聖なるものについての授業
今をさかのぼること、革靴にして3足前、読んだ小説にして968冊前、ビールにして1743リットル前、僕は大学生だった。
そのころ「宗教学」の講義をとっていた。ものすごく熱中していた。古今東西のあらゆる宗教や哲学を、わかりやすく解説してくれて「こんな面白くていいんですか?」という謎のテンションでのめりこんでいた。
教授は、ちょっと背の低い四十くらいの男性だった。ダボついた背広を着ていた印象がある。エレベーターで乗りあわせたときに、沈黙の後に「えっと、浅田君だよね?」と名前をお