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ツラくないお金の回し方とは?アート業界で働く人のための会計講座【講座レポート】

手弁当のプロジェクトも抱えていて、やればやるほど貧乏になる。
実現したいアイデアはあるけど、先立つものがなくて着手できない。
助成金の切れ目が活動の切れ目。

アートに関わる事業を行うなかで、そんな悩みにぶつかることはありませんか?

こうした悩みを解決するための第一歩は、悩みの正体をきちんと理解することだと思います。

そこで、「アート業界で働く人のための会計講座ー事業継続のためのツラくないお金のまわし方を考えるー」と題して、表現と文化のためのバックオフィス・株式会社countroomの五藤真さんに、事業を記述・評価するための会計という「ものさし」についてうかがいました。

五藤真
1985年生まれ。一橋大学社会学部卒業。2014年から会計フリーランスとして複数の非営利団体、芸術文化団体に従事。2018年、「表現と文化のためのバックオフィス」として株式会社countroomを設立。2020年税理士登録予定。
主な従事先としてPARADISE AIR、六本木アートナイト実行委員会、NPO法人アートネットワーク・ジャパン、NPO法人国際舞台芸術交流センター、あうるすぽっと、NPO法人インビジブル、株式会社アートフロントギャラリーなど。
Web: https://www.countroom.co/
note: https://note.com/countroom

「お金が回っているとは、どういう状態なのでしょうか?」という五藤さんの問いかけから、レクチャーはスタート。

事業を行うことで利益が生まれ、それを元にまた次の事業を行い、また利益が生まれる…というサイクルが持続的に回っている状態を思い浮かべてみましょう。その状態をつくるためには、2つの視点でお金の動きを管理する必要があります。ひとつめは、最終的に使ったお金(費用)に対して獲得したお金(収益)が多いかどうかを見る「損益計算」の視点。ふたつめは、使うお金(支出)より持っているお金(手元資金)が多い状態を維持するという「資金繰り」の視点です。

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適切に「損益計算」を行うためには、その事業にいくら使っていくら得たのかを、入出金のタイミングにかかわらず、対応づけて把握する必要があります(費用収益対応の原則、発生主義)。一方で、適切に「資金繰り」を行うためには、入出金のタイミングに即して、お金の動きを把握する必要があります(現金主義)。

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ところで、助成金を得て行う事業は、損益計算がマイナスになる場合がよくあります。それは、多くの助成金の建て付けが「赤字補填」(助成上限額≦支出額)であり、さらに「計上外経費」(助成金も事業収入も充てられず、他に財源を用意しないと賄えない経費)が発生するためです。助成金を得ている限り、その事業単体では利益を出すことができない構造があるのです。

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こんなとき、部門別会計という考え方が役に立ちます。利益が出なくてもやるべき事業、何はなくとも発生する固定費と、それらを賄うために利益を出すべき事業と……。それぞれの性質や役割を理解して、組み合わせていくことが大切なのですね。また、利益が出ない事業であったとしても、それを行うことによって経験や人脈、新たな視点などが蓄積、交換されているのなら、それもまた「(お金ではない利益サイクルが)回っている」といえるのかもしれないと、五藤さんは言います。

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さてさて、ここまで学んだ会計という「ものさし」を使って、最初の悩みをもう一度眺めてみましょう。

手弁当のプロジェクトも抱えていて、やればやるほど貧乏になる。
👉損益がマイナスで、ポケットマネーで補填し続けている。収益を増やすか費用を減らす。または、別部門の利益でカバーしてはどうでしょう。

実現したいアイデアはあるけど、先立つものがなくて着手できない。
👉アイデアの収益性に自信があっても、資金繰りが厳しいと身動きができない。いっそお金を借り入れて実現してしまうのもありかも。

助成金の切れ目が活動の切れ目。
👉助成金の建て付けが赤字補填だから、収益をあげる動機付けが働かないという構造に起因していそう。一方で、その事業を通して人材が育ったり新しいアイデアが生まれたのなら、それを次の元手として活かすことができるかも。

会計という「ものさし」とその使い方を学んだことで、悩みの正体が少しクリアになった気がしませんか?

動画アーカイブ配信中!

レクチャー資料はこちら!
https://www.slideshare.net/secret/6TbJRJjg1qi7QV

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