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うだる中で聞いた彼らのこと。

とても暑い日、海辺の大規模な工場で子供のころに聞いた都市伝説の話。

診断結果を元に。

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「ないしょだよ」
舌っ足らずな言葉で、笑いをこらえきれずに肩を揺らしながら、その子は話してくれた。


その日は初夏にしてはいやに暑くて、呼吸の度に通る自分の息すらも暑く感じてしまってまいっていた。
街で一番大きな海鮮加工の工場で就業体験。ほどなくして息絶えた後の魚介類をとにかく少しでも新鮮な内に加工場へ運ぼうと躍起になって走りまくる。
その結果、疲労よりも暑さにやられているところを心配してくれたオジサン職員に呼び止められて木陰で休む。空がとにかく広く、高く感じて快晴ではあるものの、風がない時にこの空模様はなかなか地獄だった。

とにかく、景気よくじりじり焼かれないよう、木陰を探して作業場からの声が届くだろうところで腰を下ろす。移動前にオジサン職員が渡してくれた間のポカリを開ける。

缶のヒヤリと冷たい感触を唇に浮けながら傾けると、期待通りに冷たいポカリが口の中へ入ってきた。うっかり一気飲みをして腹を冷やさないように、気を付けて口に含むようにしながら少しずつ喉へ通していく。
つかの間の冷涼を感じていたところへ作業着を引っ張られた感触がした。

人の気配を感じていなかったため、慌てて引っ張った主がいるだろう方向へ缶から口を離して向く。
小さな子がしゃがんで曲がった膝に肘を乗せて頬杖をつくようにして両手で顔を支えていた。口角が上がっていて笑っているようだ。

「おにーさん、ふしぎなおはなし しってる?」
そもそも、年下の子が入るような話は聞いていないし、確認を取ろうとする前に話し掛けられてしまった。しかも、暑さでやられたのは体だけではないらしい。

「知らない」
応えてしまった。この答えに小さな子は目を細めて、ふふーと笑う。
「そうじゃないや…君は」
「うみにはね、このかみみたくしろくて おおきなひとがいるの」
改めて問おうとしたところを重ねられてしまった。とはいえ、小さな子が額にかかる髪を軽くつまんで強調したのに驚く。色素が薄いというよりも老人に生えていそうな真っ白の髪。5、6歳くらいにしか見えない体に不釣り合いだった。

「そのおおきなひとはね、おほしさまがおちると ちいさくなって あかちゃんになるって」
「それで、またおおきくなるまで いろんなところで たくさん きらきらをたべるんだって」

姿勢を崩して白い子は立ち上がると、短いジーンズを履いた足を屈伸させながらぱたぱたと両腕を上下に動かした。
さらさらな髪と柔らかそうなシャツが、白い子の動きに合わせて色んな動きや皺を作る。

「きらきら、はどういうもの」
「いのち!」

レモンを絞ったら薫る独特の甘いとも無味とも言い難いものをその答えに感じる。
軽く流すこともできずに、中途半端に潤っている口を軽く開けたままに思考を巡らすが、出ないものは出ない。
途端、そこで何もなくなった。


「とにかくね、いっしょのひとがほしくて」
「おなかがさびしくて」
「たべちゃったの」

大好物を食べたように、ゆっくりと柔らかくて優しげな声はそう結ぶ。
吹いた風に白い髪が、さらさらと揺れた。

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