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造形する脚本家

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脚本家ですが、造形もしているため、具体的に作ったものを紹介していきます。表紙はJOJOの石仮面です。
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「手の演技」について

「手の演技」について

 表紙画像のギャンについている左手は商品名「SHAKA」つまり釈迦の掌を模したインディーズの造形作品(再生工場さん)で、販売されているハンドパーツです。市販のメーカー品とは一味違う形をしています。簡単に言えば「小指の位置が上がっている」わけです。

 これは同じパーツで違うポーズを取らせた時のもの。モビルスーツにあるまじき色気がただよっています。サーベルを持つ方の手は、厳密に言えば、指の隙間は二ミ

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明日から通し稽古なのである

明日から通し稽古なのである

【舞台の作り方】

 2021年の4月はたっぷりと蛇ノ目企画の舞台『さくらば』二本立てにかかりっきりだった。昼の12時から夜の21時まできっかり9時間、ぶっ通しで2本の作品を演出していく。

 まず、自分の脚本ではない作品ということで懸念はあった。読解力の鬼を自負するぼくも、全ての作品を完璧に読み解けるというほど自惚れてはいない。特に蛇ノ目規格に求められているのはエンタメ、作品の魅力と役者の魅力を

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「○○に似ている」はなぜ褒め言葉にならないのか。

「○○に似ている」はなぜ褒め言葉にならないのか。

【褒め方について】

 日本人は他者を褒めるのが苦手だという。実感としては大いに同意する話だ。

 例えばぼくが何か物語を作ると、それに良い感想を持ってくれた人から、コメントをいただく。それがもし「感動しました」や「面白かった」あるいは「心に響きました」なんてものなら素直に「ありがとうと言える」のだが、なぜか「○○に似てますね」といった指摘の言葉が来て、返答に困ることが多い。

 少し検索するだけ

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演技の上手い下手を見分ける方法

演技の上手い下手を見分ける方法

 まず初めに言っておきたいことがある。あなたはきっとこのnoteを読む前から、不思議に思っているはずだ「だって演技が下手なのも、上手いのも、見ればわかるじゃないかあ」そりゃそうだ。「棒読み」なんて評価も一般的に使われているし、大根役者だって(語源はともあれ)いまだに俎上に出る。要は素人が訓練をせずに舞台に上がることを「下手」よぶのだろうか?

 本稿では、そのような曖昧な思い込みを脱して、真に役に

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麻草郁の仕事まとめ

麻草郁の仕事まとめ

1976年 東京生まれ
脚本演出、造形、文筆

代表作『アリスインデッドリースクール』

群像劇を得意とする作風で、2000年より脚本執筆を開始。

【2021年3月2日更新】

舞台脚本演出2000年10月 朝倉薫演劇団『エボダイ浮上せず』銀座小劇場(閉館)

2002年8月 朝倉薫演劇団『並行ポリエステル』渋谷za hall (閉館) 

2003年2月 雷音部隊『スペースディスカバリー』渋谷

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怖いマスクを作る方法リベンジ

怖いマスクを作る方法リベンジ

ハロウィンも近づいてきたので、怖いマスクを新しく作っています。以前は「『作り方』と書いてある割には製作過程の写真がねえな」という感じだったので、今回はちゃんと製作過程の写真があります。

リアルなマスクというのは本当に作るのが大変です。粘土で原型を作って、石膏で型をとって、シリコンやラテックスを流し込んで、歪まないようにFRPでインナーフレームを作って……とやっていくと、平気で10万20万の材料費

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特殊小道具は楽し

特殊小道具は楽し

 特殊小道具というのは、ぼくが勝手につけた名称で、要は「存在しないもの」を立体化した小道具のことだ。

 いろいろな特殊小道具を作ってきた。記憶に残っている小道具といえばこれだ。『片腕マシンガール』のコスプレで、ハロウィン合わせの依頼品。

でかい!片腕にガトリングガン(的な謎の機関銃)を装備した女子高生のコスプレをするミノワさん。

片腕で持てるほど軽く、ぶつけても壊れない程度に丈夫で、という依

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シグルイタワーを作った日

シグルイタワーを作った日

 今朝、今朝だ。今朝寝ぼけて歩きながらスマホを触っていて、Twitterの固定ツイートにしていた「シグルイタワー」についてのツイートを間違えて消してしまった。とても悲しい。シグルイタワーとは、何か。振り返ってみたい。

