或る

なにも創造できない。

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最近の記事

死者を永遠に生かしむるもの

死者を永遠に生かしむるものは鮮やかな思い出しかない。そして作家の任務とは、作品が個人の思い出と同じくらい鮮やかなものとなるよう全てを個人的に思い出すということである。 - ガープの世界

    • 非生産

      今日は結局何もやっていない。一日中漫画を読んでた。 非生産。引っ越し作業も遅々として進まず。 好きとか嫌いの地平から逃げたい。対人関係に感情を持ち込みたくない。ドライに生きていければ楽なのに、親しくなるうちいつの間にか湿っぽくなる。 人の死も、人間関係の死も、私の心は深く傷つく。 最近、久しぶりの友達に連絡を取って会ってるんです。と私が言う。すると先輩は間髪入れず、 「え?なに、死のうとしてるの?」 と返してくるのだ。 死を意識した人間でないとその発想は出ないと思う。あ

      • 昨日は

        内容は大したことないけど、やりたい構成は上手くできたように思う。まあまあ良い文筆ができた。 今日はしばらくやってないボードゲームを売りに行った。引っ越し作業の一環だ。6つあわせて4700円、箱にキズもあったし、こんなものだろう。 マッチングアプリで知り合った方と通話した。 感じの良い女性で、素晴らしい方だと思えた。それだけに恋愛ではなく友達になるのではダメかな、と思ってしまった。

        • その多面体は多層構造を有する

          他人を理解することは不可能だと思う。 デパートの最上階にある喫茶に来ている。店の前に貼り出されたストロベリータルトの写真が美味しそうで入ったのだが、ケーキは全て品切れで仕方なしにハニートーストを頼む。店の前に品切れと書いてくれ、と少し苛立つ。 隣の空席に、初老の女性がひとり案内される。女性はカレーを注文する。私はそういうとき、少し嫌な予感を働かせてしまう。私は昔から人の咀嚼音に過敏である。特に、口を開けてクチャクチャと音を鳴らして食べる人間は軽蔑している。 個人的統計によ

        死者を永遠に生かしむるもの

          家具

          引っ越し先が確定した。 こうなると引っ越し準備を進めていく段になるわけだが、家具を見るのが楽しい。 部屋のレイアウトを考えるのが楽しい。楽しい。楽しい。酒を飲む。睡眠。

          なにごともない。

          日が経つ。人の感情について考えることをやめたい。 愛がないのに、マッチングアプリをまた始めてしまう。 寄りかかる人を求めてしまっているのかもしれない。手軽に興奮を得たいのかもしれない。新しい風に吹かれたいのかもしれない。 寄る辺なく、所在なく、生きていられたら。無頼。 褪せたことを認識している。気付いてもどうしようもない。どうすればよいのか教えてほしい。

          なにごともない。

          萎びる

          今日は2軒、内見へ。 妙に萎びた。疲れてしまった。言葉が思いつかない。 2軒目が素晴らしかった。暮らすに難ある部分もあるけれど。 ブルーライトカットグラスを買った。コレもなかなかに良い。 ガープの世界を読んでいる。わりと今日は良い日であったはずなのに私の心が萎びているのは、コイツのせいかもしれない。 妙に疲れた。こんな惰性で書きたくなかった。 早く読み終わってしまおう。

          萎びる

          ウーバーイーツを注文するとき

          ウーバーイーツを注文するとき、ウーバーイーツもまた注文しているのだ。 日曜の昼は、ウーバーイーツで少し遠い場所にある弁当屋の唐揚げ弁当を頼むと決めている。毎週同じ時間帯に頼むだからか、毎週ほぼほぼ同じドライバーが届けに来てくれる。40代ぐらいのおじさん。 ウーバーイーツを頼む際の習慣がある。 箱買いしているペットボトルのお茶をビニール袋に入れてドアノブにかけておくのだ。「ドライバーさん、よければどうぞ」というメモを添えて。ドライバーは「いただきます。ありがとうございます。

          ウーバーイーツを注文するとき

          花束みてえな official 髭男ism

          花束みてえな恋をしたを見た。ひと月前に。 日曜の田舎の映画館はやはり客の年齢層が低い。座席の75%は埋まっていて、左隣はスタバを持ち込んでやがる女子大生ひとり、右はひとつ席を空けてちょっとヤンチャそうな男の子が3人。 上映前の広告が流れる間もまあまあの声量で喋り続ける男の子たちに心配な思いを抱えたまま映画が始まる。 彼らは上映中もずっと喋り続ける。少し声量を落としてるのが余計に腹が立つ。隣の女子大生はスタバの紙袋をゴソゴソとうるさい。 この人たちより高い金払って映画見て

