男性と女性の違い

 私が男性(男子)と女性(女子)の違いを初めて意識したのは、体育の授業のときである。私は男子であるのにもかかわらず、生まれつき体が弱く、生育環境によるのか運動神経が悪く、生後間もない頃に喘息で入院して10代の途中まで耳鼻咽喉科に通院していたこともあり、他の児童に比べて明らかに成績が悪かった。私のとても低い記録が、男子では駄目だと捉えられても、女子ではそれほど問題視されない内容のため、「女子だったらよかったのになあ。」とそのときは思った。その後、中学生では男女の違いが鮮明になり、男子が暗黙で短髪を強要される一方で、女子は自由に髪が伸ばせてしかも結べることが羨ましかった。また、リンチなど暴力によるいじめを受けていたので、「もし女子だったら体を傷つけられることはなかっただろうなあ」と思う。高校はやむを得ず男子校に進学したのでわからなかったが、他校の文化祭に行ったり、テレビドラマを見ていると、「同級生に女子がいることは楽しそうだなあ。青春をしているんだろうなあ。」と思い、羨ましかった。大学生のときは、男子がよっぽど頑張らなければ目立ったり耀いたりできない一方で、「女子はいるだけで華がある」と言った男子学生がいたように、私と女子との格差は広がっていった。尚、当時は高校が男子校だったことや他人とのコミュニケーションがうまく取れなかったことから、女子とはあまり話さなかった。就職活動を始めると、男子がきついネクタイを毎回締めなければならない一方で、女子はその必要がないので楽そうだなあと思った。尚、私はネクタイを結ぶことは難しかった。更に、当時着ていたズボンが体を締め付けるようできつく、女子が着ているようなスカートの方が開放的なように見えた。また、面接でも私の冴えなさは際立った。特技や特筆すべきことがない私が、女子と並ぶと私が一番惨めであるように思えた。もちろん、私の見た目が弱々しくて頼りなさそうに見えた点もあったと思う。採用の仕組みも、影響していた。私は幼い頃からおとなしくするように育てられて、自己主張することを抑えられていた。自己肯定感が低くなるように育てられたのである。もし息子ではなく娘だったら、しっかりと親に可愛がってもらえたかもしれない。そんな者が社会に出て総合職として多くの人を引っ張る立場になどなれるわけがなく、「誰かを支える」という一般職や内勤の事務職の方が向いていた。しかし、そこに想定されるのは大抵女子で私が入る余地がなかった。一般職として社会人で活躍している女性社員を見ると、「私も女性だったら立派な社会人になれたのかなあ。」と思い、羨ましかった。尚、一般の製造職は大卒程度では募集がなく、パート従業員などをまとめる役目を求められていた。社会に出てからも、男女の違いによるジレンマを抱えていた。ニュース番組を見ていると、男性が暑くてもネクタイを締めているのにもかかわらず、女性はノースリーブを着ていて「なんで服装に大きな差があるのだろう。」と思った。男性が型にはまった服装や髪型しかできない一方で、女性は服装も髪型も自由なので羨ましかった。また、就職や就業に失敗した私は男性であることで一層価値が低くなり、家事は割とやってきたので、「専業主婦のように専業主夫が多く認められればなあ」と思う。そのような中で、限られた範囲しかないメンズファッションの一方で、幅広い内容のレディースファッションには4年前から興味を持ち始めていた。レディースファッションには、華やかさ・明るさを表していると思う。レディースファッションに注目することで、私のジリ貧生活は楽しくなっていった。だから、かつては全く興味のなかったファッションは、今の私には興味のある分野である。今私は戸籍上は男性だが、他人から「かわいい」と言われると嬉しい。

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