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ネオテニー

 先日、知り合いの小さい子に贈るつもりで人気キャラクターのコレクショントイを買うため都内を歩き回ったのだが、どこも売り切れで参ってしまった。ネットにはあるのだが、割高で転売の臭いがするから手を出したくない。なんとか自分の足で見つけたいところ。

 アニメ、漫画、ゲーム、ファンシーキャラクターなどといったものは、かつてはその多くが子供向けに作られていて、大人になってもそれらを愛好する人は数奇な「変わり者」だった。体感的には2000年代中頃からだろうか、オタク文化が市民権を得て、現在は大人も当たり前に上記のようなコンテンツを楽しむようになった。

 その流れと共に、「大人も子供も楽しめるコンテンツ」が増えた。大人の愛好家が後ろ指をさされなくなったことや親子で楽しめることなどポジティブな文脈で語られることが多い。

 しかし「年齢問わずみんなが楽しめる」ということの行き着く先の1つは、悪意なき"ガチ勢"の大人とガメつい転売屋とが入り乱れ、買おうかどうか迷っているような鈍臭いライトユーザーや子どもが置いていかれる苛烈な競争だ。冒頭に書いたような現象だが、これに関しちゃ碌なもんじゃないと思う。ここはリアル「オトナ帝国」か?
(かくいう自分もガチ勢の端くれになることはあるのだが…)

 ここで私は、noteでも何度か話題に上げている「自己家畜化説」が頭をよぎった。ヒトは進化の過程で家畜のように従順な性質を自ら強化してきたという一説だ。動物を家畜化させると現れる色々な特徴のうちの1つに「幼形成熟」(ネオテニー、ペドモルフォーシス)と呼ばれる現象がある。幼さ、未成熟な部分を残したまま成体になるのだ。オオカミを家畜化するとイヌになるが、イヌはオオカミの子どもの形と性質を持ったまま成犬になる。

 「全年齢対象」とはいえ子どもも手に取るものに大人が我先にと挙って競り合う様を見ると、このネオテニーは肉体的な特徴だけでなく文化面にも影響を及ぼすのだろうかなどと考えてしまった。オタク文化の定着はネオテニーの一種なのだろうか。

 そう思ってちょっと調べてみると、2005年の時点で同じような目のつけ方をしたコラムが出ていた。うーん、早い…。

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