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絹糸が結ぶ、文化と奉書紬

芸術交流を企画デザインに

この企画を考えるに至る経緯は2年前
当方でドバイ国際博覧会の企画を
考える時にアイデアを求めて読み込んだ
大叔父法隆寺128世管主
(当時・執事長)高田良信の著書
「シルクロードから来た天女」が
機会へと繋がります

これまでも白鳳文化前後の
時代から影響を受けた作品を多数企画
( 2015-2021 )

本書は「法隆寺ふすま絵の
制作記録」という主題の脈略に沿って
制作に携わる日本国内外の書家や絵師
地場産業関係者、大叔父達の徹底した拘り
妥協ない芸術への情熱が
纏められているのですが
読み終えた後は、自分を振り返り
ここまで制作へ向き合えていたかを
自問自答する衝撃を受けます

そして、これまでの日本の伝統工芸を
世界に広める、という考え方から
【 CRAFT AND ARTS MEET 】共に生み出す
芸術交流の発展という概念に導かれます

~アジアの美術、それは分業で成り立ち
お互いの仕事に敬意を示し
繋がることで歴史に残る作品を生み出す~

~美術とは文化を通じた平和~

私の主観的要約を前提としますが
個の考え方を大いに出し合って認めて、
調和する、という
「和を以て貴しとなす」の考え方そのもの

そして記されている
ふすま絵の復刻に使用する
福井県今立郡の地場産業、和紙の魅力には
工芸の仕事に従事している立場として
特に関心を寄せました

生業という範囲を超えた
和紙職人技の熱量の高さを感じる文面が続き
一度、私も福井の地産品に触れてみたい

これまでも絹羽二重など制作を通じて
関わりを持つ地域ではありましたが

あらためて荘厳な自然界の恵みを通じて
織りなされる絹織物を改めて深めてみたいと
憧れるよう、なります

以降は日本とアジア、文化が通いあう
制作が出来ないかを熟考するようになり
コロナ蔓延の自粛が解かれた
今年に本作を制作するに至ります

幻の紬、奉書紬を求めて

旅情ある三国港行の電車

奉書紬

それは福井県の極寒の地
その一番の寒い寒の頃が
いいと言われて流水で漉かれる和紙の
最上級の奉書紙に例えられ(諸説あり)
名付けられた大名文化の格式高い紬を指します

徳川家康の次男、初代福井藩主結城秀康が
藩の特産品として定めたのが始まりで
白く、そして精緻(=せいち)な技術から
織りなされる純日本産の織物

書道家で友人の笹島沙恵さんと一緒に
大雪の頃、途絶えた奉書紬を
新しい奉書紬として制作するため
福井県の養蚕農家に皇室ゆかりの品種
「玉小石」の飼育を依頼し
糸作りから機織りまで
ひとりで取り組まれている
日本で唯一の奉書紬・織元の
嘉村さんを知り、北陸・三国を訪ねました

窓から眺める雪国の朝

奉書紬に関する専門的な説明は、
この寄稿では割愛させていただきますが
(※詳細は文末のリンク先へ)

優しい風合の中にも
命の輝きを感じ取れる光沢が魅力
奉書紬

あまりに荘厳な白の美に笹島さんと感動

ここで話を纏めないと・・と思い(笑)
その場でコラボレーション制作の打診まで
思わず踏み込んで話し
その日に3者で共作を生み出すことが決定

皇室の伝統行事、養蚕
嘉村さんの仕事も同じく
日本の文化継承を担い
地産品を生み出している

2人とも、嘉村さんの仕事に対する
姿勢の素晴らしさに、感銘を受け
帰路は雪景色の中、軽やかな足取りでした

全ての工程は気が遠くなるような
丁寧な準備から始まる

クリエイティブの構成

企画担当の私はシルクロード貿易が盛んな
白鳳時代の天井装飾「 飛天 」に着眼

白鳳時代の美術

インドから長安へ渡り、そして
シルクロードの最終地、奈良へ

伝来の技術から日本で生み出された
空を自由に舞う姿を表す世界との
繋がりを表した建造美術品から発想を得ます

雲を借景に世界を舞う様子を
本作では行雲を笹島さん作風らしい、
瑞々しい感覚のアブストラクトで表現

不規則な玉小石の糸は
思いがけない
墨濃淡の世界を演出

衣を羽織ると自然に私達の暮らしに溶け込む
尖り過ぎない筆表現が魅力です

絹衣は上質の中にも
可憐な表情を演出してくれます

最後はインドの伝統的な職人技
ブロック・プリントで自然美を表す
文様を浮かべ、切箔で華を添えています

無憂樹(ムユウジュ)の花文様
そして切箔を添えて

お釈迦様が生まれたと言い伝えられる
無憂樹(ムユウジュ)の花文様は
職人さん、お薦めのブロックでした

ブロックは自然界が
モチーフの文様が中心

インドでは「誕生」に関わる
おめでたい木と言われています

自分で細かくディレクションする場合と
割と、お任せする場合がありますが
配色も今回、コンセプトを職人さんに伝え
その中での、お薦め色です

当初は全て金彩を施す予定でしたが
「マスタード(天然のオレンジ)と
藍が、いいよ~♪」との事でした
ムコウジュの花がオレンジ色なのを
後日に知り、納得です

額縁には青海波を
日本とインドを空海を超えて
繋がる様子を表現しています

日の光を浴びる印象の青海波

職人の皆も大胆な墨書に
「 Beautiful~! 」と驚いてました

国際移動は勿論、インド国内の
移動も肌身離さず持ち運んだ日本の文化

私達が制作している作品は
お客様の人生を
より豊かに演出する装飾品です

この衣を纏うことで装う方が
これからの人生で出会う
世界中の人達と
日本文化や他国の魅力を
雑談の中で広げられる
そんな、お役に立てる1枚であれば幸いです

床の間に飾る書の衣
作品はWP WORLD
ウェブストアより、ご覧いただけます

書:書道家 笹島沙恵
織:奉書紬「くらしつむぐあとりえ」

Produce By SHOKO KONO

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