          花束みてえな official 髭男ism

          茹る

          家に着いたらまず手を洗って、その次にすぐ湯を沸かす。風呂桶ではなく、大きめの平たいフライパンに水を張って点火する。フライパンにするのは沸騰が早いからだ。もうひとつのゴトクに置きっぱなしにしたアルミ製フライパンを布巾でさっと拭いて、そこにオリーブオイルを流し込む。まだ火はつけない。 まな板を設置して、ニンニクをひと欠け冷蔵庫から取り出し、剥いて4つに切りわけアルミパンに入れる。火をつける。オリーブオイルの水溜りに沈んだニンニクからプクプク気泡が湧いてくる。ニンニクの香りが辺りに

          階段

          3,4歳ぐらいの、まだ言葉も十分でないような男の子がふたり階段を上ってくる。壁をよじのぼるみたいに、次の段に置いた手を支えにしながら膝を上げて一段ずつ上ってくる。 上がった先には扉があって、私はその扉の前で彼らが上ってくる様を見守っている。 踏み外して転がり落ちてしまったら、すぐ飛び込んで抱きかかえて私がすべての衝撃を受け止めるのだ。私はこういった実現性のない自己犠牲自死をしょっちゅう妄想してしまう。 子どもたちが私を見て、手を振ってくる。振り返そうと手を挙げると、私の反応

          捨てる

          マッチングアプリを辞めた。月額プランはまだ残っていたが、心が萎びてしまった。 アプリは私の自信を喪失させるに充分な役割を果たしたようで、常用が一般的となったマスクに安堵感を覚えるようになった。道行く女性の顔をマトモに見れないようになった。職場で人と話すとき伏し目がちになった。立派な社会不適合者だ。 好む好まないを基準に他人を判決していく処理行動は罪悪と優越を刺激するが、反対に相手からもそうやって選別されることへの憤慨を引き起こしもする。 結局、マトモな対話は誰1人とも出

          捨てる

          外連味

          文筆と、僅かに疼き始める外連味。路傍で跪きながら施しをもらおうと両手を掲げた承認乞食の空気が漂う。 変化を敏に感じ取っていく必要がある。忙しい日々に飲み込まれてはならない。 群れからはぐれ飢えたライオンみたいに、枯れ果てた痩躯で、眼光だけは鋭く。

          外連味

          ウチを見に

          カーテンの隙間から漏れる日差しで朝が来たことを知る。アラームに先回りする稀有な朝。 内見へ行く。最寄りと職場に線対象な位置にある駅へ。最寄りから電車で1時間はかかるにもかかわらず、どこか足取りは軽い。現地集合であるから、生まれつき方向に音感のない私は若干の不安を抱いてはいるのだが。 物件の近くには川があるらしい。それが惹かれるポイントで、つまり私は水を見る生活がしたいのだ。 川はすべて海へと繋がる。とある文筆家の言が頭の中を過ぎる。そして、女と入水した作家の顔。 内見し

          ウチを見に

          愛のある不調和

          引っ越すことを決めた。契約更新の日が近付いている。それに、孤独を貪る日常に瑕ができそうだからだ。 散歩がてら3つ隣の駅のコーヒースタンドに初めて立ち寄ってみる。 大通りから分岐した通りにある、商店街みたいに横並びの店舗群にその店はある。他はレジにエレキギターが置かれた本屋ぐらいで、ほとんどシャッターがおりていた。 コンクリート打ちっぱなしの店内。木製の椅子やテーブル、プラスチックでできた青と白のプランターから生える蔦植物と店員のカラフルな髪色がコンクリートの無機質感に抵

          愛のある不調和

          足跡

          もはや感情を抱いていない相手を意識してしまうのは、心がかつての心的態度を模倣してしまうからだ。 好意を抱くというのはとても安楽で、そうやって自分を騙せば大抵のことは乗り越えることができる。アイドルが好まれる理由がわかった気がする。 自分にとって安逸に過ごすためには擬似恋愛が必要らしい。ただそうやって感覚を麻痺させても心や身体に負荷をかけてることは変わらない。そうして容体が悪化した結果、ニセモノの感情をホンモノと錯覚する。 そういった構造を理解し感情を自覚し続ければ、乾い