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横断幕・懸垂幕の作り方

新米の労働組合である私たちは、出版労連(出版および出版関連産業に働く人たちが集う、産業別労働組合)のもとでいろいろと勉強させていただきながら、組合活動にとりくんでいます。

出版労連は145もの組織が加盟しており、横のつながりがあると、自社にいるだけでは見えてこない、いろいろなことが見えてきます。たとえば、岩波労組では事実婚・同性パートナーシップ制度(各自治体が「結婚に相当する関係」と認めて証明書を発行する制度)についても法的な婚姻と均等な待遇をするよう会社側に要求し、現在、それに応じた就業規則の改訂を協議中とのことです。小社よりも何歩も先に進んでいて驚きましたし、すぐに同様の就業規則見直しに入らなければと感じました(啓林館労組や医学書院労組などで先行する事例があり、要求化することができたそうです)。

このnoteでは、そんな組合活動の現場についてもご報告していきたいと思っています。

今回は横断幕・懸垂幕の作り方について解説しようと準備していたのですが——そのさなか、私たち労働組合の執行委員長の私用携帯電話に、次のショートメッセージが届きました。

突然、新・新代表取締役S氏から届いたショートメール
(S氏に電話番号は教えていない)

私たちが作った横断幕、垂れ幕、張り幕の撤去などが「業務命令」として書かれています。突然、私用の携帯電話に届いたこのメッセージは怪文書なのか、それとも……?

さて、今回の本題に戻ります。

現在、会社ビルに吊るされている横断幕・懸垂幕は、組合員みんなで協力して手作業で制作いたしました。

隣のビルから撮影した横断幕・懸垂幕

プリント会社に発注した方がよりきれいに確実にできあがってくることは間違いないのですが、問題はお金(今回のサイズだと1枚で5万円ほど)と日数です。まだ発足したばかりで組合費の蓄えもない私たちは、少しでも安く仕上げたい。また、私たちはある理由で作成を急いでいました(2回目の投稿で、姿を現さない新経営陣A氏の”業務代理”B氏が、本社不動産の抵当権を外すことを何度も要求してきたと書きましたが、その要求が、実は「10月23日までに」という期限つきだったのです。このことについては「週刊プレイボーイ」記事(2024年11月18日号)でも詳しく触れていますので、ぜひお読みください)。予算も日数もない私たちは、手作りを選びました。

読んでくださっているみなさんに、横断幕を手作りする機会が今後訪れるのかどうか、それはわかりませんが、たとえば研究室で世紀の大発見をしたときに。会社の商品が何か大きな賞をとって喜びを伝えたいときに。または私たちのように、多くの方々に訴えたいこと、知ってほしいことがあるときに、視界に入れば目に飛び込んでくる大きな幕は、経験上おすすめできます。

よろしければ、以下、横断幕・懸垂幕作りの参考にしていただければさいわいです。



1. 文言と大きさ、デザインを決める

文言については、一目でわかりやすいメッセージと、発言元がわかること。この2点に留意しました。

大きさについて。横の長さは会社の窓のサイズ・窓間のサイズをはかり、それを数倍することで割り出しました(10m弱)。縦の長さは150cmです(市販の150cmの布を使用するため)。

デザインはillustrator上で作成しました。

遠くからでも見えやすいよう、
ユニヴァーサル・デザイン・フォントを使用(UD角ゴ_コンデンス80 Pro B)。
Google Mapの写真と横断幕画像を
Photoshop上で組み合わせ、見え方イメージを検証。

2. タイル印刷(分割印刷)して、出力紙を組み合わせる

巨大サイズのものを複合機で出力するため、PDFで「ポスター」を選び、A3サイズに分割してコピー用紙で出力します。これが「下敷き」になります。

重なりは0でOK。タイルマーク(簡易トンボ)はあったほうがよいです。
実寸でデザインし、倍率100%で出力します。

3. 材料購入

・生地
市販の横断幕では耐久性の高いビニール生地の「ターポリン」、やわらかく軽いポリエステル製の布生地「トロマット」などが使われています。今回はそれほど長期の掲示は考えていないため(そうであってほしい)「トロマット」を選択。日暮里のシルクスクリーンのお店「A-TEXTILE」にて150cm幅、1m=600円で販売されているのを見つけ、3枚分=30m購入しました(かなりの重さになります)。

・ハトメ
紐を取り付ける穴をあけ、ハトメ(リング状の金具)で補強する必要があります。日暮里のレザークラフト店で相談し、ハトメ(400〜500円)、ハトメ打具セット、木づち、穴あけポンチを購入(それぞれ2000〜3000円)。今回は#30(穴の直径が15mm)にしました。 ホームセンターでも売っているかと思います。

また、布が薄いとハトメが十分に布を噛まないので、ハトメ周辺の布に厚みを出す補強材が必要です。今回は安売りしていた白の合皮を使用しましたが、雨風を考えると帆布などのほうがよかったかもしれません。

