小説・成熟までの呟き 34歳・1

題名:「34歳・1」
 2024年5月、美穂が34歳になった直後に、大尾島に初めての鉄道が開業した。島を東西に結ぶモノレールで、所要時間は30分である。出発式は、美穂の自宅の近くにある東大尾島駅で行われた。美穂達は1番列車に乗った。島待望の鉄道ということもあって、大歓声の中発車した。自動車だと時間がかかる経路も、スイスイと進んでいった。そして終点の大尾島港駅に到着した。大尾島港は、多くの船が発着する島最大の港である。美穂は、「この島に鉄道ができるって、画期的だね!」とはしゃいだ。すると康太は、「今度よかったら、首都圏へ寝台特急で行ってみる?鉄道の旅の楽しさが味わえると思うよ。」と提案した。美穂は同意した。6月、美穂達は船で山浜市に渡り、山浜駅から寝台特急に乗った。山浜駅は美穂が18歳の頃までよく利用した駅だ。いろいろな列車が発着していて刺激が強い。寝台特急は10両編成の青い車体だった。山浜駅をゆっくりと発車すると、夜の街を駆け抜けていった。2段ベッドだった。そのような中、乗務員がきっぷを見に来た。その乗務員は女性だった。すると康太は何か思い出したようだ。「そういえば、昔って女性の乗務員の制服ってスカートが多かったよね?なんであろう?」それに対して美穂は、「そういえば・・、当然にように刷り込まれていて気にしたこともなかった。」その後も会話は続き、「だってさあ、乗務員ってよく動くからスカートってそもそも不向きだと思うんだけどなあ。CAも同じだよね?」「確かに・・。でもCAに関しては、前にホステスのような役割を求めていたから制服がスカートだっていうような話を聞いたことがある。」「ふーん、なんでそんなことを考えるんだろう?」「女性ってなんか職場では華だと捉える所が多いんだよね。私も就職した当初は周りの人々が優しくしてくれて嬉しかったけど、次第にそのように見られることに悩んでいったんだよね。会社によっての、上層部の考えがあるのかなあ?まあ、採用する側からするとどんな要素で人を見ているかはわからないけど・・。むしろ、ずっと昔から続いていた慣習自体がおかしかったのかなあ。ようやく機能性が最も重要視されるようになったのかもね。」となった。一晩を過ぎると、車窓から朝日が見えて、綺麗だった。そして山浜駅を発車して約10時間後に終点の首都圏の駅に到着した。美穂は、「時間はかかったけどゆったりと過ごして物事を考える機会にもなったので良かった。」と喜んだ。康太は、「これからも鉄道の旅をしていこうね。」と言った。

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