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北欧の未来の共通言語は英語かブランディナビスクか?

☆フィンランド・ヘルシンキのカフェSavyで撮影した1枚

先日、仕事で「北欧理事会」という北欧各国の連携を深めることを目的とする国際組織のZoomでの話し合いを聞いていました。

デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、グリーンランド、アイスランドなどの代表者が揃っていたので言語は英語。ここでのテーマは「北欧に共通言語は存在するか?」というもの。これがとても興味深い内容でした。

要約すると、

北欧同志をくっつける「のり」(文房具の糊)的な役割として、言語は各国の連携を強化するか?

北欧言語コミュニティは存在するか?

将来の共通言語は英語か、ブランディナビスクか

北欧といってもスカンジナヴィア(ノルウェー・デンマーク・スウェーデン)内かどうかで視点が大きく変わる

理事会発表の調査によれば、アイスランドやグリーンランドの若者(16-25歳)はスカンジナヴィア(ノルウェー・デンマーク・スウェーデン)の3言語は理解することが難しいと感じている

SKAMのような北欧文化がもっと欲しい願望

調査では、北欧のドラマや映画などの文化がきっかけで他国に興味をもち、「北欧他国の言語を学ぼう」と思う割合は90%に上る。ノルウェーの若者ドラマSKAMの影響は大きかった。テレビやラジオなど、身の回りのたくさんのものが英語だから自然と北欧の人が英語が得意になったように、SKAMのような「言語スキルを磨きたい」と思わせる北欧文化がもっとあるといい。

北欧といってもお互いの言語の理解度に差がある

●特にスウェーデン人は「デンマーク語は理解しにくい」と感じている

●アイスランド人やグリーンランド人はデンマーク語の勉強に対して、フィンランド人はスウェーデン語の勉強に対して、「大変だ」と感じている

●北欧の中でもノルウェーにおいては方言の複雑性がとびぬけている(首都でも市民は各自の方言を使い続けるので、移民にとって言語の壁が高くなる)

●同じスカンジナヴィアでも、デンマークではスウェーデン語やノルウェー語で話しかけても英語で返事されることが多い

●デンマーク語がここ数十年で進化しており、スカンジナヴィア言語が分かれば理解できるレベルではないほど難しくなっている

●SKAMの放送以降、「デンマークでノルウェー語を理解できる人・関心を持っている人が増えた」と感じているノルウェー人がいる

●スカンジナヴィアで感じるリアリティや感覚は、フィンランド、グリーンランド、アイスランドでは共有されていない

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将来、国際社会で北欧関係を強化する言語は「ブランディナビスク」か「英語」か?

話し合いでは「北欧に共通の未来の言語は何か」にうつり、

それは「ブランディナビスク」か「英語」かの話題になる。

そもそもブランディナビスクとはなんぞや

「ブレンド」(Blend)という言葉に「スカンジナヴィアン」(Scandinavian)が融合したもの。

ブランディナビスク/blandinavisk

もしくは

ブランディナビスカ/blandinaviska

これはスウェーデン・デンマーク・ノルウェーの3地域を意味するスカンジナヴィア(skandinavia)が由来で、

スカンジナヴィア地域で話される3言語を融合した言語のこと。

例えば会議で、

ノルウェー人はノルウェー語で、

スウェーデン人はスウェーデン語で、

デンマーク人はデンマーク語で話し続けて意思疎通はできるが、

「相手にもっと伝わるように」と、各々がいつもとはちょっと違う発音や単語で母国語にアレンジを加えたもの。

だからブランディナビスクに共通する1つのルールや文法・発音があるわけではなく、

ノルウェー語訛りの強いブランディナビスク

スウェーデン語訛りの強いブランディナビスク

デンマーク語訛りの強いブランディナビスク

デンマーク語を学んだグリーンランドの人が話すブランディナビスク

スウェーデン語を学んだフィンランド人が話すブランディナビスク

などがある。

私もたまにブランディナビスクを話しているということになる。わたしの場合は、日本語・英語・フランス語の影響を受けたネイティブのノルウェー人とも違う「あさきのノルウェー語」なので、それに加えて「デンマーク人やスウェーデン人、フィンランドでスウェーデン語を話す方々に対して少しでも伝わるようにと」いう思いであさき流のアレンジが加わったものが「ブランディナビスク」ということになる。

それで、「未来の北欧共通の言語はブランディナビスクでいいではないか。ブランディナビスクをもっと使う機会をもっと若者に提供するといいのだ」という意見が北欧理事会の話し合いででるが、

この考えを持つのはスカンジナヴィア3か国(スウェーデン・デンマーク・ノルウェー)で、

スカンジナヴィア3か国の言語とは全く似ていない独自の言葉を持ち、スカンジナヴィア3か国の言語に触れる機会が少ないグリーンランド勢は明らかに反対していました。

「ブランディナビスクで自信を持って会話ができないアイスランド、グリーンランド、フィンランド、そしてサーミ人などが、仲間外れになってしまうリスクがある」

「ブランディナビスクが得意なAグループと、得意ではないBグループで分かれてしまう」

「スカンジナヴィアの言葉はわからないから、安心して話せない」

「若者は英語のほうに安心感を感じている」

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グリーンランド側の人たちが「英語で何の問題があるの」

スカンジナヴィア側の人たちは「英語だったら、なんだか悲しい」、「北欧の人が英語が得意なことは祝うべきだが、ブランディナビスクを失うべきではない」

このような意見が交わされており、外国人の私からすると「ほお~」ととても興味深いやり取りを観察できました。

個人的にはどっちでもいいけどね。

italkiでフィンランド人の講師とこの話をしていたら、

「英語でいいじゃん。共通言語って必要なの。というか、フィンランド人が話すスウェーデン語と、スウェーデン人が話すスウェーデン語も違うし。スウェーデン語の勉強は嫌だわ」と、ぐさぐさ切っておりました。

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とりあえずわたしはジャーナリストとしてスキルを高めたいので、フィンランド語の勉強を続けて、

その後はデンマーク語とスウェーデン語のスピーキング力を高める訓練をしつつ、

アイスランド語の勉強もするよ!

私が努力することで、取材される相手が少しでも安心感を持ってインタビューで話せることにつながるなら、私は勉強するよ!

言語は「その国がどうしてそうなっているのか」を理解するための鍵ですからね。

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3/8~14のフィンランド語の勉強記録

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Forestアプリでの記録 約4時間

フラッシュカードAnkiで単語復習 約12時間

italkiでネイティブの講師と会話 5時間

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朝日新聞でインタビューしていただいた記事が公開中です

料理通信のワールドトピックスで新しい記事が掲載されています。今回はフィンランドから、新しいコーヒーの飲み方の提案










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