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行けないけど、がんばってください

 昨日、ふと思い立って、オフ会を開いた。オフ会というのは、普段インターネットで交流している(オンラインな)人々と、オフラインで会合を開く、というような意味だ。そもそも、ぼくとオンラインで交流があり、オフラインで会おうという人は、もともとオフライン(つまり舞台)でぼくのことを知っている場合が多い。それに今回は「デッドリーおじさん寄っておいで」と呼びかけてしまった。

 結果として、17人のおじさんが高円寺の居酒屋にひしめくことになった。

 話題は多岐にわたり、10年前から見てくれている人、三ヶ月前に初めて見た人、あの作品はどうなった、この作品はこれからどうなる、といった話でたいへん楽しい会合になった。

 急な招集で、遠くに住む人や、時間の合わない人には申し訳なかったが、逆に「急だから来たんです、なにが起こるかわからなくて面白そうだと思って」という人もいた。「事前に告知があったら来なかったかも」という人もいた。なんにせよ、来てくれた全員が、それぞれの言葉でそれぞれの想いを伝えてくれた。それはとても嬉しいことだった。

 エゴサをすると「行きたかったな〜」という呟きがいくつかあった。

 来れなかった人に伝えたいのは、ほかのいろんな人は嫌がることもあるけど、ぼくは「行けないけど、がんばってください」は、嫌いじゃないですよ、ということだ。そりゃあ、舞台など、絶対に見に来てほしい、と思うことはある。主宰なら尚更だ(赤字を抱えるのはぼくだ)。

 それでも時間や距離は人間の力で簡単に縮めることはできない。だから多くの演者は「行けないけど」は言わなくていい「がんばってください」だけでいい、と言う。気持ちはわかる。

 でも、ぼくは「行けないけど」に込められた、愚直な正直さを否定できない。言わなくていいのに、どうせ別の機会には行くのに、なぜかそれを言わないと嘘をついたような気がする。きっとそうなんだろうと思うのだ。

 いっぱいオンラインで「行きたかったな〜」って呟いてください。「誰某の舞台を見たい、演技を見たい、脚本演出を見たい」って呟いてください。推しているその人の名前を、ポジティブな言葉と共にたくさんの人に伝えてください。

 ぼくだって、香港にも、ベトナムにも、中国にも、ロサンゼルスにも、ニューヨークにも、札幌にも、博多にも、大阪にも名古屋にも、いつでも簡単に行けるわけじゃないけど。

 世界のいろんなところへ、行くことができないけど、がんばってください。

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