【映画】「シビル・ウォ―」この映画、爆音注意です
アレックス・ガーランド監督の新作でありA24史上最高の制作費をかけたという「シビル・ウォ― アメリカ最後の日」を観てきましたので感想等綴りたいと思います。
感想/ネタバレなし
予告編にあるとおり、アメリカ合衆国の内戦を描く超リアルなフィクション映画で銃撃戦や建物爆破のシーンが出てきますが、最初に注意しておくと
音に敏感な人はドルビーシネマやIMAXで見るのは危険です!!!
私は耳だけは20代と耳鼻科の先生に褒められたぐらい耳がいいんですが、この映画をドルビーシネマで観てから数時間は耳鳴りが治りませんでした。(実は翌日も調子が悪かったです)前回の「エイリアン・ロムルス」もドルビーシネマだったんですけどこんな症状にならなかったので、シビル・ウォ―は相当サウンドデザインにこだわっているんだろうと思います。
なので迫力は味わいたいけど人より音に敏感、という人はできたら普通シアターで観てね、普通でも充分迫力ありますから。。。。
さて、前置きした後で
「シビル・ウォ―」はアメリカのジャーナリスト視点で描かれています。主人公はリーというANTIFA虐殺写真スクープで有名になったベテラン戦場カメラマン。そんなリーを尊敬するジェシーという戦場カメラマンになりたい若い女性。対照的な二人を映しながら物語は進んでいきます。
リー役はキルスティン・ダンスト。「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイヤ」の少女ヴァンパイヤ役から早30年!なんだか見た目あまりかわっていないですよね、少女の面影が残る素敵な俳優さんです。今回は(たぶん)すっぴんで冷静沈着なジャーナリストを演じています。
最近ではファーゴ2に出ていて、私は彼女の70年代ファッションが可愛らしくて大好きでした。そういえばこのファーゴ2で共演したジェシー・プレモンスと結婚したんでしたね。彼は今回の映画の予告にも出てきた例の赤いサングラスの兵士役の人ですよ!!
それからジェシー役はケイリー・スピーニー。
前回レビューした「エイリアン・ロムルス」で主演した今売れっ子の俳優さんです。
あくまでジャーナリスト目線のお話なので、普通の戦争映画の描き方とはちょっと異なるんですが、リーもジェシーも前線でカメラを向ける様は一緒に銃撃戦を戦っているような感覚になりました。
監督はアレックス・ガーランド。
代表作と言えば「エクス・マキナ」。独特の世界観を持つイギリスの監督さんです。もともと小説家で脚本家として映画の世界にデビューしているので、キャラクターの見せ方が上手で、最小限の言葉でちゃんと観る側に意図を探らせるようなセリフ回しをする方ですね。
前作の「MEN 同じ顔の男たち」「アナイアレイション 全滅領域」「エクス・マキナ」に共通したどことなく不穏な空気感は今回の「シビル・ウォ―」ではあまり感じなかったのは初のアクション映画という事もあったのかなと思いました。
観終わって感じたのは、ジャーナリスト達がワシントンD.C.まで移動する間、様々なことに遭遇するんですが描き方の緩急がすばらしくて109分が本当にあっという間でした。
戦争映画を期待していた人は物足りなさを感じたかも知れませんが、もともとそういう映画じゃないんだよということを念頭に置いておけばかなりサプライズがあって楽しめると思いました。
(ただ予告編もベタな戦争映画っぽい編集になってしまっていますよね 泣)
これは普通の戦争映画ではない/ネタバレあり
ここからはネタバレを含む感想になります。
今回の内戦。大統領がいくつかの暴挙に出て米国民が怒り連邦政府から多くの州が離脱し、力をつけたWF(西部勢力)がホワイトハウス襲撃をすることになるんですが、そもそもtipping pointとなるきっかけは何だったのか。
映画では戦争の背景になるようなことが語られません。
だから、こうなったらアメリカという大国でも内戦になるんだよ、という警告めいた事柄は直接出てこないので観る側は想像するしかありません。
さきほども書いた通り、ジャーナリストの目線で描かれたお話で今起きている事象を描いているので、どちらか敵で味方なのかも映画で語られていません。
最後はホワイトハウスが陥落し大統領が殺されWFが勝利しますが、WFはカリフォルニアとテキサスの同盟から成り立っており元々主義が全く異なる2つの州が共通の敵を倒した訳ですね。
でもその後はどうなるんでしょうか。
第二次世界大戦後のアメリカとソ連の冷戦時代のように一触即発な事態になるのでは。戦争になると、この映画に描かれているように誰も正常な判断なんか出来なくなるんですね。
そもそも正義とは何なのか。対立し武力行使で勝つことが正義なのか本当に考えさせられました。
ホワイトハウス襲撃のシーンでリーはパニックになってしまいます。
それとは対照的に道中カメラマンとして衝撃的な写真を撮って経験値を挙げたジェシーは、この襲撃シーンでどんどん前に進んでいきます。この場面から二人はすっかり立場が入れ替わってしまったかのようでした。
自分を庇ったリーを置き去りにするジェシー。
うわ、えぐいなと思ってしまいましたが、リーがジャーナリストとはこうあるべき、をジェシーに伝え続けてきたわけですから悲しいけれど当然の行動だったのだろうなと思いました。
ジェシーは人としての心を殺してまで戦場カメラマンとして撮るべき一枚のためにシャッターを押し続けました。
かたやリーはジェシーを銃弾から救う事で最後の最後人としての心を取り戻したのかもしれません。
事実を報道するために戦場に赴くジャーナリスト達。彼らもまた兵士と同じようにPTSDに悩まされているのでしょうね。そういうリスクを負いながら伝えられた映像や写真を私たちはちゃんと正常に受け止めていることができているのでしょうか?
映画に出てきたとあるまちのとあるブティックで内戦に関わらないことが一番いいこととして見て見ぬふりをして普通の暮らしをする人々。
あのシーンは、今も世界で起きている戦争を傍観してる他国の人々(わたしも含めて)を皮肉っているのではないかな。私にはそう見えました。
この映画は何度も書いているようにジャーナリストの目線で描かれたお話で、観る側の捉え方によっていろんな見方が出来る映画だと思いますから私が感じた印象と違う見方をする人もいるでしょうし、それこそが映画の楽しみ方ですよね。
今この瞬間も続いてる遠い国での戦争。
もうすぐ迎えるアメリカ大統領選。
混沌とした世界。
「シビル・ウォ―」はこういう現代だからこそ観ておきたい映画になっていると思いました。
私的に「シビル・ウォ― アメリカ最後の日」評価は★★★★☆でした!