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隠居のすすめ

とにかく家がデカいんです。2階建てはデフォルト。なんなら母屋、離れ、納屋、蔵、とかある。そこにひとりで住んでいる。地方の田舎のひとり暮らしの老人です。私は民生委員をしていますが、ほとんどのひとり暮らしのお年寄りは巨大な家に住んでいます。それで、幸いなのはどこもゴミ屋敷ではなくて、みんなとてもキレイに住んでいる。

とは言っても、それぞれの部屋まで見たわけではありません。通常訪問するのは玄関先まで、よくてリビングまでです。それで見るとまあ、キレイ。けれど、絶対モノは多いはずなのです。よくここを維持しているな、と思うけれど、そりゃもう家族もいないし、時間も十分にあるわけで、片づけくらいはできるけど、それもそのうち一階だけ、自分の行動範囲だけ。と言う風になっていきます。

どうしてみんなこんな大きな家に住んでいるのでしょう。当たり前ですね。最初から一人なわけじゃありません。最初は7人くらいで住んでいるのです。自分、夫、子供が3人くらい。それに舅、姑で、かるく7人です。で、舅、姑が死んで、子どもが独立、夫婦で住んでいたけど夫が死んで最後ひとり。だいたいこんな感じです。

隠居、って聞いたことありますか?サザエさんに「ご隠居さん」って出てきますね。あれって、ひとり暮らしではありません。言って見ればサメの歯みたいなものです。現役じゃなくなった時に次世代に自分の地位を譲って自分は下がる。そういう仕組みというか慣習のこと。敷地の中に隠居の部屋とか、離れみたいなのが、あって、自分のものはそこへ持って行ってそこで暮らす。そういう方式です。

ごはん、掃除、洗濯など身の回りのことは(息子の)お嫁さんなんかがやってくれる。現代はお嫁さんも忙しいですけど、昔はそんな感じです。

今まで自分が関わっていたものも全部次世代に移行させるので、自分のものはまあ、趣味のものくらいですね。それで大体一部屋プラスアルファくらいで納めるのです。でね、今長生きの時代じゃないですか。私の周りのお百姓さんとか、70代とか若いほうだっつーの、ホント勘弁してください、なんです。若くないよ全然。冷静になろうよ。って思うけど、民生委員やってると「70歳!若いわ~」って、言っちゃうようになる。怖いわー。

80歳でも田んぼやってる人いるんですね、トラクターとか田植え機、コンバイン。全部機械だから、乗れる限りできるんですよ。苗は買って、除草剤まいて、肥料まけばできるから、体力いらないんですよ。それでどうなったかって言うと、断絶です。世代の断絶。継承できてないの。そりゃ、いつまでも自分がやってたら「あ、やれるんだ~」って思われますよ。

で、いざ引退するってなると、もう次の人がいない。だから、ハッキリ言って、

引退早くした方がいい!ぜったい!

「わしゃもうアカンからやってくれ~」って言わないとダメなの。それで、今までのやり方も取引先も、交友も人脈も全部譲るのよ。そやって行かないと若い人が死ぬ。この「死ぬ」は素材として死ぬ、人材として死ぬ、という意味です。まあ、私、よく「死ぬ死ぬ」って書くけど、そうじゃないとただでさえ若い人少ないのにどうすんの、っつーの。

私なんかもう引退のこと考えてますよ。もちろん、死ぬまで現役とも思っているけど、それは自分が第一線でやることではなくて、何かしら世の中の片隅で役割が担えたらな、という程度で、若いものに負けへんで!というぐいぐい行くやり方ではないです。

住む場所も隠居的なの考えてるのだけど、こればっかりは息子とも話さないとだし、どうやって縮小して、畑や田んぼをちまちまやりながら死ねるかという話なので、まあ、考えると楽しいです。今日のトップ画像は、もと義理の母のヤスコさんです。こないだたつくりの作り方教えてもらいに行きました。87歳、独身、ひとり暮らし。未だにモテてます。恐るべし!


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