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~読むアロマ~「ツバキ文具店」小川糸

物語の世界観を香り(精油)で表現する「読むアロマ」。「読むアロマ」は、思わず手に取ってしまう美しい装丁のように、イメージを香りでデザインしたもの。物語と、精油が持つ香りや働き、様々なエピソードをつなげて、オリジナルのアロマブレンドを作ります。

新旧、ジャンル問わず、好きな物語、気になる話をランダムにピックアップして、作った香りのご紹介です。


ツバキ文具店写真


「鎌倉の街を歩きたくなった!

と、友達が言うように、鎌倉で過ごした自分の記憶をたどっているかのような、リアル感。

街中のお店はもちろん、夏のタイ屋台、秋の光明寺の落語、冬の七福神めぐり、そして春の桜。海や山の自然。どれもこれもポッポちゃんと一緒に過ごしているかのような、そんな錯覚。

人間模様もそう。友達を2人くらいはさめば、共通の知り合いにたどりつくし(その距離感がまた絶妙)、サロンのお客様だった鎌倉マダムのみなさまは、いつも切れそうな新札でお支払いをしてくださいました。(マダムカルピスのように)


この物語が自分にとって深く響くのは、鎌倉の風景にくわえて、「代書屋」の仕事にとても感銘を受けるから。

「手紙は書く人の分身」

その人の想いや佇まいを届けるために、便せん、ペン、インク、切手のひとつひとつを丁寧に、かつ道具を熟知したプロの目で選んでいきます。

作者の小川糸さんのインタビュー記事に、「小説であっても、なにかしらの読んだ人の生活に役立つ広い意味での実用書でありたいと常に考えてるんです」というものがありました。

まさに、選ばれる道具や手紙にまつわるあれこれが、登場人物の心情になぞらえて語られるので、す~っと頭に入ってきます。

小難しく感じていた手紙の形式も、「相手を敬い」「思いやりをもって」「礼節をわきまえて」とすると、結果こうなる、と言うのにも納得。


そして、なによりも圧巻なのは、依頼主ごとに変えるその筆跡!!プロの字描きである萱谷恵子さんという方がつど書いているそうですが、文章でのイメージだけでなく、実際の手紙を目の当たりにすると迫力がすごい!文字って、想像以上に伝える情報がゆたかなんだなあ。

「誰かの幸せに役立つ仕事」という、代書屋の矜持は、先代からまっすぐ鳩子に受け継がれています。


主人公の鳩子は、人の気持ちに寄り添える優しい人。

先代の厳しい躾が、相手の立場を配慮する美しい心づかいを育てたのだと思うし、大切なもののために吠える熱い魂も、(本人は気づいてないけど)先代とそっくり。

亡くなってしまった先代に、素直になれなかった、優しくできなかったわだかまりと、後悔の想いで傷ついいます。


「そんな鳩子に香りを作って欲しい」

もし、言えなかった気持ちを伝える手紙のように、先代から鳩子に贈る香りを依頼されたら。

そんなイメージで香りを作ってみました。


<読むアロマ「ツバキ文具店」ブレンド>
・ゆず
・イニュラ
・サイプレス
・マージョラム
・ローズオットー
・ミルラ

ゆずは、サイダー、カクテル、柚子茶などで本文にも登場する鳩子が好きな、原風景にもつながる香り。

イニュラは、二人をつなぐ代書屋にとって大切な「墨」から。イニュラの成分のひとつ竜脳(リュウノウ)は、墨の香り付けに使われているもの。呼吸器系をサポートし、深い呼吸と静寂をもたらします。

「読むアロマ」でも何度も登場しているサイプレスは、「死と再生」の精油。悲しみをやわらげ、癒す。

学名に「山の喜び」をもつマージョラムは、喪失感や孤独感をあたため、なだめてくれる香り。心に栄養を与えてくれる。

ローズオットーは「許し」。他者も自分自身も。愛することは許すこと。

そして、ミルラ。樹脂から抽出される精油は固まる性質が。心と身体の傷口をふさぎ、生きていく意思を固める。「今ここにいる」を作る第一チャクラに属する香り。


先代が伝えたかった鳩子への謝罪と感謝、そして幸せを祈る気持ちと、

鳩子が「愛されていた」という記憶とともにいられる香りを。

そんな思いを込めたブレンドです。


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