アイドルになりたかった話

幼稚園の卒園アルバムの将来の夢は、ケーキ屋さんだった。人生ではじめての将来の夢だった。
小学校1年生の将来の夢は、学校の先生だった。
夜の見回りが嫌でその夢は半年も持たずに諦めた。
その次は、スーパーのレジ。かっこよく見えたから。
ここまでは多分、やってみたい仕事でしかなかったように思う。

小学校の卒業アルバムでは、小説家になりたいと書いた。
小学校5年生の頃から、小説を読むのが好きだった。自分の思い描いた世界を作っているのが羨ましかった。

中学校の卒業は何て書いたか覚えてない。小学校から変わらずな気もするし、変わってた気もする。

高校は多分書いてない。

今は…分からない。
あんなに遠かった夢の話が、自分を養うための現実問題として直面している。

話が少しずれたので元に戻そう。
卒アルに書いていた夢は嘘ではない。今も、やってみたいなと思うことはあるし、好きなものや憧れは昔から変わらないんだなと感じることも多くある。
ただ、それ以上の夢が私にはあった。

アイドルになりたい

私の人生の中で1番長く続いた夢だった。

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大好きな推しができた。人生で初めての趣味だった。とにかく夢中だった。学校から帰ってはMVやバラエティをひたすら見てた。
はっきり言うと、アイドルになれる要素は昔も今もほとんどない。それでもアイドルになりたかった。

動機は全くもって純粋ではなかった。
アイドルになれれば、コンサートに応募しなくてもコンサートに行けるし(行かなきゃいけない)、推しにも会える。世に出る前に曲を知れるしダンスも踊れるようになる。私もそっち側に行きたい。そんな理由だった。

でも周りに言うのが恥ずかしかった。勇気を持って伝えても、写真を撮ってもらうのも恥ずかしかった。ただアイドルになりたいという思いだけは強かった。

4回ほどは応募したように思う。ただの一度も通らなかった。受からないのは分かってた。応募のチャンスを逃して泣いていたのは、受かるかもしれない低すぎる可能性を、最初から0にしたくなかったからだ。

いつのまにかアイドルになれる年齢をすぎていた。そしていつのまにか、アイドルになりたい夢も忘れていた。アイドルの推しも卒業して、ほかの事に夢中になっていた。

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そしてまた、アイドルにハマった。アイドルになりたかった夢を、あの時の感情を思い出してしまった。
人気なメンバーになれなくてもいい。あのグループの曲を歌いたかったし、踊りたかった。あのステージに立ってみたかった。衣装を着てみたかった。

アイドルになりたいと、気持ちだけは人一倍強かったくせに、アイドルになるための努力はこれっぽっちもしなかった。
なれたら頑張る。レッスンがどんなに辛くても、大好きな事だから頑張れる。そう考えていた。

ある程度自由にできるようになってからも、何の努力もしなかった。自分を発信していれば、そこで有名になって1日だけアイドルになってみた!とかできたかもしれない。ダンス部に入っていれば、ステージで踊る事はできたかもしれない。アイドルの真似事だってできたかもしれない。
実際、ダンス部には入っていないが、文化祭で何度かダンスは発表した。ステージに立つのはなんだか恥ずかしかった。自分に自信がなかった。アイドルなんてバカな事と、あの頃の周りの反応が自分の言葉になって、自分を追い込んでいた。あのステージも、もっと楽しく全力でやればよかった。もう周りにバカにする人なんていないのに。

今ならアイドルになれるのか。それで食べていけるようになるには、何年もの時間がかかる。それに今こそ、いい歳してアイドルなんてバカな事と言われてしまう。

私がなりたいアイドルはなんだったのか。私はもう恋愛も知ってしまった。今アイドルになれるなら好きな人を捨てられるのか。アイドルにもなりたいし、好きな人とも離れたくない。恋愛禁止アイドルの熱愛は不誠実だ!派の私にはもうアイドルになる資格なんてない。
ただ踊りができて、少しちやほやされればそれでよかったのか。
アイドルがよく言う絶景は、客席やDVDからでも絶景だった。私もあれを見てみたかった。
どうして私はなれなかったのか。夢を叶える努力もせず、アイドルになりたい表面上の気持ちばかり書き、そう言うのが全部書類と写真に表れてたのかもしれない。

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私の夢はコロコロ変わる。良くも悪くも影響されやすい。アイドルの夢が覚めるまで、本気でアイドルごっこでもしてみようと思う。

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