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藤本萌々子
2017年12月18日 01:22
その場所の名は「果てのない美術館」といった。天井の高い回廊は霞むほどに遠く彼方へと続き、その終わりが見えない。冷たい階段は遥か見上げる先へと高く昇って霞み、深く昏い地の底へ降りて消える。宮殿の荘厳な層は幾重にも折り重なり、歩けども歩けども絵画や彫刻の数は尽きることが無かった。柱は磨かれた大理石の床に揺らめく蝋燭の影を落とした。延びる回廊にも窓から見下ろす中庭にも、どこにも人影は無かった