【エッセイ】カサブランカ
カサブランカの香りがして、ふと顔をあげると父の喪服が掛かっていた。
そうか、となりのおじいちゃんの葬儀は今日だったか。
うちの祖父と同級生だったおじいちゃんは享年97歳だという。数年前まで、そこら辺を散歩していたっけ。
近ごろの葬儀はお焼香をして手を合わせるだけだから、あまり服に線香の匂いがつかないらしい。かわりに会場に満ちたカサブランカの香りをまとって帰ってくるようだ。
お葬式の香りまで変わったとは、新しい「普通」の下でのものごとの変化は計り知れない。
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