シグルイという漫画がある。 南條範夫の短編集『駿河城御前試合』を原作に描かれた、血と愛とマゾヒズムについての物語だ。作者は『覚悟のススメ』『衛府の七忍』を創造した漫画家、山口貴由。

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映画って、どうして面白いのだろう。

映画って、どうして面白いのだろう。

【エッセイ 映画について 試論】

 映画を見ると、面白いなあ、と思う。お話がいい、とか、役者がいい、とか、映画を面白く感じた理由は色々とあるけれど、何よりも「映画」が面白い。

映画ってなんだろう。 映画が生まれて100年と少し経った。生まれたばかりの頃の映画は、今見るとあまり面白くない。やっぱり「カットバック」や「モンタージュ」などの編集技法が現れてからのほうが断然面白い。ここで「映画」の定義

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麻細怪談レジュメ01

麻細怪談レジュメ01

 怖さ、とは何か ・恐怖とは、未知のものへの危機意識である 

 暗闇や、先の見えない森の中、深くて暗い海の底を恐れるのは、そこに何がいるかわからないから。しかし、まるでわからないとそれはそれで怖くない。「何かがいるかもしれない」と想像することで、恐怖は倍増するわけです。
 起こった出来事がなんであるかは不明であっても、そこに何かを想像してしまう。たとえばこんな話。

足音  自分の部屋にいて

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生まれも育ちも

生まれも育ちも

 80年代当時、小学生のぼくにとって、プラモデルを作るということは「あきらめ」の体験を積み重ねることだった。

 プラモデルとは、未完成の「キット」を買って自分の手で完成させるホビーのことだ。バラバラのパーツ(部品)を組み立てて、自分の手で完成品を作り上げる感覚は、他の何物にも替え難い魅力がある。

 だけど、当時のぼくには、プラモデルを作る友達がいなかった。専門誌に書かれている言葉は高尚で難しく

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大人になったら

大人になったら

 あの頃。30年前のガンプラブーム、雑誌には華麗な改造作例が並び「君も簡単に!」なんて言葉が躍っていたあの頃。ぼくも多分にもれずガンプラ少年として近所の玩具屋でガンプラを買っていた。まともに作って塗装して仕上げればいいものを、針金用のニッパーやカッターナイフで切り刻み、タミヤパテを盛っては「なんか、違う」と諦めて箱にしまう。

 モヤモヤした気持ちは晴れないまま、最近のガンプラを組んでは「やっぱあ

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こういうのはタイミングだから

こういうのはタイミングだから

『アリスインデッドリースクール 永遠』が、COVID-19の感染拡大の状況を鑑みての公演中止になってから、だいたい一ヶ月が経った。

 10年間、再演を続けた脚本作品を自分の手で演出する、しかもアリスインでの演出も10年ぶりだ。思い入れもあったし、たくさんの人に演者たちの姿を見て欲しかった。今でも思い出すとまだ辛い。辛かった。一ヶ月経って話せるようになるかなと思ったけど、まだ全然無理だった。

 

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不用意に光らせようぜ(ガンプラを)

不用意に光らせようぜ(ガンプラを)

 プラモ、改造とかすると永遠にプラバンのくっついたよく分からない物体に変わってしまうので、最近はさささっとスミ入れして(専用の塗料とかあるのよ)棚に飾ってるんですけど。

真ん中のガルスJが「改造するぞ〜、うーん、疲れてきた、君ちょっと休んどいて」状態。その奥のヘルムヴィーゲ・リンカーは塗装して腹部のパイピング増やしたので、きっと健康状態が良かった時に作ったやつ。そのさらに奥で偉そうに浮かんでるハ

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