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【エッセイ】気配

 したたかな雨が一日降り続いた。
 次の日は快晴。日射しは強いが、風が吹くと肌寒いくらいだ。湿度は低く、洗濯物がよく乾く。
 雨の前とは空気が変わった。空は高く、青がいくぶん薄い。
 お盆すぎから飛びはじめたトンボは、雌雄で連なってそこらじゅうで水たまりに尾をつける。
 日向と影のコントラストを見ても、山の木々の葉の勢いを見ても、否応なく感じてしまう。
 秋が来る。
 ほんとうはもう、来ているのかもしれない。しかし、ジリジリとした日射しと昼間の気温はまだ夏の名残りを少し残している。その向こうに、秋の気配を確かに感じる。
 姿は見えなくても、そこにいる。
 すぐに近くに迫ってくるものか、しばらく遠くにいるものかはわからない。秋はおそらく気まぐれだ。
 気配を感じて来るぞ来るぞと身構えていても、気づいた頃にはもう、秋のただ中にいるのだろう。

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