【展覧会】「デ・キリコ展」@神戸市立博物館
神戸で開催中の「デ・キリコ展」に行ってきたので感想を綴りたいと思います。
90歳で亡くなるまで作品を制作し続けたデ・キリコ。画業70年間で非常に多くの作品を制作していますが、今回の大回顧展では各国に散らばる110点もの彼の作品が一同に展示される非常に大きなものとなっていました。
一部は写真撮影可能となっていましたので、写真も一緒に添えて綴ります。
長年の画業の中でデ・キリコは芸術家として飽くなき探求心を以って作品に取り組みました。
デ・キリコを有名にした「形而上絵画」。実は彼が20代の10年間に描いた作品が今や代表作として知られています。
上記は今回の大回顧展のメインヴィジュアルにもなった作品です。
デ・キリコの作品に頻繁に出てくるマヌカンの一つの作品。右側の影が気になりますし、イーゼルの形、これではちゃんと立てませんよね。不思議だらけです。
表情を持たない無機質の人形とモチーフが共におかれたこうしたマヌカンの作品やイタリア広場を描いた一連の作品は、パッと目を引く色彩にもかかわらず絵画としての遠近法や常識をなしておらず非現実的でファンタジーな夢を見ているような感覚と共に、ずっとみていると見ていてどこか不穏なイメージがします。
形而上絵画の全体から伝わる不思議な感覚こそが多くの人を惹きつける魅力なのでしょうか。
若い時に高い評価をうけたにも関わらず、その後彼は古典回帰で伝統的な絵画の研究をし自身の作品に反映させていきますが、それが多くの同業者たちの反感を買ってしまいます。
それでもデ・キリコは自分が描きたい作品を制作していきました。
面白いのが、デ・キリコはバロック調の作品を描きながら同時期に形而上絵画作品もまた制作している点です。後に「新形而上絵画」として分類されていきますが、若い時のあの10年間の作品は未熟だったと言わんばかりに過去の自身の作品と同じような作品を描いたりしています。
最晩年に制作されたこの作品はオデュッセウスが様々な困難を乗り越えて故郷に帰ったようにデ・キリコも帰るべき場所に帰ってきた様子が描かれているのでしょうか。
室内には初期の形而上絵画や良く描かれるモチーフ、家具などが描かれています。大海であるはずの海は何故か部屋に収まるラグになっていて解説には「人生というのはまるでカーペットのように小さく見え冒険、危険、発見に満ちた彼の生涯は、室内の旅程の重みもなければ広がりもない。(以下 略)」と書かれています。
その瞬間は自分にとって最大最高に見えたのかもしれないけれど、人生は終わってみればあっという間。晩年になって過去をふりかえるとふと虚しく思うのはこういう感じなのかもしれません。
デ・キリコにとって形而上絵画というテーマは一生かけて取り組むべきものだったのだろうなと想像しますが、そういうテーマを持てたというのも素晴らしいですし、人生の中で様々な歴史的絵画を研究していて晩年まで常に芸術家としての高みを目指し続けたのが感銘をうけました。絵画から作家のそういったパワーを感じる気がしました。
展覧会では各章ごとに壁の色が異なっていて黄色やオレンジ、青などインパクトの強い色を使っていても作品がそれに負けない力を発しているのが感じられました。
この黄色の壁と絵は良かったな。
我が家もこんな部屋を作って絵画を飾りたいと思いました。
展覧会ではムロツヨシさんのオーディオガイドがありまして音楽と共に楽しむことができます。とても良かったですよ。
実は今回の展覧会、遠方という事もあり私が体調面が不安だったので夫に一緒に行ってほしくて(足がわり 笑)興味持ってもらおうと下記の動画を見せたら、本人すごく興味持ちましてオーディオガイドも借りて一つ一つの作品をじっくり見てました。
夫があんなに絵画に興味持つなんて珍しいです。
デ・キリコの魅力恐るべし。
山田五郎さんの解説、デ・キリコの事を全く知らない方でもすごくわかりやすくてお勧めです。
4月から8月に東京開催は終了し、今回の神戸は12月8日までとなっています。
デ・キリコ、日本人の方々はかなり好きな絵画なんじゃないかなと思います。是非、ご覧になってみて下さい。
では、また。