお掃除ロボットが働く姿に自分を投影していることになる。もし本当にそうならば、掃除はできないけれども自分に似ているロボットであればなんでも可愛い、ということになる。

お掃除ロボットの存在意義は一般にお掃除をすること。だから、こいつの可愛さは「2. 健気さ」だ。

また、こいつがお掃除をする場所も重要だ。ロボットが掃除をするのは「あちら側(PCやスマホの中)」ではなく「こちら側(自分の部屋)」である。そして、キャラクターが「私の化身(アバター)」となりうるのは基本的に「あちら側」にある時。だから、こいつはあなたの化身ではない

ということで、お掃除ロボットはあなたではない。こいつが可愛いのは、他者だからだ。

「あなた」とか「他者」とか軽く言っているが、このあたり、深掘りすると二転三転する。そこで、二転三転の専門家であるジャック・ラカンをそっと置いておく。転がりたい人は以下の書をどうぞ。

今回は、「お掃除ロボットはあなたではない」という観点に踏みとどまって、結論に進みたい。まとめると、こんな感じだ。

お掃除ロボットはあなたではない。
他者の「内面」は普通わからない。
だから、他者であるお掃除ロボットの「内面」は表現しないほうが可愛い。

可愛いって何? と思ったらこちらのスライドも参考になるかもしれない。

キャラクター設計の指標

会話体験におけるキャラクター設計では、そいつが「あなた」かどうかを見極める必要がある。

そのキャラクターが「あなた(ユーザー)」でなければ、「内面を強く出さない体験設計」の方が良い。

ほらね。いい感じだ。

そのキャラクターが「あなた(ユーザー)」であるならば、「内面を感じられる体験設計」をしても大丈夫だ。たとえば、こういう設定。

この男はやばそうだ。

属性によって生まれる親近感

「内面」の設定と同時に、キャラクター設計するには前述のように属性を組み合わせていく

キャラ設計に属性を利用するメリットは、親近感や統一感が得られることだ。たとえば、属性の中には口癖も含まれる。その一種に、フィラーがある。フィラーの意味は以下。

「ええと」「あの」「まあ」など、発話の合間にはさみこむ言葉。
出典 小学館『デジタル大辞泉』

では、実際にこれを使うとどうなるか。「そっけない」属性に「フィラー」属性を加えたとしよう。

知ってる。この感じ。この胸のときめき。
わたしたちは、知っているものの意外な組み合わせによって、恋に落ちるのかもしれない。

まとめ

以上、会話体験のキャラクター設計について、考え方を紹介した。
長くなってしまったが、大切なのはこれだけ。

お掃除ロボットはあなたではない
あなたはお掃除ロボットではない
本当にそうか?

この気持ちを持って会話体験を設計できたら、もう大丈夫。

「会話体験をつくる」シリーズ、次の更新は7/24(水)を予定している。
またね。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

よければアレしてください

スキウレシーウレシー
13
助詞を間違えたらすごい速さで関節を折りにくるタイプのライター。 略してタイプライター。

こちらでもピックアップされています

会話体験設計
会話体験設計
  • 11本

会話体験の設計方法について、フレーム・キャラクター・シナリオの視点から事例を交えて書いていきます。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。