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「月がきれいですね」にポヤーンとしてんじゃねえ。

いやね、これ真に受けて、本当に好きな人に「月がきれいですね」とか言ったって通じないから。これが月じゃなくて「夕焼けが…」とか「星が…」とか言っても同じだから。

当然、恋愛真っ最中の恋人同士なら、まあアリだと思うんですよ。けどね、こういうの告白するときに言うとね、女はリアリストだから引く。「だから何?」ってなる。「月がきれいだけど何?」「月がきれいだからって何?」挙句の果てに「あれか?月がきれいって感受性の高いオレをアピールしているのか?」ってなる。あ、それ私やけどな。

けど、本当にこういう男性多いんです。いや、多かった。かつて私がモテた時。男はそういうもんだった。月がきれい?知るかよ。別にきれいな月をアンタと共有したいわけじゃない。確かにきれいかも知れんがそれは私の見た私の月であって、アンタとおんなじじゃないわ。一緒にすんじゃねえ。むしろ、私の月を取るんじゃねえ。

男はおしなべてロマンティストである。私の統計によれば、AB型の男性は特にロマンティストで「月がきれいですね」と言いがちだった。そのたびに私は心の中で「知るかよ」と毒を吐いた。同じ月を見るにしたって、他に言いようがある。「月がきれいですね」なんて夏目漱石が言ったか言わないか、とにかく陳腐であることこの上ない。

月に関する話なら「今、あの月へ行くエレベーターが開発されてる」と、これは宇宙飛行士予備軍の男性が言った話。信憑性がある。それから「あの見えてる月は実は穴で、その向こうにある光の世界がちょっとだけ見えてる」とか「妹が桂子という名前で、それはアポロが月に行って植えてきた木がカカツラの木だったから、それにちなんでつけたらしいんだけど、妹が生まれたのって、アポロが月へ行く1ヶ月も前なんだ」とか。

とにかく「月がきれいですね」じゃ、話が続かない。こう言われたら「そうですね」くらいしか返事のしようがない。朝ゴミ出しに行ったとき近所のおばちゃんに「今日は寒いなー」と言われて「ホンマにな~」って言うのと同じ会話レベルだ。しかし、この表現をしゃれてると思う人もいるわけだし、「素敵!」と思う女性もいるわけだからむげに批判するわけにはいかない。

そういう私も実は恋愛モードに入ってしまうとこういうことをやりがちだ。普段はこんな風に「芸がない!」「陳腐だ!」と息巻いているのに、いざ自分が恋愛の渦中になったらもう「月がきれい」どころの話ではない。「紅葉がきれい」だの「川の水がきれい」だの「空の青がきれい」だの言いまくる。そして恋愛が終わって盛大に後悔する。なんだってあんな通り一遍のことを言ってしまったのかと。

例えば、禁煙に成功した元喫煙者ほど、現喫煙者を批判するのと同様の構図で、私も同類であるからこのように「月がきれいですね」に純真な気持ちで憧れる人を批判してしまう。私自身もずっと純粋な気持ちを保っていられたら、このような批判的な感情を抱かないのだろう。けれど、違う。人生とはもっと無情なものだ。だからこそ、たまに現れる美しいものに心をときめかすわけで、そんなときにはやっぱり「わあ、きれいな月」と思わず口に出るかも知れない。けれどそれは単に感嘆の言葉であって、愛の告白だと言うのは相当雑な話だろうと思う。

まあ、これはネット上であちこちに書かれているから、今さら私がどうこう言う話でもない。ただ、今日私が言いたかったのはロマンチックな男性はなぜか、私の統計上ほぼAB型。AB型の男性は「月がきれい」とか「星がきれい」とか言う。しかもかなり「あなたが好きです」的なニュアンスで言ってくる。断っておくと、私は血液型占いとか信用してないんだけど、これに関してはかなりの確率だと思っている。私のAB型バイアス?ちなみに女性のAB型は全然そんなことないんだけどな…。

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