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ART CRITIQUE n.03 セレクト版

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紙版で刊行した「n.03 散逸のポエティクス」から厳選したコンテンツ4本を収録。
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記事一覧

[インタビュー]王寺賢太|私たちはいつでも逸脱できる――フーコー『カントの人間学』の射程

哲学者のミシェル・フーコーは、その主著の一つ『言葉と物』で、ルネサンスから近代に至る各時代が持っていた認識の秩序を明らかにし、そのことによって逆に、その秩序を飛び出すことができる人間の可塑性を思考した。経済成長の限界に直面し、つつましく「分をわきまえる」ことが美とされる現代社会の中で、人間の「逸脱」や自由の可能性はどのように思考できるのか。フーコーのカント論をきっかけにして、思想

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[批評]スペクタクルに背を向けて――田代一倫《はまゆりの頃に》について|甲斐義明

甲斐義明KAI Yoshiaki
20世紀美術史・写真史。1981年生まれ。新潟大学人文学部准教授。ニューヨーク市立大学大学院センター博士課程修了(Ph. D. in Art History)。共著に『時の宙づり――生・写真・死』(IZU PHOTO MUSEUM、2010年)、主な論文に「土門拳とリアリズム写真――『絶対スナップ』のジレンマ」(鈴木勝雄、桝田倫広、大谷省吾編『実験場 1950s』

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[批評]人間の終焉と「類似」――模倣の政治経済学・序|大黒弘慈



二つの個体

坂部恵に『ヨーロッパ精神史入門』(岩波書店、1997年)というたいへん示唆に富む作品がある。坂部はそこでヨーロッパ精神史の時代区分の大きな組み換えを試みながら、近現代の思考の淵源を中世に求める。即興的な着想が随所に散りばめられているなかで、いわゆる「普遍論争」に対する解釈がじつに興味深い。坂部は、カロリング朝ルネサンスに始まる「ヨーロッパ世界の哲学」の最初

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[論考]政治・アーキテクチャ・憲法――アクチュアルな思想史のために|上野大樹

上野大樹|UENO Hiroki
政治哲学、政治社会学。1983年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程、日本学術振興会特別研究員(DC)を経て、同特別研究員(PD)。京都大学人文科学研究所共同研究員、京都文教大学非常勤講師。著作に『3.11後の思想家25』(分担執筆、左右社)、『現代社会学事典』(分担執筆、弘文堂)、『公共圏と親密圏の思想史』(共編著、京都大学出版会・近刊)。“From

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