・塗料
乾くと耐水性になるアクリル絵の具を使用。ぺんてる「スクールガッシュ」、ターナー「アクリルガッシュ」など、大容量のものが販売されています。新宿の世界堂で購入。

・刷毛(ハケ)
塗料を塗るための刷毛です。100均で購入。塗料のうつわとなる使い捨てのカップも100均で。

・布用ボンド
布の裁ち端の処理や補強材の接着には、ミシンで縫うのがいちばんなのですが、面倒なので布用ボンドでくっつけることにします。
アイロンでより強力に接着でき、洗濯もOKとなるコニシ「裁ほう上手」を使用しました(慎重を期しましたが、もっと安価な布用ボンドでも大丈夫かもしれません)。

・紐
横断幕を吊るすための紐には、当初、100均のビニール紐をより合わせて使用していました。しかし実際に横断幕を吊るしたところ、1~2週間ほどで1本、負担がかかったと思しきところが切れてしまったため、耐久性・耐候性の高い紐を探し、コーナンの「LIFELEX ポリエステル ROPE」3mm を追加で購入、交換しました。

4. 出力紙を下敷きに、アクリル塗料で塗る

2.でプリントした出力紙を床に並べ、テープ等で仮止めしていきます。最初はパズルのようですが、順番に出力されるので、方向性がわかれば並べていくだけ。なお、きっちり並べているつもりでも、トンボは数ミリずれるみたいです(プリント時や並べたときの微妙な紙のゆがみが原因か)。遠くから見ればわからないので、それほど厳密ではなくてもOK。

上に布(トロマット)を載せると少し透けるので、それを下敷きにして、ダイレクトに塗っていきます。

下敷きの文字に線が入っているのは
プリント時に出る「ふち」部分をカットせず重ねているため。
赤い文字も塗っていきます。
一人1文字ずつ担当。
これは横断幕ではなく、
会社の玄関先に張り出すことを想定した1.2m四方の幕で、
同様の手順で作成しました。
細かいQRコード部分は筆では難しく、途中から「マッキー」で塗ることに…。
手書きのQRコードがちゃんと読めたときは感動しました。
(QRコードは株式会社デンソーウェーブの商標登録です)
同様の手順で組合の旗をつくるためにコピー用紙を並べているところ。
ちょっとしたパズル状態です。
組合の旗ができあがったところ。

5. 乾かす。乾いたら端を処理し、ハトメをつける

塗り終わったら乾かします。1~2時間で乾くとアクリル塗料の袋に書いてありましたが、厚塗りになったところなどはもう少しかかりました。早く乾かすため途中から扇風機を導入。

下のコピー用紙がくっつくととれなくなるので、おおよそ乾いたところでコピー用紙をはがし、そのかわりに新聞紙を下に敷いて完全に乾かしました。

裁断した布端を三つ折りにして布用ボンドで接着します(150cm幅は布の「耳」があるので処理不要)。また、ハトメをつけるところに三角に切った補強材(ここでは合皮)を貼ります。

接着剤が乾いたら、補強材を付けた部分に穴あけポンチで穴をあけます。力を入れすぎると下敷きマットまで抜けてしまうので注意!(ポンチ用の分厚いビニール下敷きも売っています)

穴があいたら説明書通りにハトメをとりつけます。

6. 紐をとりつけて吊るす(懸垂幕のほうがラク)

横断幕を会社の屋上から吊るします。上の紐は屋上の手すりに結びます。下の紐は「わ」を作っておき、窓から傘の柄やゴルフクラブ等をつき出して「わ」にひっかけ、引き寄せて結びます。

吊るすのは縦型の「懸垂幕」のほうが圧倒的にラクでした。四隅を固定するだけで大丈夫だからです。横型の「横断幕」の場合、四隅+中央部だけでは布が大きくUの字にたわんでしまい、ピンと張ることができませんでした。そこで、上部におよそ1.5mおきにハトメを追加して吊るすことになりました。


以上、横断幕・懸垂幕の作り方でした。

このように手間暇のかかった横断幕・懸垂幕ですが、新・新代表取締役S氏からは、「会社の信用が落ちていく」「風評被害が広まる」、その弁護士C氏からは「会社に対する名誉棄損、信用棄損だ」と言われてしまいました。そして彼らは、組合との団体交渉については「日程調整に時間がほしい」と引き延ばしつつ、秘密裏にいち従業員に対し、横断幕の撤去を命じる「業務依頼書」を出していたのです。そして冒頭の執行委員長の私物携帯電話へのメッセージへと至ります。

この横断幕は、会社の行く末を案じるがために私たちがやむなく発した「SOS」です(私たちが横断幕を作った事情と経緯は、これまでの1回目2回目3回目の投稿をぜひお読みください)。それに対して、理解しようと対話したり、メッセージに応答して何らかの説明をしたりすることが一切ないまま、撤去を一個人に迫る、そのやり方と、私たちが直面していることについては、また次回以降に書く予定です。